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5 ドレスと侍女
一夜明けて。
「おはよう、シエラ」
「おは……ようございます」
チュンチュン♪
小鳥の囀る清らかな朝。
殿下がいて。
殿下の後ろから大量のドレスが運び込まれてくる。
「今朝はピンタードの手が塞がっている。これから先も、朝ピンタードは来ない。なぜなら母上の世話で忙しいからだ。悪く思わないでくれ」
「……はい」
それよりドレスが……
ものすごい勢いでドレスが運び込まれてくる……
「……」
なぜ。
「ん? どうした。寝起きはいいと聞いていたが? ふむ。やはり疲れが」
「いいえ。あの、殿下……その」
「ドレスだが?」
「……」
それは、見るからにそうなのだけど……
「これから先、寝間着ひとつで暮らすわけにもいかないだろう」
「え?」
これから先?
……暮らす……?
「まずは朝食だ。母上も会いたがっている」
「えっ?」
こっ、ここで暮らすの!?
王宮でッ!?
「ででっ、でんっ」
「心配するな。ドレスのあとにちゃんと専属の侍女4人が入って来る」
「……侍女?」
「当然だ」
「……え?」
なぜ。
えっ、なぜ!?
「誰も好みを把握していないのだ。よって可能な限り用意させた」
「……へ?」
「サイズだけはピンタードの目利き通りだから、間違いないだろう。さあ、1時間で支度しなさい」
「マリサです!」
「ヴェロニカです!」
「ルシンダです!」
「アドラシオンです……」
本当に侍女の方々が入ってきた!
しかもひとり、戸惑ってる人がいる……!!
「わわわっ、わた──ゴホッ」
びっくりしすぎて噎せた!
「まあ! シエラ様!!」
「!?」
シエラ、様?
SAMA???
「……!!!!!」
限界を超えて、私は無言で首を振った。
「遠慮するな。では、失礼する。朝食で会おう」
「……」
殿下が去り、ドレスを運び込んでいた大勢の召使いも去った。
そして侍女の方々がベッドで固まっている私を、取り囲んだ。
「よろしくお願い致します、シエラ様!」
「心を込めてお仕え致します、シエラ様!」
「なんなりとお申し付けくださいませ、シエラ様!」
「……」
アドラシオンが無言!
アドラシオンが無言!!
「よっ、あっ、でも私ッ、そんな身分では……!」
「いいえ! シエラ様!!」
「あなた様のシンデレラストーリーは即ち私たちのライジングストーリーでもあるのです!!」
「王宮の花に!! 咲き誇るスペシャルガーデンに!!」
「……」
ア、ア、ア、アドラシオンは正気。
アドラシオンは正気。
「!」
目を逸らされた!!
「さぁあ! シエラ様! お急ぎくださいましね!」
「えっ」
「時間がありません! 時間がありませんッ!!」
「あっ、ちょっ」
「せめて色だけでも! 脱ぐ間に色だけでもお決めください!!」
「ヒィィィィィッ!」
剥かれていくぅ~!
寝間着が8本の手で剥かれていくぅ~!!
無言のアドラシオンも助けてくれない!!
「ちょちょちょちょちょっ、待ってぇぇぇぇぇ!!」
激しい朝の訪れだった。
けれど、こんなものではなかったのだ。
私はそれを、ひしひしと思い知る事になる。つづく。
「おはよう、シエラ」
「おは……ようございます」
チュンチュン♪
小鳥の囀る清らかな朝。
殿下がいて。
殿下の後ろから大量のドレスが運び込まれてくる。
「今朝はピンタードの手が塞がっている。これから先も、朝ピンタードは来ない。なぜなら母上の世話で忙しいからだ。悪く思わないでくれ」
「……はい」
それよりドレスが……
ものすごい勢いでドレスが運び込まれてくる……
「……」
なぜ。
「ん? どうした。寝起きはいいと聞いていたが? ふむ。やはり疲れが」
「いいえ。あの、殿下……その」
「ドレスだが?」
「……」
それは、見るからにそうなのだけど……
「これから先、寝間着ひとつで暮らすわけにもいかないだろう」
「え?」
これから先?
……暮らす……?
「まずは朝食だ。母上も会いたがっている」
「えっ?」
こっ、ここで暮らすの!?
王宮でッ!?
「ででっ、でんっ」
「心配するな。ドレスのあとにちゃんと専属の侍女4人が入って来る」
「……侍女?」
「当然だ」
「……え?」
なぜ。
えっ、なぜ!?
「誰も好みを把握していないのだ。よって可能な限り用意させた」
「……へ?」
「サイズだけはピンタードの目利き通りだから、間違いないだろう。さあ、1時間で支度しなさい」
「マリサです!」
「ヴェロニカです!」
「ルシンダです!」
「アドラシオンです……」
本当に侍女の方々が入ってきた!
しかもひとり、戸惑ってる人がいる……!!
「わわわっ、わた──ゴホッ」
びっくりしすぎて噎せた!
「まあ! シエラ様!!」
「!?」
シエラ、様?
SAMA???
「……!!!!!」
限界を超えて、私は無言で首を振った。
「遠慮するな。では、失礼する。朝食で会おう」
「……」
殿下が去り、ドレスを運び込んでいた大勢の召使いも去った。
そして侍女の方々がベッドで固まっている私を、取り囲んだ。
「よろしくお願い致します、シエラ様!」
「心を込めてお仕え致します、シエラ様!」
「なんなりとお申し付けくださいませ、シエラ様!」
「……」
アドラシオンが無言!
アドラシオンが無言!!
「よっ、あっ、でも私ッ、そんな身分では……!」
「いいえ! シエラ様!!」
「あなた様のシンデレラストーリーは即ち私たちのライジングストーリーでもあるのです!!」
「王宮の花に!! 咲き誇るスペシャルガーデンに!!」
「……」
ア、ア、ア、アドラシオンは正気。
アドラシオンは正気。
「!」
目を逸らされた!!
「さぁあ! シエラ様! お急ぎくださいましね!」
「えっ」
「時間がありません! 時間がありませんッ!!」
「あっ、ちょっ」
「せめて色だけでも! 脱ぐ間に色だけでもお決めください!!」
「ヒィィィィィッ!」
剥かれていくぅ~!
寝間着が8本の手で剥かれていくぅ~!!
無言のアドラシオンも助けてくれない!!
「ちょちょちょちょちょっ、待ってぇぇぇぇぇ!!」
激しい朝の訪れだった。
けれど、こんなものではなかったのだ。
私はそれを、ひしひしと思い知る事になる。つづく。
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