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5 掘ってください
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「いや、ほんと、巻き込んですまない。怒って当然だ。というか、泣かないでくれているだけですごく助かる」
「……」
なんというか、幻滅が止まらない。
簀巻きにしとけばよかったかな。
「女性に泣かれると、辛くてたまらない」
「酸素がなくなる前に早く出ましょう。はい、こっち」
「真上に掘ったほうが早いんじゃないか?」
「チッ」
おっと。
思わず苛立ちが口に出ちゃった。
「私たち素手ですけど」
「君にはやらせないよ。俺が掘る。指の力には自信がある」
黙ってついて来てほしかったけど、相手は勇者様だし。
「わかりました。では、チェストのある通路まで土壁を掘ってください。真上じゃなく」
「なるほど! そのチェストに残されているわけか。道具が」
「そうです」
今は死んでなかった無精髭の若人だけど、それでも勇者様だし。
「こっちです。さあ、掘ってください」
「任せろ!」
犬のように土壁を掘っている姿に、感謝より別の感情が湧いてしまう私は性格が悪いだろうか。いや、そんなはずはない。付き合わされて生き埋めになった私である。平たく言えばムカついている。
「ファイト。ファイト。ここ掘れファイトぉ~」
「ぅおおおおおおおおお!」
なんというか、無精髭もだらしないけど、なんだか、女の尻に敷かれていそうな臭いがする。こういうおじさん、たくさん見てきたし。
「うおおおおおおおっ! こうか!?」
「はい」
「こっちか!?」
「はい」
「ぬおおおおおおっ!」
「もしかして、アンニカ様と女性関係で揉めたんですか?」
「──」
「手を止めないでください」
「すまん」
「はい、ファイト。ファイト。ファイト」
勇者様はもう雄叫びをあげなかった。
私は幻滅が一周回って、苛立ちもあって、ジト目でその背中を見つめずにはいられない。
まさか、勇者様が痴話喧嘩の延長で生き埋めにされるなんて。
しかも、完全に部外者で毒にも薬にもならない私みたいな者を巻き添えにするなんて。まったくアホらしくて欠伸が出るというものだ。
魔王を倒してくれたとしても、人災を巻き起こされちゃたまらない。
「……」
なんというか、幻滅が止まらない。
簀巻きにしとけばよかったかな。
「女性に泣かれると、辛くてたまらない」
「酸素がなくなる前に早く出ましょう。はい、こっち」
「真上に掘ったほうが早いんじゃないか?」
「チッ」
おっと。
思わず苛立ちが口に出ちゃった。
「私たち素手ですけど」
「君にはやらせないよ。俺が掘る。指の力には自信がある」
黙ってついて来てほしかったけど、相手は勇者様だし。
「わかりました。では、チェストのある通路まで土壁を掘ってください。真上じゃなく」
「なるほど! そのチェストに残されているわけか。道具が」
「そうです」
今は死んでなかった無精髭の若人だけど、それでも勇者様だし。
「こっちです。さあ、掘ってください」
「任せろ!」
犬のように土壁を掘っている姿に、感謝より別の感情が湧いてしまう私は性格が悪いだろうか。いや、そんなはずはない。付き合わされて生き埋めになった私である。平たく言えばムカついている。
「ファイト。ファイト。ここ掘れファイトぉ~」
「ぅおおおおおおおおお!」
なんというか、無精髭もだらしないけど、なんだか、女の尻に敷かれていそうな臭いがする。こういうおじさん、たくさん見てきたし。
「うおおおおおおおっ! こうか!?」
「はい」
「こっちか!?」
「はい」
「ぬおおおおおおっ!」
「もしかして、アンニカ様と女性関係で揉めたんですか?」
「──」
「手を止めないでください」
「すまん」
「はい、ファイト。ファイト。ファイト」
勇者様はもう雄叫びをあげなかった。
私は幻滅が一周回って、苛立ちもあって、ジト目でその背中を見つめずにはいられない。
まさか、勇者様が痴話喧嘩の延長で生き埋めにされるなんて。
しかも、完全に部外者で毒にも薬にもならない私みたいな者を巻き添えにするなんて。まったくアホらしくて欠伸が出るというものだ。
魔王を倒してくれたとしても、人災を巻き起こされちゃたまらない。
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