6 / 6
第4章
戸惑いの寿退社。
しおりを挟む
いつまでも慣れない仕事を、ただひたすらとこなし、毎日居た堪れない日々を送っていた。
本当に苦しかったし、辛かったし、今思えばあれはちょっとしたパワハラなのでは?と思っている。
そんなある日、陽だまりのような彼氏から別れを告げられた。
納得がいかなかった。
別れたくなかった。
でも、自分が今までしてきたことを見つめ直したら当然か…。
結婚すると思ってたのに。
どうして、どうして。
自己中な考えが頭にあったのに、その時はゆっくり考えることすらできなかった。
ただただ泣いた。
ひたすら泣いた。
ひととおり泣いた後、妙な孤独感に襲われて急に誰かに頼りたくなった。
気付いたら「出会い系サイト」を開いていた。
今までみたいに遊びでもいい。
ただ、今は誰かに側にいて欲しい。
それだけの思いで投稿する。
ある一人の男性から返信が来た。
私はすぐに食いついた。
この人だ、この人でいい。
もう誰でもいいから側にいて欲しい。
慰めて欲しい。
彼氏と別れたその日の夜に「出会い系サイト」で出会った彼と会うことになった。
出会ってすぐに、私は彼を求めた。
一連を話し、優しく慰めてくれたから。
今はこの人でいい。
この人がいい。
新しい彼と付き合ってからは、仕事で嫌なことがあっても終わったら会える!と喜びに変わっていたからまだ苦痛じゃなかった。
毎日毎日、優しくしてくれて、プレゼントをくれて、親友にも紹介してくれた。
私の心の拠り所になっていた。
それから間もなくして、ある異変に気付いた。
そういえば生理が来てない。
数えたら3ヶ月も来ていない。
こんなこと、なかったのに。
まさかと思いながら、薬局で初めて「妊娠検査薬」を買う。
結果は…
「陽性」。
私の頭の中で、自分のお腹に新たな命が存在したことよりも、どちらの子かわからなかった。
元彼と新しい彼と性行為した時期が被っていたからだ。
気が動転して、元彼に連絡をした。
「あなたの子を妊娠したかも知れない。」
元彼はすぐに「え、下ろしてね。」
それだけ言って電話を切られた。
あぁ、本当にもう終わったんだ。
あの陽だまりのような彼はもう居ないんだ。
頭がおかしくなりそうな時、新しい彼から連絡が来た。
時間が出来たから会いに行くという電話だった。
どうしよう…。
この人にも言わなきゃ。
なんて切り出したらいい?
ただ、ボーッと床に座り時が過ぎるのを待った。
やがて新しい彼が私のアパートに着いた。
私の顔を見るなり「どうした?」と尋ねてきた。
言ったらフラれるかな。
言ったらこの人も下ろせって言うのかな。
怖かった。
彼の反応が怖かった。
「あのね、妊娠したかも知れないの。」
小声でしがみつきながら話した。
「本当に?俺の子?」
「それが、わからないの。」
「あぁ、元彼の子の可能性もあるってこと?」
「うん…。」
「それで、元彼に話した?」
「話したら下ろしてねって言われた。
そうだよね、どっちの子かわからないんだもん。」
そう話すと、意外な言葉が返ってきた。
「そっか。なら、俺がその子の父親になるよ。」
え?
「本気で言ってる?どっちの子かわからないんだよ?」
「でも産みたいんでしょ?そういう顔してる。」
お見通しか…。
私は昔から、形がどうであれ1番最初に身ごもった子は絶対に産む!と決めていた。
結果、最悪の事態になるなんて思ってもいなかった。
何度も何度も確認して、結局彼が父親になってくれることになった。
この日を境に元彼に連絡することはなくなった。
簡単に他人事のように見捨てた元彼。
自分の子じゃないかも知れないのに、父親になってくれると言った新しい彼。
なんて暖かい人なんだろう。
陽だまりのような元彼とは全然違うタイプだけれど、私を宝物のようにいつも扱ってくれた。
この時は本当に感謝しかなかった。
そして、自分の両親に話す時が来た。
両親は完全に猛反対だった。
何度電話しても、会いに行っても「下ろしなさい。」の一点張りだった。
父親の仕事の都合上、世間体を気にしたんだろう。
何度話しても分かってもらえなくて、最終的には泣いて両親に「絶対産むから!」とだけ告げた。
それから数日後、母から連絡があった。
「色々考えたけれど…産みたいなら産みなさい。」
「お兄ちゃんがね、産ませてあげなよって。」
私には2歳上の兄がいる。
いつもは無口で、私とはまともに話さない仲なのだが色んなことを遣りこなす兄だから、いつも尊敬していた。
「お兄ちゃんが…。」
目からボロボロ涙が溢れた。
「お兄ちゃんに感謝しなさいね。それと身体大切に。」
それだけ言って母は電話を切った。
その日、私は新しい彼に報告し、共に喜びあった。
そして結婚の約束を交わした。
次の日、職場に妊娠を伝えた。
マネージャーから「大事な時に何をやってるんだ!当然下ろすんだろうな?」
物凄く怒られた。
「いえ、産むつもりです。すみません。」
「これから正社員になって、頑張ってもらう予定が。本当にお前はどうしようもないな。」
何を言われても、怖くなかった。
もう産むって決めたから。
もう私は母親になったんだから。
母は強し。
まさにこの瞬間に思った。
結局、あまりいい顔されないまま、有り得ないある意味「寿退社」を果たした。
辛かった、シンドかった、でも時に楽しかった。
色んな思いを胸にホテルを去る。
こうして私の初めての仕事、退職。
そして、母親となった。
本当に苦しかったし、辛かったし、今思えばあれはちょっとしたパワハラなのでは?と思っている。
そんなある日、陽だまりのような彼氏から別れを告げられた。
納得がいかなかった。
別れたくなかった。
でも、自分が今までしてきたことを見つめ直したら当然か…。
結婚すると思ってたのに。
どうして、どうして。
自己中な考えが頭にあったのに、その時はゆっくり考えることすらできなかった。
ただただ泣いた。
ひたすら泣いた。
ひととおり泣いた後、妙な孤独感に襲われて急に誰かに頼りたくなった。
気付いたら「出会い系サイト」を開いていた。
今までみたいに遊びでもいい。
ただ、今は誰かに側にいて欲しい。
それだけの思いで投稿する。
ある一人の男性から返信が来た。
私はすぐに食いついた。
この人だ、この人でいい。
もう誰でもいいから側にいて欲しい。
慰めて欲しい。
彼氏と別れたその日の夜に「出会い系サイト」で出会った彼と会うことになった。
出会ってすぐに、私は彼を求めた。
一連を話し、優しく慰めてくれたから。
今はこの人でいい。
この人がいい。
新しい彼と付き合ってからは、仕事で嫌なことがあっても終わったら会える!と喜びに変わっていたからまだ苦痛じゃなかった。
毎日毎日、優しくしてくれて、プレゼントをくれて、親友にも紹介してくれた。
私の心の拠り所になっていた。
それから間もなくして、ある異変に気付いた。
そういえば生理が来てない。
数えたら3ヶ月も来ていない。
こんなこと、なかったのに。
まさかと思いながら、薬局で初めて「妊娠検査薬」を買う。
結果は…
「陽性」。
私の頭の中で、自分のお腹に新たな命が存在したことよりも、どちらの子かわからなかった。
元彼と新しい彼と性行為した時期が被っていたからだ。
気が動転して、元彼に連絡をした。
「あなたの子を妊娠したかも知れない。」
元彼はすぐに「え、下ろしてね。」
それだけ言って電話を切られた。
あぁ、本当にもう終わったんだ。
あの陽だまりのような彼はもう居ないんだ。
頭がおかしくなりそうな時、新しい彼から連絡が来た。
時間が出来たから会いに行くという電話だった。
どうしよう…。
この人にも言わなきゃ。
なんて切り出したらいい?
ただ、ボーッと床に座り時が過ぎるのを待った。
やがて新しい彼が私のアパートに着いた。
私の顔を見るなり「どうした?」と尋ねてきた。
言ったらフラれるかな。
言ったらこの人も下ろせって言うのかな。
怖かった。
彼の反応が怖かった。
「あのね、妊娠したかも知れないの。」
小声でしがみつきながら話した。
「本当に?俺の子?」
「それが、わからないの。」
「あぁ、元彼の子の可能性もあるってこと?」
「うん…。」
「それで、元彼に話した?」
「話したら下ろしてねって言われた。
そうだよね、どっちの子かわからないんだもん。」
そう話すと、意外な言葉が返ってきた。
「そっか。なら、俺がその子の父親になるよ。」
え?
「本気で言ってる?どっちの子かわからないんだよ?」
「でも産みたいんでしょ?そういう顔してる。」
お見通しか…。
私は昔から、形がどうであれ1番最初に身ごもった子は絶対に産む!と決めていた。
結果、最悪の事態になるなんて思ってもいなかった。
何度も何度も確認して、結局彼が父親になってくれることになった。
この日を境に元彼に連絡することはなくなった。
簡単に他人事のように見捨てた元彼。
自分の子じゃないかも知れないのに、父親になってくれると言った新しい彼。
なんて暖かい人なんだろう。
陽だまりのような元彼とは全然違うタイプだけれど、私を宝物のようにいつも扱ってくれた。
この時は本当に感謝しかなかった。
そして、自分の両親に話す時が来た。
両親は完全に猛反対だった。
何度電話しても、会いに行っても「下ろしなさい。」の一点張りだった。
父親の仕事の都合上、世間体を気にしたんだろう。
何度話しても分かってもらえなくて、最終的には泣いて両親に「絶対産むから!」とだけ告げた。
それから数日後、母から連絡があった。
「色々考えたけれど…産みたいなら産みなさい。」
「お兄ちゃんがね、産ませてあげなよって。」
私には2歳上の兄がいる。
いつもは無口で、私とはまともに話さない仲なのだが色んなことを遣りこなす兄だから、いつも尊敬していた。
「お兄ちゃんが…。」
目からボロボロ涙が溢れた。
「お兄ちゃんに感謝しなさいね。それと身体大切に。」
それだけ言って母は電話を切った。
その日、私は新しい彼に報告し、共に喜びあった。
そして結婚の約束を交わした。
次の日、職場に妊娠を伝えた。
マネージャーから「大事な時に何をやってるんだ!当然下ろすんだろうな?」
物凄く怒られた。
「いえ、産むつもりです。すみません。」
「これから正社員になって、頑張ってもらう予定が。本当にお前はどうしようもないな。」
何を言われても、怖くなかった。
もう産むって決めたから。
もう私は母親になったんだから。
母は強し。
まさにこの瞬間に思った。
結局、あまりいい顔されないまま、有り得ないある意味「寿退社」を果たした。
辛かった、シンドかった、でも時に楽しかった。
色んな思いを胸にホテルを去る。
こうして私の初めての仕事、退職。
そして、母親となった。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
感想の連投すみません(汗)
早速第2話読みました。きちんの整えないと妙に気になってしまう所が私みたいで驚きました。テーブルクロスやカーテンは整えたくなるし、埃が落ちていれば無意識に拾ってしまうし……。物忘れも酷かったので、色々苦労しました
_:(´ཀ`」 ∠):
第2話も読んで頂き、ありがとうございます。
自閉症の特徴は人それぞれと言われていますが、もちろん中には同じ症状の人もいますよね。
似ている部分があるとわかり、なんだか私もホッとしてしまいました。
またぜひ続きを読んで頂けると幸いです。
初めまして、桜橋渡です。発達障害のタイトル蛾気になって拝見させて頂きました。私も発達障害で、ADHDと呼ばれています。コミュニケーションは私も苦手でした。友達を作るのにも苦労をしたので、筆者様の気持ちはよく分かります。
続きを読むのを楽しみにしています。お互い小説家として、頑張りましょう
☆〜(ゝ。∂)
桜橋渡さん、初めまして。
私の実話を読んで頂き、ありがとうございます。
何より私と同じ状況の方が読んで下さったこと、わかってもらえたことに感謝しています。
お互いに生きづらく大変なことも多々あると思います。
これからもきっとあると思いますが、どうか一人ではないということ、仲間がいる、理解者がいることをお互いに忘れず頑張りましょう。
これからもゆっくり書いていきますので、どうぞよろしくお願いします。