都合の良いテンプレなんて存在しねぇ!

依存症🦃

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変わる世界

事故

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大阪─────とある一軒家

「はぁ.......」

ため息を吐く少年がいた。

「地獄が.....始まる」

彼の名前は、佐藤    遥斗。

何故、彼が嫌なオーラ全開なのかと言うと学校でぼっちだからだ。

クラスに上手く(空気として)馴染めた一学期が終わり夏休みが訪れた。
しかし彼は殆ど家にいて、出たとしても近所のスーパーにおつかいで行ったぐらいだった。

そうやって高校の人と関わることが出来なかった夏休みが昨日終わり今日始業式がある。
彼は新しい仲間と心の距離をつめることなく詰んだのだ。

「はぁ.....はぁ.......」

さっきからずっとこの調子でため息ばかりついている。

「.......とりあえず時間あるからテレビでも見て誤魔化すか.......」

遥斗はリビングへ移動した。

「雪どいて」

「えぇー」

ソファーを占領していたのは佐藤   雪、遥斗の妹だ。

「お前お菓子を寝転がりながら食うなって 余計太るぞ」

雪は勉強の成績は学年トップ10に入るのだが体育が苦手で運動を嫌っている。そのせいか若干太っていた。

「元から太ってないし!」

それは無いだろと言いそうになった遥斗だったが、言い合いになった所で勝てないので堪えた

「チャンネル変えるぞ」

「あっ勝手に変えないでよ」

「だってお前漫画読んでるし別にいいだろ?」 

「.......勝手にすれば」

今回は遥斗に軍配が上がったようだ

そして30分ぐらい朝のテレビ番組を見て現実逃避をした。

「ここまでか.......」

これ以上先延ばしにすると遅刻してしまう。

「お、行くのか?いってらっしゃい」

「いってらっしゃい」

「いってらー」


父、母、雪の3人がそう言った。

「あれ?父さん今日会社は?」

父の会社は家から少し遠い目で、いつもこの時間には、とっくに家を出ているはずだった。

「そういえば遥斗には言ってなかったな.......」

そう言って父が真剣な表情をする。

(まさかここで「父さんの会社が倒産しちゃったんだ。テヘッ」とか言うんじゃ)

「実はな.......今日から仕事先が変わって近くに行くことになったんだ。だから、これからはいつもより遅く出勤して早く帰って来れるようになったんだ」

「……なるほど」

遥斗は予想してたよりも意外と大したことではなかったので、拍子抜けした顔をしていた。

「お父さーん俺も聞いてないよ」

「あ、健二起きたのか」

起きてきたのは弟の佐藤    健二。スポーツは出来るが勉強は出来ないので雪と真逆だ。

「うん、おはよう」

「それはすまなかったな」

雪と健二は双子なのだが二卵性双生児なので同じ顔とかでは無い。

2人は現在中学2年生で今は夏休みだ。ちなみに遥斗は健二に身長を抜かれている。遥斗は『兄としてのメンツがぁ』と気にしているが健二は大して気にしていないらしい。

「健二起きるのが遅いぞそんな調子だと学校始まった時に遅刻するぞ」

「分かってるよ」

健二は親の心子知らずといった様子で適当に返事した。

「そういえば遥斗そろそろ行くんじゃなかったの?」

「うわっヤバい、いってきまーす」

「「「「いってらっしゃい」」」」

遥斗は急いで玄関に向かう

運動靴を履くが踵を踏んでしまった

「ああ、もういいや!」

扉を開け自転車に乗る 
今日はかなりヤバいので全速力でペダルをこぐ。まるで風になったように感じる。途中信号待ちでイライラしながらも結構近い所まで来た。

「よしっ!行ける!」

細い路地に入った、しかし遅刻に対する不安からか、スピードはあまり落ちていない。

「ん?」

少し奥が歪んで見えるゲームのバグと例えるのが妥当な様子だ。しかし遥斗は見間違いだと思ってスピードを落とさなかった。そのせいで───────

ガシャン!ガシャ....カラカラカラ

「へ?.......グフッ」

ぶつかってしまった。 
しかもそれだけじゃない、ぶつかった衝撃でハンドルを離してしまい前から転けることになり胸を打ち肺の空気が抜けた。

(苦しい)

しばらく地面に打ち付けられた衝撃で呼吸が出来なかった

「ふぅ.....ゴホッ...ゴホッ.....はぁ.......はぁ」

そして呼吸出来るようになると脳が冷静になってくる

(やってしまった......しかも全速力で)

遥斗の血の気が引いていった。実は遥斗の事故は初めてでは無い。自転車同士の接触はあったがその時はお互いに謝って解決した。
しかし、今回は遥斗が一方的にやってしまったことであり、あのスピードだ、良くて重症で最悪打ちどころが悪ければ即死もありえる。遥斗は顔をあげることが出来なかった。
相手が何処に跳んでいったか分からないが現実を見たくないのだ。

(謝って済むことじゃないけど、)

遥斗は極度のプレッシャーを感じていた。人の命(人生)を奪ってしまったかもしれない、その可能性が遥斗の心をしめつけていた。

(けど、もしかしたら今行けば助かるかもしれない)

遥斗は決意して顔を上げ辺りを見回した

「え?」

しかし、人の姿は無かった

「もしかして気のせいか?」

と遥斗は思ったが衝撃があったため、とても無かったとは思えない。さらに自転車の籠の一部が凹んでおりその凹み方が地面にぶつかったものでは無い事は見て分かった。

その後しばらく辺を探したが何も見つからなかった。

「とりあえず学校に行くか.......」

普通なら警察などに連絡して自首と被害者の捜索をしてもらうはずだが遥斗は内心テンパっていたため学校に向かってしまった。

これは轢き逃げになるが監視カメラが無く
目撃したものもおらず血痕も見られないためこの事を知っているのは遥斗だけだった。そして遥斗がぶつかった現場には緑色の透明な小石だけが落ちていた.......。

遥斗は自転車を押して学校へ向かっていた、事故をした時に鳩尾にも入ってしまったらしく、こぐことが出来ないのである。

「はぁ.....はぁ.....」

(どうしようどうしようどうしようこのままじゃいけないでも、じゃあどうしたら) 

遥斗の目は虚ろで頭の中で混乱と恐怖と後悔の念が入り交じっていた。

「そもそも俺は轢いたのか?でもあそこには何も無かった。じゃああの衝撃は?地面にぶつかるのとは別に来た衝撃は轢いたからではないか?でも.......」

そして、口に出して考え始めた

轢いてしまったはずなのに相手はおらず証拠らしいものが無かった。 ならばあの時受けた衝撃はなんだったのだろうか、その考えがループされ続けて答えが出ない。

そのまま学校に着いてしまった 

門は閉まっており中に入るには近くにあるインターホンのボタンを押して先生に遠隔操作で開けてもらう必要がある

しかし遥斗はボタンを押すのを躊躇っていた

(もし先生に遅刻の理由を聞かれたら?転んだと答えるしかない、だけどもし自転車の凹み方に注目してしまったら?けど家にこのまま帰ってもどっちにしろ理由を聞かれるし)

遥斗は他にも『外でサボる』という選択肢があったが、メンタル的に持ちそうもなく候補から自然と外れていた。

「決めた.......入る」

遥斗はボタンを押した

「佐藤ぉ!!遅刻だ!」

「はひ!すいません!」

インターホンから聞こえた突然の大声に遥斗はビビって舌を噛んでしまった。

ガチャッと鍵が外れた音がした。

「遅刻したものはそこから入ってくるんだ」

門の一部が扉になっており、そこから中に入った。






この話はフィクションです
キャラの名前、企業、団体は現実とは関係ありません

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