猫のもの語り 〜宇宙編〜

猫田 薫

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第1章 警告

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ウィーン、ウィーン、ウィーン

冷たい金属の扉が、彼の足元に反応して次々と開いてゆく。
空気は張りつめ、マントが風を切りたびに、廊下の静寂が震えた。
エルは眉を顰め、焦燥を隠すように歩を早める。

この星は限界だ。ー誰よりも早く、ゼノンにそれを伝えなければならない。
歩む度に彼を阻むドアがひらいてゆく。早く、あいつの元にたどり着かなければ。
スーツのマントを翻しながら足早に元老院の執務室へ急ぐ、奴はそこにいるにちがいない。

元老院の執務室

高い天井と3つの月を望む窓が権力の象徴として静かに輝いていた。
「ゼノン、ここにいたのか。探していたぞ、この星が限界な事をわかっているのか?」
ゼノンは椅子からゆっくりと立ち上がり、冷静な声で応じた。
「エル、どうした。そんなあわてた顔をして、私に何か用なのか?」
「この星はもう限界だ。これ以上、この星からレムマイト(記憶の鉱石)を掘り出し続けると、やがてこの星は内部から崩壊してしまう。今すぐに掘削をやめさせるんだ。」
ゼノンの目がわずかに細められた。
その瞳には、疑念よりも苛立ちが浮かんでいた。

「なにをバカな事を言っている。レムマイトはまだ掘る事はできるし、この星はまだ大丈夫だ。それに、埋め戻している資源も安全だ。科学技術団の検証も済んでいる。どうして、この星がダメになるというのだ。」

「その埋め戻している資源が問題なのだ。それらは地上の我々の生活ごみだ。地中に埋めることで、毒物がこの星の核に流れ込み、星のぬくもりを奪ってしまう。今ならまだ間に合う。住民を避難させるか、掘削をやめるんだ。」

ゼノンは鼻で笑った。
「君だけが反対していた事を忘れたのか?もういい、帰りたまえ。」

「まってくれ、この星が危険なんだ。なぜ、わかってくれない。早くみんなを避難させなければ、危ないんだ。今ならまだ間に合うんだ。掘削を辞めるか、この星の住人を避難させるんだ。」

「ばかな。そんな事を誰が信じる。また、もし、掘削をやめたらエネルギー問題はどうなるんだ。日々の生活のためのエネルギーが枯渇してしまうのだぞ。代替えエネルギーがあるというなら、それに変えてやらんこともないが。同じだけのエネルギー量のものなど、この星には存在しまい。」

警備兵がやってきて、エルを取り押さえる。
「たのむ。この星はもう危険なのだ。やめろ、俺の話をきけ~」

セノンは議員たちに向き直り、声を張り上げた。

「我々は民主的な国家だ。みなさんの中に反対する方がいるようでしたら、お申し出ください。多数決で掘削をやめることも可能です。いかがでしょうか。みなさん。」

議員たちは沈黙したまま、目を逸らした。

「・・・・・」

「どの方もご意見はないようですね。では本日はこれにて解散とさせていただきます。」
議員たちはそれぞれに三々五々に帰っていった。

「エルめ、うるさいやつだ。しばらく閉じ込めておけ。」
「はっ、かしこまりました閣下。」

ゼノンの背後、窓の外には3つの月が浮かんでいた。
彼はその光を見つめながら、静かに呟いた。
「この宇宙は我々のものになる。」
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