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第十七章 出頭
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警察署って、来たことなかったなぁ。
免許の更新のときに敷地には入るけど、あれは別棟の専用施設で済んじゃうから――“警察署に来た”って言えるのは、今日が初めてかもしれない。
スクーターをバイク置き場に止めて、署内のガラス張りの入口へと向かう。
入口の横には制服の警察官がひとり、まっすぐに立っていた。
「ご苦労さまです」
小さく会釈をして横を通り過ぎ、ガラス戸を押し開ける。
中に足を踏み入れると、エアコンの冷気が肌に触れた。思っていたよりずっと涼しい。
頭の中にあったのは――
扇子をパタパタあおぎながら、額の汗を拭き拭き、大きなお腹を揺らして歩く刑事さんのイメージ。
でも現実の署内は、スマートでキビキビと動く人たちばかりで、むしろ女性職員の姿も多い。
制服がその人の規律を支えているように見えた。
「あの、すみません。加賀美と申します。捜査一課の阿部さんに、お約束いただいているのですが」
受付と書かれたカウンターの奥に座っていた婦人警官にそう伝えると、彼女は手早く内線で連絡を取ってくれた。
「はい。少々お待ちください。……すぐに参りますので、そちらでお待ちください」
ほどなくして、背が高く、がっしりとした体格で浅黒い肌の男性が現れた。
目がぎょろっと大きく、その目で私を下から上までゆっくりと見てから、ゆっくりと歩いて近づいてくる。
「ご足労いただきありがとうございます。捜査一課の阿部です。どうぞこちらへ」
私は彼の後ろに小走りでついていく。
背の低い私にとっては、巨人に手を引かれて歩く子どものような気分。
それにしても――阿部刑事さん、本当に大きい。
「こちらへどうぞ。すみません、ちょっと暗い部屋で……他に空いている部屋がなくて。
冷たいお茶でよろしいですか?」
私がうなずくと、阿部さんは部屋を出ていった。
私は周囲をぐるりと見回す。
窓はなく、壁は厚く、防音もしっかりしているようだ。
扉には小窓がついていて、ノブには鍵もある。
机は鉄製で引き出しもなく、足元はボルトで床に固定されている。
椅子はパイプ椅子。折りたたみ式の、硬くて簡素なもの。
まさか……ここって……あれじゃない?
ドラマで見る“取調室”……じゃない?
えっ、えっ、私、犯人扱い……!?
まさか、カツ丼とか出てくるやつ?
私は何もしてません……ごめんなさい、ごめんなさい……(何の?)
「お待たせしました。どうぞ、冷たいお茶です」
戻ってきた阿部さんは、冷えたペットボトルのお茶をテーブルに置いた。
その隣には、もうひとり――女性刑事が立っていた。
「こちら、伊藤刑事です。本日は同席して、あなたのお話を一緒に伺います」
「伊藤です。よろしくお願いします。今日は主に、私がご質問をさせていただきますね」
「加賀美です。よろしくお願いします」
女性の刑事さんの姿に、私は少しほっとした。
同性というだけで、こんなにも安心感を覚えるものなのか――と、改めて思う。
「それで――加賀美さんは、猫の保護活動をされているとか。
小田切先生から、そううかがっています。今回の西園寺由紀子さん殺害事件に関係する猫を保護しているとのこと。
さらに、猫の気持ちが分かる。いや、“猫と話せる”ともお聞きしました。
話せるなんて本気では思ってませんが……ただ、小田切先生から“捜査のヒントになり得る話を持っている”と聞いたので、今日はこうしてお時間をいただいた次第です。
あくまで“参考情報”として伺うつもりですので、内容を捜査に使うかどうかはお約束できません。それだけご了承ください」
「はい。私は、いわゆる猫の保護活動ではなく、“猫探偵”――
迷子になった猫を探すペット探偵をやっております。まだ始めたばかりですが……
今回、容疑者として拘留中の斎藤さん宅で、迷子になった猫たちを偶然保護したことがあって、その関係でご縁が生まれました。
西園寺さん宅の猫も、小田切先生から依頼を受けて探し、無事に保護して、今は私の自宅で預かっています」
「そうでしたか。……小田切先生はあなたのことを“動物と会話ができる”と褒めておられましたよ。
実際は会話ではなく、観察力や直感が優れているんでしょうが。
で――猫たちは何か言ってますか? 事件について」
「はい……うまく言えるか分かりませんが、
私は猫たちの“考えていること”が、なぜかわかってしまうことがあります。
今回の事件で保護した猫――“マルコ”といいます――は、西園寺家で暮らしていた猫で、犯行時に現場にいた可能性があります。
そのマルコが、とある香りに対して極端に怯える反応を見せたんです。
それが……私の父が使っている、柑橘系のヘアトニックの匂いで」
「なるほど……それで?」
「あ、はい……すみません、私は別件の捜査が入ったので、ここで失礼します。
伊藤刑事が続きを伺いますので、ご安心を。
本日はご協力ありがとうございました。また連絡させていただくかもしれませんので、その際はよろしくお願いします」
そう言って、阿部刑事は部屋を出ていった。
(……呼び出しておいて最後まで聞いてくれないのかぁ……)
そんな気持ちも少し芽生えたけど、でも――伊藤さんの方が話しやすい気もする。
「すみません。改めて、私が続きをお聞きしますね。どうぞ、続けてください」
「はい……えっと、どこまで話しましたっけ……」
「マルコちゃんが、柑橘系の香りに反応したところまでです」
「そうでしたね。
基本的に、犬や猫って、香水とか香りものが苦手なんです。
人間にとってはいい香りでも、彼らにはかなり強い刺激に感じるはずで……
特に柑橘系は、刺激物のように感じているかもしれません。
猫がいる家庭だと、こういう香りものを控える方が多いですし。
……うちの父は無神経なので使ってますけど……
でもそれも、家にいない時間が長いのと、加齢臭を考えれば仕方ないと母はあきらめてます(苦笑)。
すみません、余談でした。
その香りに、マルコがひどく反応したんです。
なので、西園寺さんを襲った犯人は、柑橘系の匂いをまとっていた人物ではないかと……。
マルコは、あの時、犯人と直接対峙していた可能性があると思うんです。
一度嗅いだ匂い――しかも恐怖と結びついた匂いなら、忘れるわけがないと思って」
「あなたは、その猫の反応から“犯人は柑橘系の香りをつけていた可能性が高い”と見立ててるのね。
なるほど……もしマルコちゃんがそこまで怯えるなら、状況証拠として考慮できるかもしれないわ。
……ちなみに、私は個人的に猫を飼っていてね。そういう“反応から感じとる気持ち”って、わかるのよ」
「えっ、本当ですか? 伊藤刑事も猫を? なんてお名前なんですか?」
「うちの子も保護猫で三毛猫よ。名前は“タマ”。もう4年一緒に暮らしてるの。猫ってほんと、かわいくて、表情豊かよね」
「わぁ……いいですね。うちも飼ってますけど、やっぱり猫って家族ですね」
「それで――まだ何か、気づいたことがあるんでしょう?」
「あ、はい。あの……もう一つだけ、お話ししてもいいですか?」
「もちろん。なんでも話してちょうだい。阿部刑事にもきちんと共有しておくから」
「ありがとうございます。
……その、マルコが事件の夜、犯人と出会っていたとしたら――
きっと、西園寺さんが襲われていたとき、マルコはご主人を守ろうとして、とっさに飛びかかったのではないかと思うんです。
猫って、身を守るとき、本気で爪で引っ掻いたり、かみついたりしますよね。
犬ほど忠実とは言われないけれど……
日頃マルコを見ていると、あの子は――今も“自分が助けられなかったこと”を悔やんでいるように感じるんです。
もしマルコが犯人に飛びかかっていたとしたら、犯人には“ひっかき傷”や“牙の跡”が残ってるはず。
それが証拠になるかもしれないんです。
だから、どうか……捜査の中で、そういう“傷がある人物”がいなかったか、確認してみていただけませんか」
伊藤は目を細めながら、深くうなずいた。
「……わかったわ。爪の痕跡、引っかき傷、動物の噛み跡ね。確認してみる。もちろん、捜査情報そのものはあなたにすべてお話できないけれど、
あなたの言葉はしっかり記録に残して、私たちの視点にも加えておく」
「ありがとうございます。なんだか……少し、肩の荷が下りました」
「それにしても、今日はありがとう。わざわざ来てくれて。私も猫の話、もっと聞きたいわ。今度ゆっくり話せたら嬉しい」
「はい、こちらこそ……。最初は緊張していましたけど、伊藤刑事がいてくださって、本当に心強かったです。ありがとうございました。では、今日はこれで――」
「あ、ちょっと待って。西園寺さん宅の猫―今、あなたが保護してるんでしょう?よければ、今度、私も会いに行ってもいいかしら。ただの“猫好きな刑事”として。飼い主も亡くなっているから……今後の行き先も、考えないといけないでしょうし」
「はい、大丈夫です。ぜひ来てください。……でも、しばらくは私のところでちゃんとお世話できますから。どうぞ、安心してください」
「ありがとう。じゃあ、また連絡するわ。お疲れさまでした。気をつけて帰ってね」
「はい。ありがとうございました。失礼いたします」
……
警察署を出たとき、私は少しだけ背筋を伸ばしていた。
まるで――猫友達が、ひとり増えたみたいな気分で嬉しかった。
これで、本当に犯人が捕まればいいのに。
スクーターに跨がり、エンジンをかける。
初夏の陽射しが頬に触れる。汗ばむ空気の向こうに、猫たちの待つ家がある。
夏は、すぐそこまで来ているようだった。
免許の更新のときに敷地には入るけど、あれは別棟の専用施設で済んじゃうから――“警察署に来た”って言えるのは、今日が初めてかもしれない。
スクーターをバイク置き場に止めて、署内のガラス張りの入口へと向かう。
入口の横には制服の警察官がひとり、まっすぐに立っていた。
「ご苦労さまです」
小さく会釈をして横を通り過ぎ、ガラス戸を押し開ける。
中に足を踏み入れると、エアコンの冷気が肌に触れた。思っていたよりずっと涼しい。
頭の中にあったのは――
扇子をパタパタあおぎながら、額の汗を拭き拭き、大きなお腹を揺らして歩く刑事さんのイメージ。
でも現実の署内は、スマートでキビキビと動く人たちばかりで、むしろ女性職員の姿も多い。
制服がその人の規律を支えているように見えた。
「あの、すみません。加賀美と申します。捜査一課の阿部さんに、お約束いただいているのですが」
受付と書かれたカウンターの奥に座っていた婦人警官にそう伝えると、彼女は手早く内線で連絡を取ってくれた。
「はい。少々お待ちください。……すぐに参りますので、そちらでお待ちください」
ほどなくして、背が高く、がっしりとした体格で浅黒い肌の男性が現れた。
目がぎょろっと大きく、その目で私を下から上までゆっくりと見てから、ゆっくりと歩いて近づいてくる。
「ご足労いただきありがとうございます。捜査一課の阿部です。どうぞこちらへ」
私は彼の後ろに小走りでついていく。
背の低い私にとっては、巨人に手を引かれて歩く子どものような気分。
それにしても――阿部刑事さん、本当に大きい。
「こちらへどうぞ。すみません、ちょっと暗い部屋で……他に空いている部屋がなくて。
冷たいお茶でよろしいですか?」
私がうなずくと、阿部さんは部屋を出ていった。
私は周囲をぐるりと見回す。
窓はなく、壁は厚く、防音もしっかりしているようだ。
扉には小窓がついていて、ノブには鍵もある。
机は鉄製で引き出しもなく、足元はボルトで床に固定されている。
椅子はパイプ椅子。折りたたみ式の、硬くて簡素なもの。
まさか……ここって……あれじゃない?
ドラマで見る“取調室”……じゃない?
えっ、えっ、私、犯人扱い……!?
まさか、カツ丼とか出てくるやつ?
私は何もしてません……ごめんなさい、ごめんなさい……(何の?)
「お待たせしました。どうぞ、冷たいお茶です」
戻ってきた阿部さんは、冷えたペットボトルのお茶をテーブルに置いた。
その隣には、もうひとり――女性刑事が立っていた。
「こちら、伊藤刑事です。本日は同席して、あなたのお話を一緒に伺います」
「伊藤です。よろしくお願いします。今日は主に、私がご質問をさせていただきますね」
「加賀美です。よろしくお願いします」
女性の刑事さんの姿に、私は少しほっとした。
同性というだけで、こんなにも安心感を覚えるものなのか――と、改めて思う。
「それで――加賀美さんは、猫の保護活動をされているとか。
小田切先生から、そううかがっています。今回の西園寺由紀子さん殺害事件に関係する猫を保護しているとのこと。
さらに、猫の気持ちが分かる。いや、“猫と話せる”ともお聞きしました。
話せるなんて本気では思ってませんが……ただ、小田切先生から“捜査のヒントになり得る話を持っている”と聞いたので、今日はこうしてお時間をいただいた次第です。
あくまで“参考情報”として伺うつもりですので、内容を捜査に使うかどうかはお約束できません。それだけご了承ください」
「はい。私は、いわゆる猫の保護活動ではなく、“猫探偵”――
迷子になった猫を探すペット探偵をやっております。まだ始めたばかりですが……
今回、容疑者として拘留中の斎藤さん宅で、迷子になった猫たちを偶然保護したことがあって、その関係でご縁が生まれました。
西園寺さん宅の猫も、小田切先生から依頼を受けて探し、無事に保護して、今は私の自宅で預かっています」
「そうでしたか。……小田切先生はあなたのことを“動物と会話ができる”と褒めておられましたよ。
実際は会話ではなく、観察力や直感が優れているんでしょうが。
で――猫たちは何か言ってますか? 事件について」
「はい……うまく言えるか分かりませんが、
私は猫たちの“考えていること”が、なぜかわかってしまうことがあります。
今回の事件で保護した猫――“マルコ”といいます――は、西園寺家で暮らしていた猫で、犯行時に現場にいた可能性があります。
そのマルコが、とある香りに対して極端に怯える反応を見せたんです。
それが……私の父が使っている、柑橘系のヘアトニックの匂いで」
「なるほど……それで?」
「あ、はい……すみません、私は別件の捜査が入ったので、ここで失礼します。
伊藤刑事が続きを伺いますので、ご安心を。
本日はご協力ありがとうございました。また連絡させていただくかもしれませんので、その際はよろしくお願いします」
そう言って、阿部刑事は部屋を出ていった。
(……呼び出しておいて最後まで聞いてくれないのかぁ……)
そんな気持ちも少し芽生えたけど、でも――伊藤さんの方が話しやすい気もする。
「すみません。改めて、私が続きをお聞きしますね。どうぞ、続けてください」
「はい……えっと、どこまで話しましたっけ……」
「マルコちゃんが、柑橘系の香りに反応したところまでです」
「そうでしたね。
基本的に、犬や猫って、香水とか香りものが苦手なんです。
人間にとってはいい香りでも、彼らにはかなり強い刺激に感じるはずで……
特に柑橘系は、刺激物のように感じているかもしれません。
猫がいる家庭だと、こういう香りものを控える方が多いですし。
……うちの父は無神経なので使ってますけど……
でもそれも、家にいない時間が長いのと、加齢臭を考えれば仕方ないと母はあきらめてます(苦笑)。
すみません、余談でした。
その香りに、マルコがひどく反応したんです。
なので、西園寺さんを襲った犯人は、柑橘系の匂いをまとっていた人物ではないかと……。
マルコは、あの時、犯人と直接対峙していた可能性があると思うんです。
一度嗅いだ匂い――しかも恐怖と結びついた匂いなら、忘れるわけがないと思って」
「あなたは、その猫の反応から“犯人は柑橘系の香りをつけていた可能性が高い”と見立ててるのね。
なるほど……もしマルコちゃんがそこまで怯えるなら、状況証拠として考慮できるかもしれないわ。
……ちなみに、私は個人的に猫を飼っていてね。そういう“反応から感じとる気持ち”って、わかるのよ」
「えっ、本当ですか? 伊藤刑事も猫を? なんてお名前なんですか?」
「うちの子も保護猫で三毛猫よ。名前は“タマ”。もう4年一緒に暮らしてるの。猫ってほんと、かわいくて、表情豊かよね」
「わぁ……いいですね。うちも飼ってますけど、やっぱり猫って家族ですね」
「それで――まだ何か、気づいたことがあるんでしょう?」
「あ、はい。あの……もう一つだけ、お話ししてもいいですか?」
「もちろん。なんでも話してちょうだい。阿部刑事にもきちんと共有しておくから」
「ありがとうございます。
……その、マルコが事件の夜、犯人と出会っていたとしたら――
きっと、西園寺さんが襲われていたとき、マルコはご主人を守ろうとして、とっさに飛びかかったのではないかと思うんです。
猫って、身を守るとき、本気で爪で引っ掻いたり、かみついたりしますよね。
犬ほど忠実とは言われないけれど……
日頃マルコを見ていると、あの子は――今も“自分が助けられなかったこと”を悔やんでいるように感じるんです。
もしマルコが犯人に飛びかかっていたとしたら、犯人には“ひっかき傷”や“牙の跡”が残ってるはず。
それが証拠になるかもしれないんです。
だから、どうか……捜査の中で、そういう“傷がある人物”がいなかったか、確認してみていただけませんか」
伊藤は目を細めながら、深くうなずいた。
「……わかったわ。爪の痕跡、引っかき傷、動物の噛み跡ね。確認してみる。もちろん、捜査情報そのものはあなたにすべてお話できないけれど、
あなたの言葉はしっかり記録に残して、私たちの視点にも加えておく」
「ありがとうございます。なんだか……少し、肩の荷が下りました」
「それにしても、今日はありがとう。わざわざ来てくれて。私も猫の話、もっと聞きたいわ。今度ゆっくり話せたら嬉しい」
「はい、こちらこそ……。最初は緊張していましたけど、伊藤刑事がいてくださって、本当に心強かったです。ありがとうございました。では、今日はこれで――」
「あ、ちょっと待って。西園寺さん宅の猫―今、あなたが保護してるんでしょう?よければ、今度、私も会いに行ってもいいかしら。ただの“猫好きな刑事”として。飼い主も亡くなっているから……今後の行き先も、考えないといけないでしょうし」
「はい、大丈夫です。ぜひ来てください。……でも、しばらくは私のところでちゃんとお世話できますから。どうぞ、安心してください」
「ありがとう。じゃあ、また連絡するわ。お疲れさまでした。気をつけて帰ってね」
「はい。ありがとうございました。失礼いたします」
……
警察署を出たとき、私は少しだけ背筋を伸ばしていた。
まるで――猫友達が、ひとり増えたみたいな気分で嬉しかった。
これで、本当に犯人が捕まればいいのに。
スクーターに跨がり、エンジンをかける。
初夏の陽射しが頬に触れる。汗ばむ空気の向こうに、猫たちの待つ家がある。
夏は、すぐそこまで来ているようだった。
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