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囚われの八宵
第十八話:月乃の決意
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第十八話:月乃の決意
月乃の社宅は規制線が張られ、怪異対策課の職員が何人か来ている。悪魔のベゼルが人間界で破壊活動をしたということで、職員が派遣され、現場検証が行われている所だ。それに合わせて、京都府の怪異対策課では、月乃自身の事情聴取も行われた。
八宵との関係性や、ベゼルと対峙した時の様子など根掘り葉掘り聞かれてしまい、月乃自身突然に八宵がいなくなってしまった事へのショックも大きく、事情聴取が終わる頃にはすっかり疲労困憊となってしまった。
事情聴取が終わり、月乃の同僚のアルトが月乃に話しかける。
「これから、どうするんだよ、社宅もあんなだし、八宵ちゃんも連れて行かれたんだろ」 と。
月乃はすっかり疲れた様子で答える。
「どうするも何も俺に出来ることなんて何もないよ。そもそも八宵は元々地獄の住人だったわけだし、元いた場所に帰っただけだろ。それにただただ霊力が分けて欲しくて、俺の事利用してただけなんだから。もういいだろ、八宵のことは、頼むから暫く俺の事も放っておいてくれないか」
とやや自暴自棄気味のようだ。
それに対し同僚のアルトは
「それでいいのかよ。お前がそれで良いんだったらそれでも俺らは全然構わないけど、今の八宵ちゃんの恋人はお前自身じゃないのかよ、それにお前自身利用されたって言ってるけど、多分…それだけじゃないだろ」
月乃はそれに対しては何も言わなかった。
怪異対策課から離れると、特に行くあてもない月乃は規制線の張られた自身の社宅に自然と向かっていた。
自身の部屋は電気もつかず真っ暗で破壊されている。何より自分のベッドで八宵が犯されていた事がショックであったが、それよりも何より、以前に自身が八宵に贈った霊力回復用のシルバーリングが置いていかれたという事は、月乃に大きく心を抉るようなショックを与えた。
もうこれ以上八宵に深入りすること無く、お互い過去の事として受け入れるしかないのだろうかと思案する。しかし、思い出すのは八宵との楽しかった日々の思い出や八宵の事を愛しく思う気持ちの方であった。
八宵と路地裏で初めて会った時の事や、自分の事を待ち遅くまで職場の外で待っていたこと、ヘアゴムをくれたことや、八宵を保護する事になった日のことや保護室での思い出…。恋人関係になって日は浅いが幸せな日々だった毎日のことや、何より八宵の笑顔や恥ずかしがっている顔など…。八宵と出会ってからは、どの日も八宵の事を考えて生活していたように思う。
月乃は自身の頬を両手で叩くと、ぎゅっと目を見張り自分自身に気合を入れる。そのまますぐに、実家の九州地方の神社に住む知り合いの死霊使いに連絡をとる。その死霊使いは月乃の古くからの知り合いであり、地獄の門を開く事の出来る人物である。なんとかして地獄に向かう方法が必要なのである。
ーー
後日、月乃は地獄の門の前にいた。傍には月乃の上司の浅葱も来ている。月乃は浅葱に対して、
「じゃあ、後のことはよろしくお願いします…」
と静かな口調で言う。浅葱はというと、
「あなたを勝手に地獄に向かわすなんて事…させたくないのだけれど…」
と月乃を地獄に向かわす事に対してこれで良いのかと迷っているようである。
月乃はというと、
「だからちゃんと退職届出しますよ…浅葱さんに迷惑かけられませんから…」
と話す。浅葱はすぐに
「そういう問題じゃあないでしょう」
と月乃を一喝する。
少しの間を置いて月乃は
「これは俺と八宵の問題ですから。もう決めました。あいつがどう思っていようと、俺は八宵を取り戻しに行きます。すみません、これだけは譲れないんです」
と静かだが強い決意で浅葱に言う。
「分かった…メロディがあなたに話があるって言ってたわ…ちゃんと話聞いてあげてね」
と浅葱が言うと、月乃は小さく頷いた。
月乃は同僚のメロディに会うと、メロディは古い短刀を月乃に渡す。
「これは対悪魔用に強力な呪力を込めた短刀です。きっと地獄ではベゼルとの戦闘は避けられないと思います。チャンスは一回。これをベゼルの胸元に突き刺して呪力解放できれば、八宵と逃げるチャンスぐらいは持てるはずです。ベゼルを倒して八宵を取り戻せたら、必ず呪力で合図をください。こちらで地上に帰れるようにサポートしますから」
と月乃に短刀の説明をする。
月乃は短く
「ありがとう」
と言うと短刀を受け取る。
「月乃君、絶対に八宵君を取り戻すのよ、それにあなたの退職届なんて受け取れないからね…」
と浅葱は少し哀しそうな表情をしている。月乃は黙って浅葱に敬礼すると、地獄の門を開き、八宵とベゼルのいる所へ向かうのであった。
月乃の社宅は規制線が張られ、怪異対策課の職員が何人か来ている。悪魔のベゼルが人間界で破壊活動をしたということで、職員が派遣され、現場検証が行われている所だ。それに合わせて、京都府の怪異対策課では、月乃自身の事情聴取も行われた。
八宵との関係性や、ベゼルと対峙した時の様子など根掘り葉掘り聞かれてしまい、月乃自身突然に八宵がいなくなってしまった事へのショックも大きく、事情聴取が終わる頃にはすっかり疲労困憊となってしまった。
事情聴取が終わり、月乃の同僚のアルトが月乃に話しかける。
「これから、どうするんだよ、社宅もあんなだし、八宵ちゃんも連れて行かれたんだろ」 と。
月乃はすっかり疲れた様子で答える。
「どうするも何も俺に出来ることなんて何もないよ。そもそも八宵は元々地獄の住人だったわけだし、元いた場所に帰っただけだろ。それにただただ霊力が分けて欲しくて、俺の事利用してただけなんだから。もういいだろ、八宵のことは、頼むから暫く俺の事も放っておいてくれないか」
とやや自暴自棄気味のようだ。
それに対し同僚のアルトは
「それでいいのかよ。お前がそれで良いんだったらそれでも俺らは全然構わないけど、今の八宵ちゃんの恋人はお前自身じゃないのかよ、それにお前自身利用されたって言ってるけど、多分…それだけじゃないだろ」
月乃はそれに対しては何も言わなかった。
怪異対策課から離れると、特に行くあてもない月乃は規制線の張られた自身の社宅に自然と向かっていた。
自身の部屋は電気もつかず真っ暗で破壊されている。何より自分のベッドで八宵が犯されていた事がショックであったが、それよりも何より、以前に自身が八宵に贈った霊力回復用のシルバーリングが置いていかれたという事は、月乃に大きく心を抉るようなショックを与えた。
もうこれ以上八宵に深入りすること無く、お互い過去の事として受け入れるしかないのだろうかと思案する。しかし、思い出すのは八宵との楽しかった日々の思い出や八宵の事を愛しく思う気持ちの方であった。
八宵と路地裏で初めて会った時の事や、自分の事を待ち遅くまで職場の外で待っていたこと、ヘアゴムをくれたことや、八宵を保護する事になった日のことや保護室での思い出…。恋人関係になって日は浅いが幸せな日々だった毎日のことや、何より八宵の笑顔や恥ずかしがっている顔など…。八宵と出会ってからは、どの日も八宵の事を考えて生活していたように思う。
月乃は自身の頬を両手で叩くと、ぎゅっと目を見張り自分自身に気合を入れる。そのまますぐに、実家の九州地方の神社に住む知り合いの死霊使いに連絡をとる。その死霊使いは月乃の古くからの知り合いであり、地獄の門を開く事の出来る人物である。なんとかして地獄に向かう方法が必要なのである。
ーー
後日、月乃は地獄の門の前にいた。傍には月乃の上司の浅葱も来ている。月乃は浅葱に対して、
「じゃあ、後のことはよろしくお願いします…」
と静かな口調で言う。浅葱はというと、
「あなたを勝手に地獄に向かわすなんて事…させたくないのだけれど…」
と月乃を地獄に向かわす事に対してこれで良いのかと迷っているようである。
月乃はというと、
「だからちゃんと退職届出しますよ…浅葱さんに迷惑かけられませんから…」
と話す。浅葱はすぐに
「そういう問題じゃあないでしょう」
と月乃を一喝する。
少しの間を置いて月乃は
「これは俺と八宵の問題ですから。もう決めました。あいつがどう思っていようと、俺は八宵を取り戻しに行きます。すみません、これだけは譲れないんです」
と静かだが強い決意で浅葱に言う。
「分かった…メロディがあなたに話があるって言ってたわ…ちゃんと話聞いてあげてね」
と浅葱が言うと、月乃は小さく頷いた。
月乃は同僚のメロディに会うと、メロディは古い短刀を月乃に渡す。
「これは対悪魔用に強力な呪力を込めた短刀です。きっと地獄ではベゼルとの戦闘は避けられないと思います。チャンスは一回。これをベゼルの胸元に突き刺して呪力解放できれば、八宵と逃げるチャンスぐらいは持てるはずです。ベゼルを倒して八宵を取り戻せたら、必ず呪力で合図をください。こちらで地上に帰れるようにサポートしますから」
と月乃に短刀の説明をする。
月乃は短く
「ありがとう」
と言うと短刀を受け取る。
「月乃君、絶対に八宵君を取り戻すのよ、それにあなたの退職届なんて受け取れないからね…」
と浅葱は少し哀しそうな表情をしている。月乃は黙って浅葱に敬礼すると、地獄の門を開き、八宵とベゼルのいる所へ向かうのであった。
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