月下のもと、彼岸の金魚

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月乃愛海と八宵の出会い

第三話:月乃の使い魔

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第三話:月乃の使い魔

ーこれまでのあらすじー
 路時裏で倒れているところを月乃に助けられた八宵。八宵は翌日、最寄りでパンを買い、貰った名刺を見ながら、月乃の職場である怪異対策課のある建物に向かって行った。月乃は建物地下で仕事をしているらしい。地下にある怪異対策課で再び月乃と再会すると、二人で一緒にランチを食べるのであった。


 八宵は月乃に促されベンチに座り、パンを食べながらしばらく談笑していた。気づくと、月乃のために購入したパンであったが、促されるまま気付けばそのほとんどを八宵が食べてしまっていた。

 月乃と八宵の会話は、最初は今日はいい天気だな、とか八宵が日頃からちゃんと飯を食っているのか、とかいう、たわいも無い会話であった。八宵は月乃と会話しているうちに月乃の持つ霊力や月乃自身のオーラが、自分にとって大変に居心地の良いものであると気づいていく。そして、月乃の霊力を通して、月乃が二体の怪異を使い魔として使役している事を感じ取った。

 一方で、月乃はしきりに「ちゃんと飯を食っているのか、ちゃんとした所で寝られているのか」ということを八宵に何度も確認するように聞いていた。
ふと、八宵が口を開く。

「月乃はさ、友達とかいる?」
 と。

 月乃は、どうして八宵がそんなことを聞くのか分からなかった。

 月乃は口を開くと
「いや…俺は割と友達少ない方かな…」
 と呟く。

 すると八宵は
「でも月乃、使い魔に怪異二体使役しているでしょ?僕、なんとなく分かるよ…」
 と。

 月乃はようやく八宵の質問の意味を理解した。自分は、確かに「神秘の海蛇ユルルング」「氷の妖精のクリオネ」の二体の怪異を使い魔としている。八宵は続けて、
「うーん、二体も使役してるんだね…へぇ」
 とどこか興味のありそうで、寂しそうな声を出す。

 ぱっと表情をかけると、八宵は、
「良かったらさ、僕の事も使役してみる?」
 と月乃に提案する。

 月乃はそんな八宵に対して、自分の霊力を通して集中してみる。幼い頃から霊力の素質がある月乃だが感覚的に理解できた事がある。

 目の前の
「金魚の幽霊の怪異である八宵は、自分の今の力量では使役する事が出来ない」「八宵の魂の情報にはなんらかの鍵がかかっている」と。

 すると休憩時間の五分前を伝えるチャイムの音が響いた。月乃ははっと我にかえると、
「じゃあ、休憩時間もう終わるから」
 と八宵に告げる。お互いにじゃあな、バイバイと手を振ると、八宵は怪異対策課の棟を離れる事にした。

 八宵は自分の住処にしている廃屋へと帰って行くのだが、月乃との会話で心が満たされた一方、どこかで寂しい思いをしていた。

 普段、八宵は「金魚の幽霊の怪異」としてこの世に留まっており、人間界で生活するためには他者から呼吸を分けて貰えなければならない。具体的には、一日一回は誰かに呼吸を分けて貰いたい所である。八宵の呼吸の摂取方法は、人間や怪異との皮膚接触や経口接触が必要になるが…。

 八宵は自分の廃屋に帰るとぼんやりと以下のような事を考えていた。

「また月乃に会いに行きたいな…月乃の仕事が終わるくらいに僕が外で待ってたら、どう思うのかな…」
「僕みたいなのが会いに行っても月乃は困るだけだよね…」


 気づけば日は暮れ、夜が近づいてきた。

 八宵は月乃の帰りを待ちに、会いに行こうと決心した。

 再び昼間通った道を思い出しながら、何度も月乃の名刺を確認しながら歩いていた。

 再び怪異対策課の建物の前に着き、月乃の一日の終業を待っていると、建物の中から月乃が現れたのである。

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