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開拓目標1
ミミック尋問
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「メヌエットの行方は分かりませんが、手掛かりに心当たりがあります」
「そうなんですか?」
私が自信満々に言うと、ソフィアさんは驚いた顔をしました。ふふふ、やはり気付いていませんでしたか。
「ミミックから情報を引き出すんですね?」
そこにコウメイさんがいつものように眼鏡をクイッとさせて登場しました。さすがですね。
「その通りです。ミミックはメヌエットに従ってヨハンさんを騙そうと演技までしていましたから、十分な知能を持っているはずです」
「そう言うと思って連れてきました」
「オッパイ」
それまだ続いてるんですか。コウメイさんの後ろにはドロドロした姿のミミックがついてきていました。珍しくモンスターがコウメイさんに慣れているみたいですね。
「さあ、君を利用していたあの魔族に変身したまえ」
コウメイさんが魔宝石をミミックに食べさせました。そんな使い方もあるんですね、ギルドで販売する魔宝石の値段を決める参考にさせてもらいますね。
「オッパイ!」
ミミックは一声鳴くと、みるみるうちに姿を変えていき、あのメヌエット――の背中に蝙蝠の翼が生えた姿になりました。あの像と同じ姿です。やはりあれは魔族の像でしたか。
「さあ、ギルドマスターの質問に答えるのだ」
コウメイさんに促され、偽メヌエットが私に向き直ります。ミミックは変身した相手の記憶もコピーするんですよね。改めて考えるととんでもない能力ですね。でも魔宝石の力を借りているところを見ると、そう簡単に出来ることでは無さそうです。
さて、私が想定していたよりもずっと詳しく話を聞けそうです。なんと聞いたらいいでしょうか?
「それでは、あなた達はエルフを捕まえてどこかへ連れていくというのは本当ですか?」
「ああ、間違いない」
なるほど。口調は本性を現した時のものですね、こっちが彼女の本来の口調なのでしょう。
「では、一年ぐらい前に無帰還の迷宮で人間の男性を誘拐しましたか?」
「知らんな」
メヌエットはあれに関わってはいないということでしょうか。まさか嘘をついたりはしませんよね?
「ところで、あなたはヨハンさんを東の大陸に連れて行こうとしてましたよね。何故ですか?」
「エルフと掛け合わせてハーフエルフを作るためだ」
なんかエグいことを言い出しましたね。人間とエルフのハーフに特別な意味があるのでしょうか?
「前に連れてこられた男はエルフと関係を持つことを拒否して逃げ出したからな。扱いやすそうな若い男を探していたのだ」
えっ?
「今、何と言いましたか?」
「扱いやすそうな若い……」
「その前です!」
「前に連れてこられた男はエルフと関係を持つことを拒否して逃げ出した」
既に魔族に連れていかれた男性がいて、逃げ出した。それって、先輩のことでは?
「その男の人はフィストル・アグロゾフという名前ではないですか?」
「名前は知らん」
それもそうですね。ちょっと気が早すぎました。質問の仕方を変えないと。
「では……その男性はどんな見た目でしたか? 髪の色とか、服装とか」
先輩と共通する要素があるほど、可能性は高まります。
「確か髪は緑色だったな。服はよく覚えていない。普通の服じゃないか?」
緑色の髪。珍しいエメラルドグリーンの髪を持つ先輩の特徴と一致しますね。服装も鎧を着ていたり変わった服ではないということなので、一気に先輩である可能性が高まりました。
まだ決め手には欠けますが……一番大事なことを聞いてしまいましょう。
「その男性がどこに行ったか分かりますか?」
「分からないが、東の大陸からは出られないはずだ。誰かが匿ったりしていなければ既にどこかで野垂れ死んでいるんじゃないか?」
まあそんなところでしょうね。
「人間を匿うような魔族に心当たりがあるんですか?」
「そういう物好きはどこにでもいる」
ふーむ。
「では、無帰還の迷宮には侵入者を東の大陸へ連れていく仕掛けがあるのですか?」
「それは……お……」
「お?」
「オッパイ!」
ボフン、と音を立ててまたドロドロのミミックに戻ってしまいました。時間切れのようです。
「魔宝石の追加はないの?」
ミラさんの質問にコウメイさんは首を振ります。どうやらそんなにポンポン作れるものでもないようですね。あってももったいないからこれ以上使う気はないですけど。
「大丈夫ですよ、ミラさん。もう十分に情報は引き出せました」
どうせメヌエットは先輩の行方を知りませんからね。
「あとは無帰還の迷宮を私達で調べましょう!」
目を輝かせながらソフィアさんが提案しました。それには同意なのですが……何となく不安です。
「無帰還の迷宮を攻略するには盗賊職の冒険者が不可欠ですね」
「俺の出番すね、任せてください」
コタロウさんがやる気を見せます。ギルドには盗賊が他にもいるのですが、やはり頼りになるのは実績のあるコタロウさんですね。戦力としても抜きん出ていますし。
「では、ついに開拓目標に手を伸ばすのですな! Cランク指令として国からギルドに報酬を出しましょう」
「宰相閣下!?」
いつの間に来ていたのでしょう、クレメンスさんが話に割り込んできました。
「Cランク指令って凄いの?」
首を傾げるミラさん。
「成功報酬として一人あたり2000デント支払われますね」
「2000デント!? そんなにあったら一年遊んで暮らせるじゃない!」
そうですね。一般人の年収とほぼ同じですからね。
「正しくは100シエラですがね」
クレメンスさんが得意気に補足しました。シエラ金貨はデント銀貨と比べて安定した価値を持つので他国でも安心して使えるから、冒険者にはありがたい話ですね。とはいえ日常で一番使うのはピスト銅貨ですけどね。デント銀貨では細かい買い物がしにくいんですよね。
「50シエラ900デント500ピストで満遍なく貰えないかしら?」
「そんなに沢山持って歩くのは大変だぬー」
使い勝手を求めるミラさんにタヌキさんが現実的な合いの手を入れました。金貨百枚でも多いですけどね。そろそろ皆さんも商人ギルドがやっている金庫サービスを利用する頃合いでしょうか。
「それでは、ギルドから無帰還の迷宮を攻略するメンバーを選出しましょうか」
脱線しかけた話を元に戻した私の言葉に、ギルドに集まっていた冒険者達が真剣な表情に変わったのでした。
「そうなんですか?」
私が自信満々に言うと、ソフィアさんは驚いた顔をしました。ふふふ、やはり気付いていませんでしたか。
「ミミックから情報を引き出すんですね?」
そこにコウメイさんがいつものように眼鏡をクイッとさせて登場しました。さすがですね。
「その通りです。ミミックはメヌエットに従ってヨハンさんを騙そうと演技までしていましたから、十分な知能を持っているはずです」
「そう言うと思って連れてきました」
「オッパイ」
それまだ続いてるんですか。コウメイさんの後ろにはドロドロした姿のミミックがついてきていました。珍しくモンスターがコウメイさんに慣れているみたいですね。
「さあ、君を利用していたあの魔族に変身したまえ」
コウメイさんが魔宝石をミミックに食べさせました。そんな使い方もあるんですね、ギルドで販売する魔宝石の値段を決める参考にさせてもらいますね。
「オッパイ!」
ミミックは一声鳴くと、みるみるうちに姿を変えていき、あのメヌエット――の背中に蝙蝠の翼が生えた姿になりました。あの像と同じ姿です。やはりあれは魔族の像でしたか。
「さあ、ギルドマスターの質問に答えるのだ」
コウメイさんに促され、偽メヌエットが私に向き直ります。ミミックは変身した相手の記憶もコピーするんですよね。改めて考えるととんでもない能力ですね。でも魔宝石の力を借りているところを見ると、そう簡単に出来ることでは無さそうです。
さて、私が想定していたよりもずっと詳しく話を聞けそうです。なんと聞いたらいいでしょうか?
「それでは、あなた達はエルフを捕まえてどこかへ連れていくというのは本当ですか?」
「ああ、間違いない」
なるほど。口調は本性を現した時のものですね、こっちが彼女の本来の口調なのでしょう。
「では、一年ぐらい前に無帰還の迷宮で人間の男性を誘拐しましたか?」
「知らんな」
メヌエットはあれに関わってはいないということでしょうか。まさか嘘をついたりはしませんよね?
「ところで、あなたはヨハンさんを東の大陸に連れて行こうとしてましたよね。何故ですか?」
「エルフと掛け合わせてハーフエルフを作るためだ」
なんかエグいことを言い出しましたね。人間とエルフのハーフに特別な意味があるのでしょうか?
「前に連れてこられた男はエルフと関係を持つことを拒否して逃げ出したからな。扱いやすそうな若い男を探していたのだ」
えっ?
「今、何と言いましたか?」
「扱いやすそうな若い……」
「その前です!」
「前に連れてこられた男はエルフと関係を持つことを拒否して逃げ出した」
既に魔族に連れていかれた男性がいて、逃げ出した。それって、先輩のことでは?
「その男の人はフィストル・アグロゾフという名前ではないですか?」
「名前は知らん」
それもそうですね。ちょっと気が早すぎました。質問の仕方を変えないと。
「では……その男性はどんな見た目でしたか? 髪の色とか、服装とか」
先輩と共通する要素があるほど、可能性は高まります。
「確か髪は緑色だったな。服はよく覚えていない。普通の服じゃないか?」
緑色の髪。珍しいエメラルドグリーンの髪を持つ先輩の特徴と一致しますね。服装も鎧を着ていたり変わった服ではないということなので、一気に先輩である可能性が高まりました。
まだ決め手には欠けますが……一番大事なことを聞いてしまいましょう。
「その男性がどこに行ったか分かりますか?」
「分からないが、東の大陸からは出られないはずだ。誰かが匿ったりしていなければ既にどこかで野垂れ死んでいるんじゃないか?」
まあそんなところでしょうね。
「人間を匿うような魔族に心当たりがあるんですか?」
「そういう物好きはどこにでもいる」
ふーむ。
「では、無帰還の迷宮には侵入者を東の大陸へ連れていく仕掛けがあるのですか?」
「それは……お……」
「お?」
「オッパイ!」
ボフン、と音を立ててまたドロドロのミミックに戻ってしまいました。時間切れのようです。
「魔宝石の追加はないの?」
ミラさんの質問にコウメイさんは首を振ります。どうやらそんなにポンポン作れるものでもないようですね。あってももったいないからこれ以上使う気はないですけど。
「大丈夫ですよ、ミラさん。もう十分に情報は引き出せました」
どうせメヌエットは先輩の行方を知りませんからね。
「あとは無帰還の迷宮を私達で調べましょう!」
目を輝かせながらソフィアさんが提案しました。それには同意なのですが……何となく不安です。
「無帰還の迷宮を攻略するには盗賊職の冒険者が不可欠ですね」
「俺の出番すね、任せてください」
コタロウさんがやる気を見せます。ギルドには盗賊が他にもいるのですが、やはり頼りになるのは実績のあるコタロウさんですね。戦力としても抜きん出ていますし。
「では、ついに開拓目標に手を伸ばすのですな! Cランク指令として国からギルドに報酬を出しましょう」
「宰相閣下!?」
いつの間に来ていたのでしょう、クレメンスさんが話に割り込んできました。
「Cランク指令って凄いの?」
首を傾げるミラさん。
「成功報酬として一人あたり2000デント支払われますね」
「2000デント!? そんなにあったら一年遊んで暮らせるじゃない!」
そうですね。一般人の年収とほぼ同じですからね。
「正しくは100シエラですがね」
クレメンスさんが得意気に補足しました。シエラ金貨はデント銀貨と比べて安定した価値を持つので他国でも安心して使えるから、冒険者にはありがたい話ですね。とはいえ日常で一番使うのはピスト銅貨ですけどね。デント銀貨では細かい買い物がしにくいんですよね。
「50シエラ900デント500ピストで満遍なく貰えないかしら?」
「そんなに沢山持って歩くのは大変だぬー」
使い勝手を求めるミラさんにタヌキさんが現実的な合いの手を入れました。金貨百枚でも多いですけどね。そろそろ皆さんも商人ギルドがやっている金庫サービスを利用する頃合いでしょうか。
「それでは、ギルドから無帰還の迷宮を攻略するメンバーを選出しましょうか」
脱線しかけた話を元に戻した私の言葉に、ギルドに集まっていた冒険者達が真剣な表情に変わったのでした。
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