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エルフ領ネーティアの内情
強者
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モミアーゲさんがパーティーの前に現れました。ということはこの状況を打破する何か凄いアイテムでも持っているのでしょうか?
「行商人さん? 何か掘り出し物でも売ってるのかしら」
ソフィアさんも不思議そうにしています。そうですよね、さっきのはどう見ても完敗ですから、アイテムでどうにかなるとは思えないのですが。
「ええ、とんでもない掘り出し物がありますよぉ~!」
なんでしょう、妙にハイテンションなモミアーゲさんですが何かとんでもない隠し玉でもあるのでしょうか? お値段も凄そうですけど。
「おおっ、なんか凄そうっす!」
「なになに? 面白そう!」
ヨハンさんとシトリンが食いついています。あなた達本当に似た者同士ですね。他のメンバーも興味津々といった様子でモミアーゲさんに注目しています。一体何を取り出すのでしょう、ゴソゴソとカバンを漁っています。
「これです!」
そして勢いよく取り出したのは二つに折りたたまれた一枚の紙でした。何か凄い魔力でも宿っているのかと思いましたが、特に何もありません。
「それは何すか? 符術でもするんすか?」
符術とは、コタロウさんの国の魔術師が使う独特の術ですね。あらかじめ呪文が書かれた霊符と呼ばれる一枚の紙を使って様々な術を使うものです。主に神などの強力な存在から力を借りるための嘆願書といった役割を持ちます。
「おお、さすが忍者のコタロウさんはお目が高い!」
モミアーゲさんが大げさな身振りで返事をしました。ああなるほど、トウテツは自分より強い相手の言うことを聞くから、何か強い者を呼んで無理やり従わせるのですね。虎の威を借る狐作戦とでもいいましょうか。
「それで何が起こるんすか?」
コタロウさんの冷めたような追加の質問に、もったいぶりながら紙を開くモミアーゲさん。ヨハンさんを始めパーティーの皆さんがのぞき込みます。
そこに書かれていた文字は――
『召喚:Sランク冒険者』
いや、それは霊符じゃないですよね? ただ紙に文字を書いただけですよね? 筆跡が明らかにモミアーゲさんのものなんですけど。
「Sランク冒険者! なんかスゲー!」
ヨハンさんが喜んでいますが、冒険者ギルドにいるなら分かるでしょう?
そんな冒険者は存在しないってことが。
現在最もランクの高い冒険者はコウメイさんでBランクです。その次に高いのがコタロウさんとヨハンさんですよ?
「Sランク冒険者って、そんな凄い方がいるんですね!」
ソフィアさんが目を輝かせて言いますが、残念ながらいません。モミアーゲさんはどうするつもりなのでしょうか?
「これって、ただの紙すよね。何の効果もなさそうすけど」
コタロウさんが冷静にツッコミます。
「それを売りつけるつもりかぬー。ちなみにいくらかぬー?」
タヌキさんが値段を聞いていますが、まさか買うつもりじゃないですよね?
「ふっふっふ、その通りです。この紙には何の効果もありません。ですが、これを買っていただくと冒険者ギルドで、いえ、人類で最強の冒険者が助けに来てくれるという寸法です。ちなみに2000デントです。お買い得ですね」
モミアーゲさんは悪びれた様子もなく、自信満々に言い切りました。
◇◆◇
「どういうつもりでしょう? Sランク冒険者なんていませんよ?」
「いるじゃない~」
現地の様子を見ながら思わず疑問を口にすると、恋茄子が不思議なことを言いました。
「えっ?」
「冒険者ギルドにはSランクの冒険者が一人登録されているわよね~?」
恋茄子がそう言って冒険者管理板を指さします。そこに書かれていたのは……
『Sランク ギルドマスター エスカ・ゴッドリープ』
Oh……。
◇◆◇
「どういうことっすか?」
「あなた方がこれを買うと、『正当な対価を支払って』助けを呼んだことになるのであのお方も気兼ねなく助けに来れるわけですねぇ」
これは追跡をしている私に話しかけていますね。そういうことですか……。
モミアーゲさんの言葉に、コタロウさんとタヌキさんが顔を見合わせます。ヨハンさんとシトリンはよく分かっていない顔で呆けています。
「なるほど、あの強力な電撃をトウテツに食らわせてやるわけか」
どの強力な電撃ですかアルベルさん? どうやらモミアーゲさんが何をしようとしているか理解したみたいですね。
「なるほど! それならあのトウテツも大人しく言うことを聞きますね」
ソフィアさんが両手を合わせて嬉しそうに言いました。
「いいでしょう。2000デントも支払っているのだから誰からも文句は出ないと思います」
パーティーでお金を出しあってモミアーゲさんから召喚札を買ったのを見たので、空間転移でやってきました。留守番は恋茄子に任せていますが、客を待たせておくぐらいしかできないのでさっさと用事を済ませて帰らなくてはいけませんね。
「うおお、マスターが召喚されたっす!」
召喚はされてませんけどね。ところでモミアーゲさんが懐に入れているその2000デントはどこに行くんですか? 働くのは私なんですけど。
「この人って強いの?」
シトリンが不思議そうに言います。そうですよね、私が戦っている姿を見た人はここにはいませんし。
「怒ると怖いっすよ!」
「そう思うなら怒らせないでもらえませんかね?」
私がニッコリと笑いかけると、ヨハンさんが「ひえー!」と言って木の陰に隠れました。何ですかその反応。失礼な!
「よろしくお願いしますねぇ~」
モミアーゲさんが楽しそうに言ってそのまま姿を消しました。あとでお金の行方についてしっかり話し合わないといけませんね。
「それでは、行きましょうか」
モタモタしているとギルドがどうなるか分からないので、さっさと行きますよ!
『なんだ、また来たのか? 今度はそのねーちゃんが相手かい。そんな細い身体で戦えんのかぁ?』
トウテツのねぐらにやってきました。
「ふふ、どうでしょう?」
私が挑発的な笑みを浮かべて見せると、トウテツが一気に距離をつめてきます。軽口を叩きながらも本気で攻撃してきましたね。未知の相手を侮るほど愚かでもないようです。
『食らいな』
トウテツが高速のパンチを連続で叩き込んできます。
「危ない!」
「大丈夫ですよ」
後ろで見ていたシトリンが焦った声を上げますが、私は振り返って笑顔を向けます。その身体をトウテツは滅多打ちにしていますが……無駄です。
『きっ、効かねぇだと!?』
トウテツのパンチは全て私の身体に当たりましたが、ダメージを与えられると思ったら大間違い。
「そんなものですか?」
私は腕を組み、トウテツを馬鹿にしたような視線を送ります。もちろんこれはわざとです。こいつには私が自分より強いと思わせないといけませんので。
『くっ、これでどうだ!』
トウテツの角が光り、熱線が放たれました。これはなかなかの威力ですね。先ほどの連打と合わせて、そろそろ十分なエネルギーが貯まったでしょうか?
「ではそろそろ私から反撃しましょう」
私は左手の人差し指一本を立て、それを驚愕の表情で固まっているトウテツに軽く当ててやりました。いかにも手抜きをしているかのように見せるためです。思いっきり殴りつけても別に威力は変わりませんからね。
【堪忍袋】
この技は、別に怒りの雷を落とすだけのものではありません。今やっているのが本来の使い方で、相手の攻撃を吸収して貯め込み、まとめてお返しする技になります。ちょっとだけ自分の魔力も上乗せしておきましょう。
『ギャアアアア!!』
――ズドォォォオン!!
あっ……。
私の指が触れた瞬間、トウテツの巨体は激しく吹っ飛んでいき、途中の樹木を次々となぎ倒し200ガウルほど先で止まりました。
「うおおお、道が出来たっす!」
ええと……ちょっと魔力を上乗せしすぎてしまいました。ミラさんのことを笑えないレベルで森林破壊が発生しましたが、これはトウテツが悪いということにしておきましょう、うん。
「凄い……素敵ですお姉さま!」
シトリンが何やら感動していますが、お姉さまはやめてもらえませんかね。絶対あなたの方が年上ですよね?
「ど……どうです? 観念しましたか?」
やりすぎて内心ちょっと焦っているのを隠して、余裕の表情でトウテツに話しかけます。ちょっとほっぺたのあたりが引きつってるような気がしますが、ここは勢いでごまかしましょう。
というか、トウテツは生きているんでしょうか?
「行商人さん? 何か掘り出し物でも売ってるのかしら」
ソフィアさんも不思議そうにしています。そうですよね、さっきのはどう見ても完敗ですから、アイテムでどうにかなるとは思えないのですが。
「ええ、とんでもない掘り出し物がありますよぉ~!」
なんでしょう、妙にハイテンションなモミアーゲさんですが何かとんでもない隠し玉でもあるのでしょうか? お値段も凄そうですけど。
「おおっ、なんか凄そうっす!」
「なになに? 面白そう!」
ヨハンさんとシトリンが食いついています。あなた達本当に似た者同士ですね。他のメンバーも興味津々といった様子でモミアーゲさんに注目しています。一体何を取り出すのでしょう、ゴソゴソとカバンを漁っています。
「これです!」
そして勢いよく取り出したのは二つに折りたたまれた一枚の紙でした。何か凄い魔力でも宿っているのかと思いましたが、特に何もありません。
「それは何すか? 符術でもするんすか?」
符術とは、コタロウさんの国の魔術師が使う独特の術ですね。あらかじめ呪文が書かれた霊符と呼ばれる一枚の紙を使って様々な術を使うものです。主に神などの強力な存在から力を借りるための嘆願書といった役割を持ちます。
「おお、さすが忍者のコタロウさんはお目が高い!」
モミアーゲさんが大げさな身振りで返事をしました。ああなるほど、トウテツは自分より強い相手の言うことを聞くから、何か強い者を呼んで無理やり従わせるのですね。虎の威を借る狐作戦とでもいいましょうか。
「それで何が起こるんすか?」
コタロウさんの冷めたような追加の質問に、もったいぶりながら紙を開くモミアーゲさん。ヨハンさんを始めパーティーの皆さんがのぞき込みます。
そこに書かれていた文字は――
『召喚:Sランク冒険者』
いや、それは霊符じゃないですよね? ただ紙に文字を書いただけですよね? 筆跡が明らかにモミアーゲさんのものなんですけど。
「Sランク冒険者! なんかスゲー!」
ヨハンさんが喜んでいますが、冒険者ギルドにいるなら分かるでしょう?
そんな冒険者は存在しないってことが。
現在最もランクの高い冒険者はコウメイさんでBランクです。その次に高いのがコタロウさんとヨハンさんですよ?
「Sランク冒険者って、そんな凄い方がいるんですね!」
ソフィアさんが目を輝かせて言いますが、残念ながらいません。モミアーゲさんはどうするつもりなのでしょうか?
「これって、ただの紙すよね。何の効果もなさそうすけど」
コタロウさんが冷静にツッコミます。
「それを売りつけるつもりかぬー。ちなみにいくらかぬー?」
タヌキさんが値段を聞いていますが、まさか買うつもりじゃないですよね?
「ふっふっふ、その通りです。この紙には何の効果もありません。ですが、これを買っていただくと冒険者ギルドで、いえ、人類で最強の冒険者が助けに来てくれるという寸法です。ちなみに2000デントです。お買い得ですね」
モミアーゲさんは悪びれた様子もなく、自信満々に言い切りました。
◇◆◇
「どういうつもりでしょう? Sランク冒険者なんていませんよ?」
「いるじゃない~」
現地の様子を見ながら思わず疑問を口にすると、恋茄子が不思議なことを言いました。
「えっ?」
「冒険者ギルドにはSランクの冒険者が一人登録されているわよね~?」
恋茄子がそう言って冒険者管理板を指さします。そこに書かれていたのは……
『Sランク ギルドマスター エスカ・ゴッドリープ』
Oh……。
◇◆◇
「どういうことっすか?」
「あなた方がこれを買うと、『正当な対価を支払って』助けを呼んだことになるのであのお方も気兼ねなく助けに来れるわけですねぇ」
これは追跡をしている私に話しかけていますね。そういうことですか……。
モミアーゲさんの言葉に、コタロウさんとタヌキさんが顔を見合わせます。ヨハンさんとシトリンはよく分かっていない顔で呆けています。
「なるほど、あの強力な電撃をトウテツに食らわせてやるわけか」
どの強力な電撃ですかアルベルさん? どうやらモミアーゲさんが何をしようとしているか理解したみたいですね。
「なるほど! それならあのトウテツも大人しく言うことを聞きますね」
ソフィアさんが両手を合わせて嬉しそうに言いました。
「いいでしょう。2000デントも支払っているのだから誰からも文句は出ないと思います」
パーティーでお金を出しあってモミアーゲさんから召喚札を買ったのを見たので、空間転移でやってきました。留守番は恋茄子に任せていますが、客を待たせておくぐらいしかできないのでさっさと用事を済ませて帰らなくてはいけませんね。
「うおお、マスターが召喚されたっす!」
召喚はされてませんけどね。ところでモミアーゲさんが懐に入れているその2000デントはどこに行くんですか? 働くのは私なんですけど。
「この人って強いの?」
シトリンが不思議そうに言います。そうですよね、私が戦っている姿を見た人はここにはいませんし。
「怒ると怖いっすよ!」
「そう思うなら怒らせないでもらえませんかね?」
私がニッコリと笑いかけると、ヨハンさんが「ひえー!」と言って木の陰に隠れました。何ですかその反応。失礼な!
「よろしくお願いしますねぇ~」
モミアーゲさんが楽しそうに言ってそのまま姿を消しました。あとでお金の行方についてしっかり話し合わないといけませんね。
「それでは、行きましょうか」
モタモタしているとギルドがどうなるか分からないので、さっさと行きますよ!
『なんだ、また来たのか? 今度はそのねーちゃんが相手かい。そんな細い身体で戦えんのかぁ?』
トウテツのねぐらにやってきました。
「ふふ、どうでしょう?」
私が挑発的な笑みを浮かべて見せると、トウテツが一気に距離をつめてきます。軽口を叩きながらも本気で攻撃してきましたね。未知の相手を侮るほど愚かでもないようです。
『食らいな』
トウテツが高速のパンチを連続で叩き込んできます。
「危ない!」
「大丈夫ですよ」
後ろで見ていたシトリンが焦った声を上げますが、私は振り返って笑顔を向けます。その身体をトウテツは滅多打ちにしていますが……無駄です。
『きっ、効かねぇだと!?』
トウテツのパンチは全て私の身体に当たりましたが、ダメージを与えられると思ったら大間違い。
「そんなものですか?」
私は腕を組み、トウテツを馬鹿にしたような視線を送ります。もちろんこれはわざとです。こいつには私が自分より強いと思わせないといけませんので。
『くっ、これでどうだ!』
トウテツの角が光り、熱線が放たれました。これはなかなかの威力ですね。先ほどの連打と合わせて、そろそろ十分なエネルギーが貯まったでしょうか?
「ではそろそろ私から反撃しましょう」
私は左手の人差し指一本を立て、それを驚愕の表情で固まっているトウテツに軽く当ててやりました。いかにも手抜きをしているかのように見せるためです。思いっきり殴りつけても別に威力は変わりませんからね。
【堪忍袋】
この技は、別に怒りの雷を落とすだけのものではありません。今やっているのが本来の使い方で、相手の攻撃を吸収して貯め込み、まとめてお返しする技になります。ちょっとだけ自分の魔力も上乗せしておきましょう。
『ギャアアアア!!』
――ズドォォォオン!!
あっ……。
私の指が触れた瞬間、トウテツの巨体は激しく吹っ飛んでいき、途中の樹木を次々となぎ倒し200ガウルほど先で止まりました。
「うおおお、道が出来たっす!」
ええと……ちょっと魔力を上乗せしすぎてしまいました。ミラさんのことを笑えないレベルで森林破壊が発生しましたが、これはトウテツが悪いということにしておきましょう、うん。
「凄い……素敵ですお姉さま!」
シトリンが何やら感動していますが、お姉さまはやめてもらえませんかね。絶対あなたの方が年上ですよね?
「ど……どうです? 観念しましたか?」
やりすぎて内心ちょっと焦っているのを隠して、余裕の表情でトウテツに話しかけます。ちょっとほっぺたのあたりが引きつってるような気がしますが、ここは勢いでごまかしましょう。
というか、トウテツは生きているんでしょうか?
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