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豚の国と二つの帝国
探索は順調、策略は……?
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フローラリアはヨハンさんからもたらされた情報に従い、帝国の侵攻に備えて防衛の準備を進めています。更にクレメンスさん経由で情報を得たカーボ共和国の送り込んだ傭兵が国境辺りに多数配置されました。今のフローラリアはあの天人が率いるハイネシアン軍でもそうそう攻め落とせる状況ではないでしょう。
そんな中で、ヨハンさんとシトリンさんは防衛準備に走り回るウサギ達を片っ端から調べていました。ですが、怪しいウサギは見つからないというのです。ヨハンさんの鼻も通用しないような仕込みがあるのでしょうか?
「勇者様、目当てのものは見つかりましたか?」
プロテアさんがヨハンさんに声をかけます。彼女にもウサギのことは伝えていないのですが、きっと事情は把握しているのでしょうね。
「いやー、それが全然見つからないっす」
ヨハンさんも普通に答えていますが、一応プロテアさんにも秘密なんですからね? するとプロテアさんは微笑みを浮かべながらヨハンさんに次の言葉を投げかけました。
「欺くことに長けた者の言葉を信用してはいけません。全ての言葉を疑ってかかるべきです」
ん? これは、カリオストロの言葉が嘘だと言いたいのでしょうか? つまり、ウサギに仕込んだものなんて存在しないってことですか?
でもイーリエルも知っているような口ぶりでしたし、そもそも仲間同士で嘘をついて何になるのでしょう?
ヨハンさんとシトリンさんも彼女の真意を掴みかねて首を傾げています。この二人に謎かけは相性が悪すぎますが。
何はともあれ、フローラリアで何か成果があったら向こうから連絡がくるでしょうし、再びダンジョン攻略組の様子を見ていきましょう。
「こっちだよ」
ユウホウさんがパーティーの案内をしています。精霊術でダンジョンの構造がある程度わかるようですね。とても便利ですが、ダンジョンの属性にあった精霊とある程度以上仲良くないとできない芸当だそうで、ダンジョンに多い地下の構造物を調べるためには土の精霊と仲良くないといけません。ユウホウさんは風と水の精霊と仲が良いそうで、この『迷いの並木道』だからできたということですね。
ちなみに精霊術と言えばエルフですが、エルフも土の精霊とはあまり仲が良くなかったりします。洞窟に住むドワーフの得意分野なのですが、職人としての姿しか見たことはありませんね。意外と魔法も使えるらしいのですけど。
「素晴らしい術ですな! 風の精霊殿に感謝せねば」
ハゲが嬉しそうにしています。たぶん褒めると喜ぶというユウホウさんの話を信じているんだと思います。私も信じましたし。
「モンスターがいるぞぉ!」
そしてゲンザブロウさんがモンスターの気配を察知します。彼の言葉に従いパーティーが戦闘態勢を取ると、地面の下から骸骨戦士が出てきました。ここのボスはアンデッドモンスターでしょうか? ダンジョンの雰囲気にまるで合っていませんね。
「不死者の対処なら私にお任せください!」
ここで聖職者のアルスリアさんがハゲの構える盾から前に出ます。というかさりげなくハゲが最前線で盾を構えましたね。将軍が前に出るのはどうかと思いますが、騎士として皆を守ろうとしているようです。
『カタカタカタ』
骸骨戦士が歯を鳴らします。笑っているのでしょうか? 感情豊かな骨ですね。すぐに剣を振り上げてアルスリアさんに襲い掛かります。
「正義の神ヴォルカーよ、我に力を与えたまえ!」
そして朗々と神への祈りを口にする修道女(男)の掲げた拳から光が放たれます。おおー、この光で不死者を焼き尽くす感じでしょうか。なかなかカッコいい術です。
「ふんッ!!」
と思った次の瞬間、光る拳を振りかぶると地面を蹴って骸骨戦士に駆け寄るアルスリアさん。見た目によらず速いっ!?
ボゴォン!!
なにやら凄い音を立てて殴られた骸骨戦士が粉々に砕け散りました。光で浄化された感じではないです。どう見ても物理的に粉々になっています。
「それ、浄化の光じゃないんだ?」
道具袋をゴソゴソしていたステラさんがアルスリアさんに質問しました。ステラさんはステラさんで何をしていたのでしょう? でも誰もが気になることを聞いてくれたので気にしないことにしましょう。
「これは正義の心で肉体に神の力を宿らせる術ですわ」
「要するに肉体強化術だぬー」
なるほど……アルスリアさんは武闘家なんですね。聖職者にはそういうタイプも少なくないそうですね。ソフィアさんばかり見ていたせいで余計な先入観がありましたが、正義の神ヴォルカーを信奉する方々は武闘派が多いのでなにも不思議では……いや、やっぱり素手で殴るのはおかしい。
「素晴らしい威力ですな! 聖職者殿は仲間の強化もできるのですかな?」
「ええ、できますわ。強敵との戦いでは皆様に神のご加護をお願いいたしましょう」
ハゲは称賛してばっかりですね。いちいち仲間を褒めるもんだから、皆さんどんどん気分が良くなっています。これはそういう指揮法なのでしょうか?
正直、この人は物凄く有能な人物なのではと思い始めています。
◇◆◇
「ふう、ダンジョンの攻略は問題なさそうですね。ハイネシアン帝国はいつフローラリアに攻め入るのでしょう?」
「戦争なんてそんなにすぐ動かないんじゃないの~?」
「そうかも知れませんが……」
ダンジョンの方が順調なので、どうしてもハイネシアン帝国の動向が気になってしまいます。ヨハンさん達も上手くいっていないようですし、恋茄子のようには楽観していられません。
「大変よ!」
と、そこにまたベルウッドさんが駆け込んできました。今度は一体なんでしょう?
「ハイネシアン帝国が南進して黒エルフの国を攻め滅ぼしたって!」
ええええっ!?
そんな中で、ヨハンさんとシトリンさんは防衛準備に走り回るウサギ達を片っ端から調べていました。ですが、怪しいウサギは見つからないというのです。ヨハンさんの鼻も通用しないような仕込みがあるのでしょうか?
「勇者様、目当てのものは見つかりましたか?」
プロテアさんがヨハンさんに声をかけます。彼女にもウサギのことは伝えていないのですが、きっと事情は把握しているのでしょうね。
「いやー、それが全然見つからないっす」
ヨハンさんも普通に答えていますが、一応プロテアさんにも秘密なんですからね? するとプロテアさんは微笑みを浮かべながらヨハンさんに次の言葉を投げかけました。
「欺くことに長けた者の言葉を信用してはいけません。全ての言葉を疑ってかかるべきです」
ん? これは、カリオストロの言葉が嘘だと言いたいのでしょうか? つまり、ウサギに仕込んだものなんて存在しないってことですか?
でもイーリエルも知っているような口ぶりでしたし、そもそも仲間同士で嘘をついて何になるのでしょう?
ヨハンさんとシトリンさんも彼女の真意を掴みかねて首を傾げています。この二人に謎かけは相性が悪すぎますが。
何はともあれ、フローラリアで何か成果があったら向こうから連絡がくるでしょうし、再びダンジョン攻略組の様子を見ていきましょう。
「こっちだよ」
ユウホウさんがパーティーの案内をしています。精霊術でダンジョンの構造がある程度わかるようですね。とても便利ですが、ダンジョンの属性にあった精霊とある程度以上仲良くないとできない芸当だそうで、ダンジョンに多い地下の構造物を調べるためには土の精霊と仲良くないといけません。ユウホウさんは風と水の精霊と仲が良いそうで、この『迷いの並木道』だからできたということですね。
ちなみに精霊術と言えばエルフですが、エルフも土の精霊とはあまり仲が良くなかったりします。洞窟に住むドワーフの得意分野なのですが、職人としての姿しか見たことはありませんね。意外と魔法も使えるらしいのですけど。
「素晴らしい術ですな! 風の精霊殿に感謝せねば」
ハゲが嬉しそうにしています。たぶん褒めると喜ぶというユウホウさんの話を信じているんだと思います。私も信じましたし。
「モンスターがいるぞぉ!」
そしてゲンザブロウさんがモンスターの気配を察知します。彼の言葉に従いパーティーが戦闘態勢を取ると、地面の下から骸骨戦士が出てきました。ここのボスはアンデッドモンスターでしょうか? ダンジョンの雰囲気にまるで合っていませんね。
「不死者の対処なら私にお任せください!」
ここで聖職者のアルスリアさんがハゲの構える盾から前に出ます。というかさりげなくハゲが最前線で盾を構えましたね。将軍が前に出るのはどうかと思いますが、騎士として皆を守ろうとしているようです。
『カタカタカタ』
骸骨戦士が歯を鳴らします。笑っているのでしょうか? 感情豊かな骨ですね。すぐに剣を振り上げてアルスリアさんに襲い掛かります。
「正義の神ヴォルカーよ、我に力を与えたまえ!」
そして朗々と神への祈りを口にする修道女(男)の掲げた拳から光が放たれます。おおー、この光で不死者を焼き尽くす感じでしょうか。なかなかカッコいい術です。
「ふんッ!!」
と思った次の瞬間、光る拳を振りかぶると地面を蹴って骸骨戦士に駆け寄るアルスリアさん。見た目によらず速いっ!?
ボゴォン!!
なにやら凄い音を立てて殴られた骸骨戦士が粉々に砕け散りました。光で浄化された感じではないです。どう見ても物理的に粉々になっています。
「それ、浄化の光じゃないんだ?」
道具袋をゴソゴソしていたステラさんがアルスリアさんに質問しました。ステラさんはステラさんで何をしていたのでしょう? でも誰もが気になることを聞いてくれたので気にしないことにしましょう。
「これは正義の心で肉体に神の力を宿らせる術ですわ」
「要するに肉体強化術だぬー」
なるほど……アルスリアさんは武闘家なんですね。聖職者にはそういうタイプも少なくないそうですね。ソフィアさんばかり見ていたせいで余計な先入観がありましたが、正義の神ヴォルカーを信奉する方々は武闘派が多いのでなにも不思議では……いや、やっぱり素手で殴るのはおかしい。
「素晴らしい威力ですな! 聖職者殿は仲間の強化もできるのですかな?」
「ええ、できますわ。強敵との戦いでは皆様に神のご加護をお願いいたしましょう」
ハゲは称賛してばっかりですね。いちいち仲間を褒めるもんだから、皆さんどんどん気分が良くなっています。これはそういう指揮法なのでしょうか?
正直、この人は物凄く有能な人物なのではと思い始めています。
◇◆◇
「ふう、ダンジョンの攻略は問題なさそうですね。ハイネシアン帝国はいつフローラリアに攻め入るのでしょう?」
「戦争なんてそんなにすぐ動かないんじゃないの~?」
「そうかも知れませんが……」
ダンジョンの方が順調なので、どうしてもハイネシアン帝国の動向が気になってしまいます。ヨハンさん達も上手くいっていないようですし、恋茄子のようには楽観していられません。
「大変よ!」
と、そこにまたベルウッドさんが駆け込んできました。今度は一体なんでしょう?
「ハイネシアン帝国が南進して黒エルフの国を攻め滅ぼしたって!」
ええええっ!?
応援ありがとうございます!
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