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アリスと鬼ごっこ
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「いいよ! 何して遊ぼうか!」
オリンピックが元気よく答える。彼女はこれが目的でやってきたのだから、当然だろう。アリスがオリンピックに危害を加えないよう私は監視しておこう。
「じゃあ、鬼ごっこしよう。私が鬼ね!」
アリスも笑顔で提案をした。見ている限りでは無邪気な子供といった様子だが、危険度の高いマレビトだと聞く。捕まえたら命を取るぐらいのことはしてくるだろう。
「私はここで見ているから、二人で遊ぶといい」
これでアリスの機嫌を損ねないかと少し心配したが、彼女は気にした様子もなく「わかった! じゃあ二人でやろう」と答えた。
「なら河伯君はこれ持ってて」
オリンピックが手にしていたハンドジャマーを渡してきた。こうやってすぐに気を許すから人間はマレビトに簡単に狩られるのだ。
私は二人が範囲などを決めているのを横目に、受け取った機械を知的好奇心から調べてみた。
これは電子のスピン角運動量を利用した、いわゆるスピントロニクスによって精密性と出力を高めた機械だ。外観は拳銃の銃口がメガホンのような形をしていて、マレビトと戦える強力な武器にしてはなんとも重厚さが足りない。簡単に言えば玩具のように見える。
だが、この武器を向けられると神通力が使えなくなる。原理としては特定の波長を持つ光を照射して神気のエネルギー波長と同期させ、相殺するということだが、この効果は偶然発見されたものなので理屈はまだ解明されていない。私に言わせればこの波長の光は幽世で〝邪気〟と呼ばれるエネルギーなのだが、人間の視点ではこれが救世主のような聖なるエネルギーに感じられるのだろう。
「じゃあそこからスタートね。よーい、どん!」
私が機械に夢中になっている間に鬼ごっこが始まった。突然オリンピックが殺されるようなことはないだろうが、目を離すわけにはいかない。
「あははは!」
「まてー!」
笑顔で走り回る少女達を眺めた。オリンピックは当然ながら何の企みもなくアリスから逃げ回っている。それに対してアリスの笑顔からは裏が感じられる。やはり何か危害を加えようとしているみたいだな。私は木の一本にもたれかかり、そこから自分の神気を森の地面に浸透させていった。
それにしてもオリンピックはかなり運動能力が高いようだ。アリスが本気を出していないということもあるだろうが、かれこれ10分ぐらい逃げ回っている。絵面だけ見れば子供相手に大人げない女である。
「むー、逃げ足が速いなぁ。だったらこうだよ!」
アリスがついにしびれをきらしてその場に立ち止まり右手を握る。何か神通力を使おうとしているのだろう。ついに出番かと身構える私だが、同時に不可解なものが見えた。
オリンピックが口角を上げ、携帯端末を取り出したのだ。
「まさか、撮影するつもりか!?」
そう、オリンピックは何も考えていなかったのではない。マレビトが力を使う瞬間を撮影するために、わざと無防備な姿を見せた上で大人げなく逃げ回っていたのだ。確かにいくら強力なマレビトであっても、遊びで捕まえるためだけに致命的な攻撃をしてくる可能性は低い。なかなか考えているようだ。
だが、やはり考えが浅い。
私は土中に神気を満たしたまま、地面を蹴って走り出した。このパターンはマレビトが人間を殺害する定番の流れだからだ。一気に二人の近くまで移動するが、『秘匿』の能力で気付かれることはない。
「わひゃっ!?」
その目の前で、オリンピックが転んだ。走りながら端末を出したせいで足がもつれたのだ。まったく、何をしているんだか。
「危ないぞ」
倒れそうになった彼女を回り込んで体で受け止める。アリスからは攻撃の気配がない。カメラを向けられたことは気にしていないのか……とそちらを見ると先ほどのポーズのまま呆けたような顔をしている。
「あ、ありがとう……って河伯君!? いつの間に近づいてたの?」
「気にするな」
オリンピックへの返事はそこそこにアリスの様子をうかがうと、彼女は両手を自分の口許に当てる。相変わらず敵意は感じない。これなら……
「もしかして二人って恋人同士なの? きゃーーっ! 女の子同士でえっちなんだ!」
その口から、理解に苦しむ発言が飛び出した。
オリンピックが元気よく答える。彼女はこれが目的でやってきたのだから、当然だろう。アリスがオリンピックに危害を加えないよう私は監視しておこう。
「じゃあ、鬼ごっこしよう。私が鬼ね!」
アリスも笑顔で提案をした。見ている限りでは無邪気な子供といった様子だが、危険度の高いマレビトだと聞く。捕まえたら命を取るぐらいのことはしてくるだろう。
「私はここで見ているから、二人で遊ぶといい」
これでアリスの機嫌を損ねないかと少し心配したが、彼女は気にした様子もなく「わかった! じゃあ二人でやろう」と答えた。
「なら河伯君はこれ持ってて」
オリンピックが手にしていたハンドジャマーを渡してきた。こうやってすぐに気を許すから人間はマレビトに簡単に狩られるのだ。
私は二人が範囲などを決めているのを横目に、受け取った機械を知的好奇心から調べてみた。
これは電子のスピン角運動量を利用した、いわゆるスピントロニクスによって精密性と出力を高めた機械だ。外観は拳銃の銃口がメガホンのような形をしていて、マレビトと戦える強力な武器にしてはなんとも重厚さが足りない。簡単に言えば玩具のように見える。
だが、この武器を向けられると神通力が使えなくなる。原理としては特定の波長を持つ光を照射して神気のエネルギー波長と同期させ、相殺するということだが、この効果は偶然発見されたものなので理屈はまだ解明されていない。私に言わせればこの波長の光は幽世で〝邪気〟と呼ばれるエネルギーなのだが、人間の視点ではこれが救世主のような聖なるエネルギーに感じられるのだろう。
「じゃあそこからスタートね。よーい、どん!」
私が機械に夢中になっている間に鬼ごっこが始まった。突然オリンピックが殺されるようなことはないだろうが、目を離すわけにはいかない。
「あははは!」
「まてー!」
笑顔で走り回る少女達を眺めた。オリンピックは当然ながら何の企みもなくアリスから逃げ回っている。それに対してアリスの笑顔からは裏が感じられる。やはり何か危害を加えようとしているみたいだな。私は木の一本にもたれかかり、そこから自分の神気を森の地面に浸透させていった。
それにしてもオリンピックはかなり運動能力が高いようだ。アリスが本気を出していないということもあるだろうが、かれこれ10分ぐらい逃げ回っている。絵面だけ見れば子供相手に大人げない女である。
「むー、逃げ足が速いなぁ。だったらこうだよ!」
アリスがついにしびれをきらしてその場に立ち止まり右手を握る。何か神通力を使おうとしているのだろう。ついに出番かと身構える私だが、同時に不可解なものが見えた。
オリンピックが口角を上げ、携帯端末を取り出したのだ。
「まさか、撮影するつもりか!?」
そう、オリンピックは何も考えていなかったのではない。マレビトが力を使う瞬間を撮影するために、わざと無防備な姿を見せた上で大人げなく逃げ回っていたのだ。確かにいくら強力なマレビトであっても、遊びで捕まえるためだけに致命的な攻撃をしてくる可能性は低い。なかなか考えているようだ。
だが、やはり考えが浅い。
私は土中に神気を満たしたまま、地面を蹴って走り出した。このパターンはマレビトが人間を殺害する定番の流れだからだ。一気に二人の近くまで移動するが、『秘匿』の能力で気付かれることはない。
「わひゃっ!?」
その目の前で、オリンピックが転んだ。走りながら端末を出したせいで足がもつれたのだ。まったく、何をしているんだか。
「危ないぞ」
倒れそうになった彼女を回り込んで体で受け止める。アリスからは攻撃の気配がない。カメラを向けられたことは気にしていないのか……とそちらを見ると先ほどのポーズのまま呆けたような顔をしている。
「あ、ありがとう……って河伯君!? いつの間に近づいてたの?」
「気にするな」
オリンピックへの返事はそこそこにアリスの様子をうかがうと、彼女は両手を自分の口許に当てる。相変わらず敵意は感じない。これなら……
「もしかして二人って恋人同士なの? きゃーーっ! 女の子同士でえっちなんだ!」
その口から、理解に苦しむ発言が飛び出した。
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