14 / 48
閑話:だいたい信者のせい(アリス視点)
しおりを挟む
気がついた時、私は光り輝く不思議な部屋で眠っていた。
自分が何者なのかは分かっている。ここがどこかも知っている。
ただ、どうしても分からないことがあった。
「私は、何をすればいいの?」
小説の登場人物が有名になり過ぎて神になったって、その立場で一体何を成せばいいのかがさっぱり分からない。
民に豊穣をもたらす善神ではない。
国に勝利をもたらす戦神でもない。
かといって、人に禍をもたらす邪神というわけでもなかった。
ただ人々から『可愛いこと』を求められる存在。だけど美の女神と呼ぶには外見が幼すぎる。
自分が何を成すべきかを知りたい一心で、自分を『信仰』する人々がどんなものを求めているのか調べ始めた。
身に宿る神の力は、望めば何でも叶えてくれる。私は彼等がよく読んでいる本を召喚した。
「何これ? 女の子が沢山……男の子はどこ? なんで女の子同士で仲良くしてるの?」
これが私に求められている役割なのだろうか?
不思議に思いながら本を読破する。よく分からないので二冊、三冊と新たな本を召喚して読んでいくと、彼等は様々なタイプの物語を好んでいることが分かった。
共通するのは、可愛い女の子(女の子のように見える男の子もいる)が登場することだ。この『可愛い女の子』の役になって、様々な体験をすることが自分のなすべきことなのかもしれない。
他にやることもないので来る日も来る日も新しい本を読んでいくうちに、私自身も染まっていく。
「女の子同士の恋愛って素敵ね! あっ、でも可愛い男の子がお姉さんを手玉に取るのも捨てがたいわ」
私は、本だけでは満足できなくなってきて、いつか人間の住む現世に行くことを夢見るようになっていた。
「ねーねー、河伯お姉ちゃんのどこが好き?」
あれからどれくらいの月日が過ぎたのだろう。幽世の扉が開き、現世にやってきた私は手ごろな女子を探して回り、ついに理想的な女の子同士のカップルに巡り会えたのだ! フヒヒ。
「ええー、そうねえ、凄く優しいところ? あと、ちょっと普通の人と違ってて面白いんだよ!」
ええのう、ええのう! この恥じらいながらも想い人(同性)の良いところを語り始めたら止まらなくなる女子の表情ときたら、これだけでご飯三杯はいけるわい。おっと、危うくよだれが垂れるところだったでござる。
「もう~、アリスちゃんったらおませさんね」
ムッハー! この困り顔、たまらんでござる!
これはもっといじりたくなる逸材ですのう……グフフ。
「あっ、ズボン履いてる!」
なななんと! 女の子にしか見えなかった河伯がズボンを履いて君付けで呼ばれているではないか! 昨日のスカート姿は……まさか伝説の『男の娘』というやつでありますか!?(※そんな伝説はありません)
いやしかし、このなんともミスマッチ気味なズボン姿も拙者のカワイ子ちゃんレーダーを刺激しますぞ!
「童顔の男の子……いい!」
ああ、河伯きゅん(はぁと)
「ねえねえ、二人の後をつけない?」
なんと五輪ちゃんの想い人である河伯きゅんは生徒会副会長なるオカタイ女子のことが好きらしい。これは恋のトライアングル! 修羅場キター!
見逃すわけにはいかないでござる! 拙者恋のトラブル大好き侍で候。
「ええっ!? 駄目だよ、他の人に知られたくない話があるみたいだし、嫌われちゃうよ」
「へーきへーき、河伯お兄ちゃんは優しいから」
別に平気じゃなくても問題ないにゃ! 争えー!
「ああもう、待ってよー」
こうして二人の後をつけたはいいけど、どうやら河伯きゅんにはバレバレだった模様。
「あっ、曲がった!」
「路地に入ったね。あそこに何かあるのかな?」
いやー、たぶん逃げられちゃったね。幽世の扉はマレビトには開けないからなぁ。ゆっくりと近づいて角から覗き込む五輪ちゃん。
「あれっ? 誰もいない」
「逃げられちゃったね」
うーむ、残念でござる。こうなったら――
(本編に続く)
自分が何者なのかは分かっている。ここがどこかも知っている。
ただ、どうしても分からないことがあった。
「私は、何をすればいいの?」
小説の登場人物が有名になり過ぎて神になったって、その立場で一体何を成せばいいのかがさっぱり分からない。
民に豊穣をもたらす善神ではない。
国に勝利をもたらす戦神でもない。
かといって、人に禍をもたらす邪神というわけでもなかった。
ただ人々から『可愛いこと』を求められる存在。だけど美の女神と呼ぶには外見が幼すぎる。
自分が何を成すべきかを知りたい一心で、自分を『信仰』する人々がどんなものを求めているのか調べ始めた。
身に宿る神の力は、望めば何でも叶えてくれる。私は彼等がよく読んでいる本を召喚した。
「何これ? 女の子が沢山……男の子はどこ? なんで女の子同士で仲良くしてるの?」
これが私に求められている役割なのだろうか?
不思議に思いながら本を読破する。よく分からないので二冊、三冊と新たな本を召喚して読んでいくと、彼等は様々なタイプの物語を好んでいることが分かった。
共通するのは、可愛い女の子(女の子のように見える男の子もいる)が登場することだ。この『可愛い女の子』の役になって、様々な体験をすることが自分のなすべきことなのかもしれない。
他にやることもないので来る日も来る日も新しい本を読んでいくうちに、私自身も染まっていく。
「女の子同士の恋愛って素敵ね! あっ、でも可愛い男の子がお姉さんを手玉に取るのも捨てがたいわ」
私は、本だけでは満足できなくなってきて、いつか人間の住む現世に行くことを夢見るようになっていた。
「ねーねー、河伯お姉ちゃんのどこが好き?」
あれからどれくらいの月日が過ぎたのだろう。幽世の扉が開き、現世にやってきた私は手ごろな女子を探して回り、ついに理想的な女の子同士のカップルに巡り会えたのだ! フヒヒ。
「ええー、そうねえ、凄く優しいところ? あと、ちょっと普通の人と違ってて面白いんだよ!」
ええのう、ええのう! この恥じらいながらも想い人(同性)の良いところを語り始めたら止まらなくなる女子の表情ときたら、これだけでご飯三杯はいけるわい。おっと、危うくよだれが垂れるところだったでござる。
「もう~、アリスちゃんったらおませさんね」
ムッハー! この困り顔、たまらんでござる!
これはもっといじりたくなる逸材ですのう……グフフ。
「あっ、ズボン履いてる!」
なななんと! 女の子にしか見えなかった河伯がズボンを履いて君付けで呼ばれているではないか! 昨日のスカート姿は……まさか伝説の『男の娘』というやつでありますか!?(※そんな伝説はありません)
いやしかし、このなんともミスマッチ気味なズボン姿も拙者のカワイ子ちゃんレーダーを刺激しますぞ!
「童顔の男の子……いい!」
ああ、河伯きゅん(はぁと)
「ねえねえ、二人の後をつけない?」
なんと五輪ちゃんの想い人である河伯きゅんは生徒会副会長なるオカタイ女子のことが好きらしい。これは恋のトライアングル! 修羅場キター!
見逃すわけにはいかないでござる! 拙者恋のトラブル大好き侍で候。
「ええっ!? 駄目だよ、他の人に知られたくない話があるみたいだし、嫌われちゃうよ」
「へーきへーき、河伯お兄ちゃんは優しいから」
別に平気じゃなくても問題ないにゃ! 争えー!
「ああもう、待ってよー」
こうして二人の後をつけたはいいけど、どうやら河伯きゅんにはバレバレだった模様。
「あっ、曲がった!」
「路地に入ったね。あそこに何かあるのかな?」
いやー、たぶん逃げられちゃったね。幽世の扉はマレビトには開けないからなぁ。ゆっくりと近づいて角から覗き込む五輪ちゃん。
「あれっ? 誰もいない」
「逃げられちゃったね」
うーむ、残念でござる。こうなったら――
(本編に続く)
1
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる