15 / 48
明蓮の悩み2
しおりを挟む
「この前、マレビトの依頼が多いって言ったでしょ」
黄河に目を向けたまま、明蓮が言葉を紡ぐ。
「ああ、それで勉強の時間が取れないと言っていたな」
「最近になって、急に凄いマレビトが依頼をしてくるようになったのよ、それも三柱一気に」
凄いマレビトか……人間が言う『凄い』はどんなものを指すのだろうか。有名な神なのだろうか?
「アマテラスって知ってる?」
知らないはずがない。なるほど、確かにあらゆる意味で凄い客が来たものだ。太陽そのものを司る神が星間旅行とは、天岩戸どころの騒ぎじゃないな。
「当然知っている。天照大神が来て、三柱ということは他には素戔嗚尊と月読尊か」
この三柱は三貴子(みはしらのうずのみこ)とも呼ばれる、日本神話の最高位神だ。姉弟で旅行するとは仲が良いな。
「ううん、違う。あとの二柱は酒呑童子と金毛白面九尾の妖狐よ」
なんというか、軒並み凄い顔ぶれだな。どちらも日本三大妖怪と称される大妖怪の一柱だ。のこりは大天狗だが、あれは怨みが強すぎて幽世から出られない。
「確かに凄いマレビト達だな」
「黄河の神も大概だと思うけど。まあそれはそれとして、アイツらには気遣いってもんが無くてね。ところかまわず呼びつけてきて、こちらの都合は一切気にしないんだ。アマテラスはともかく、妖怪は怖くてさ」
「私が話をつけよう」
明蓮が困っているなら、それを私が伝えてやろう。彼女に危害を加えようとするなら、私が守る。それぐらいの力は持ち合わせているつもりだ。
「ありがとう。でも、アイツらも貴重な収入源だから無下には出来ないんだよね」
ふむ、それもそうか。ならばまずはあちらの事情を知る必要があるな。
「そいつらはいつもどこに旅行しているのだ? なぜ明蓮に依頼するのか語ってはいないか?」
「天照はシリウスに。あまり遠くに行く気はないみたい。酒吞はスピカ。九尾はアルビレオ。あちらの事情は興味もないし聞いてない」
恒星に降り立つことはなくその惑星に行くのだが、惑星名では人間に分かりにくいので彼等が名付けた恒星の名で場所を示すのが通例だ。惑星の名も発音しにくいものが多い。シーザイアのように発見されていない星は現地の呼び名を使っているが。
「そうか。まずはその三柱それぞれの理由を探ってみよう。最近になって急に依頼をしてきたということは、何かそうなるきっかけがあるはずだ」
「うん、ちょっと聞いてみる」
「私もついて行こう。相手が拒否しなければ」
「そっか、マレビト同士は別に険悪なわけじゃないものね。アリスもアンタに懐いてたし」
懐いていたかは知らないが、少なくとも敵対はしていないな。太陽神や妖怪達が私をどう思うかは分からないが、最初から敵意を向ける必要はなかろう。
話が終わると、現世に戻ることにするのだった。
◇◆◇
「あら? さっきまで明蓮がいなかった?」
路地に誰もいないのを確認した五輪とアリスが顔を見合わせていると、急に女の声が話しかけてくる。
「誰?」
五輪が振り返るが、そこに彼女が想像していた大人の女性は立っていない。その代わりに、人間の街には少々不自然な獣が四本の足で立っている。五輪は大きい犬だと思った。
「ワンちゃんが話しかけてきたの?」
「誰がワンちゃんよ! 私は天照大神、畏れ多くもこの日本の最高神よ、敬いなさい!」
「オオカミさんだ! うわーモフモフ!」
「わっ、ちょ、やめなさい! ああっ、尻尾の付け根はダメええ!」
喋る狼に駆け寄り、その身体を撫でまわすアリス。
「ええんかー? ここがええのんか~?」
何やら変な口調になってにやけ顔で撫でている。どうやら動物もイケるらしい。
「あのー、その最高神さまがどうしてこんなところに? 副会長のことを知ってるんですか?」
アリスに撫でまわされて身をくねらせる天照に、五輪が質問を投げかけた。
「それは……ちょっと遊びに行きたくて……あうぅん!」
「遊び?」
なんだかよく分からないが、怖い相手ではなさそうだと思う五輪だった。
黄河に目を向けたまま、明蓮が言葉を紡ぐ。
「ああ、それで勉強の時間が取れないと言っていたな」
「最近になって、急に凄いマレビトが依頼をしてくるようになったのよ、それも三柱一気に」
凄いマレビトか……人間が言う『凄い』はどんなものを指すのだろうか。有名な神なのだろうか?
「アマテラスって知ってる?」
知らないはずがない。なるほど、確かにあらゆる意味で凄い客が来たものだ。太陽そのものを司る神が星間旅行とは、天岩戸どころの騒ぎじゃないな。
「当然知っている。天照大神が来て、三柱ということは他には素戔嗚尊と月読尊か」
この三柱は三貴子(みはしらのうずのみこ)とも呼ばれる、日本神話の最高位神だ。姉弟で旅行するとは仲が良いな。
「ううん、違う。あとの二柱は酒呑童子と金毛白面九尾の妖狐よ」
なんというか、軒並み凄い顔ぶれだな。どちらも日本三大妖怪と称される大妖怪の一柱だ。のこりは大天狗だが、あれは怨みが強すぎて幽世から出られない。
「確かに凄いマレビト達だな」
「黄河の神も大概だと思うけど。まあそれはそれとして、アイツらには気遣いってもんが無くてね。ところかまわず呼びつけてきて、こちらの都合は一切気にしないんだ。アマテラスはともかく、妖怪は怖くてさ」
「私が話をつけよう」
明蓮が困っているなら、それを私が伝えてやろう。彼女に危害を加えようとするなら、私が守る。それぐらいの力は持ち合わせているつもりだ。
「ありがとう。でも、アイツらも貴重な収入源だから無下には出来ないんだよね」
ふむ、それもそうか。ならばまずはあちらの事情を知る必要があるな。
「そいつらはいつもどこに旅行しているのだ? なぜ明蓮に依頼するのか語ってはいないか?」
「天照はシリウスに。あまり遠くに行く気はないみたい。酒吞はスピカ。九尾はアルビレオ。あちらの事情は興味もないし聞いてない」
恒星に降り立つことはなくその惑星に行くのだが、惑星名では人間に分かりにくいので彼等が名付けた恒星の名で場所を示すのが通例だ。惑星の名も発音しにくいものが多い。シーザイアのように発見されていない星は現地の呼び名を使っているが。
「そうか。まずはその三柱それぞれの理由を探ってみよう。最近になって急に依頼をしてきたということは、何かそうなるきっかけがあるはずだ」
「うん、ちょっと聞いてみる」
「私もついて行こう。相手が拒否しなければ」
「そっか、マレビト同士は別に険悪なわけじゃないものね。アリスもアンタに懐いてたし」
懐いていたかは知らないが、少なくとも敵対はしていないな。太陽神や妖怪達が私をどう思うかは分からないが、最初から敵意を向ける必要はなかろう。
話が終わると、現世に戻ることにするのだった。
◇◆◇
「あら? さっきまで明蓮がいなかった?」
路地に誰もいないのを確認した五輪とアリスが顔を見合わせていると、急に女の声が話しかけてくる。
「誰?」
五輪が振り返るが、そこに彼女が想像していた大人の女性は立っていない。その代わりに、人間の街には少々不自然な獣が四本の足で立っている。五輪は大きい犬だと思った。
「ワンちゃんが話しかけてきたの?」
「誰がワンちゃんよ! 私は天照大神、畏れ多くもこの日本の最高神よ、敬いなさい!」
「オオカミさんだ! うわーモフモフ!」
「わっ、ちょ、やめなさい! ああっ、尻尾の付け根はダメええ!」
喋る狼に駆け寄り、その身体を撫でまわすアリス。
「ええんかー? ここがええのんか~?」
何やら変な口調になってにやけ顔で撫でている。どうやら動物もイケるらしい。
「あのー、その最高神さまがどうしてこんなところに? 副会長のことを知ってるんですか?」
アリスに撫でまわされて身をくねらせる天照に、五輪が質問を投げかけた。
「それは……ちょっと遊びに行きたくて……あうぅん!」
「遊び?」
なんだかよく分からないが、怖い相手ではなさそうだと思う五輪だった。
1
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
死霊術士が暴れたり建国したりするお話
はくさい
ファンタジー
多くの日本人が色々な能力を与えられて異世界に送りこまれ、死霊術士の能力を与えられた主人公が、魔物と戦ったり、冒険者と戦ったり、貴族と戦ったり、聖女と戦ったり、ドラゴンと戦ったり、勇者と戦ったり、魔王と戦ったり、建国したりしながらファンタジー異世界を生き抜いていくお話です。
ライバルは錬金術師です。
ヒロイン登場は遅めです。
少しでも面白いと思ってくださった方は、いいねいただけると嬉しいです。
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
霊力ゼロの陰陽師見習い
三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。
……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」
その言葉は、もう何度聞いたか分からない。
霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。
周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。
同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。
――俺だけが、何もできない。
反論したい気持ちはある。
でも、できない事実は変わらない。
そんな俺が、
世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて――
この時は、まだ知る由もなかった。
これは――
妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
女神の白刃
玉椿 沢
ファンタジー
どこかの世界の、いつかの時代。
その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。
女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。
剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。
大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。
魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。
*表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる