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テストプレイヤーに当選しました。

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「おめでとうございます。あなたはテストプレイヤーに当選しました」
それは、とても素晴らしい響きだ。なんのテストプレイヤーか知らないけれど。ゲームでテストプレイヤーに当たった事が無い俺は、普通であったら喜ぶだろう。
しかし、口頭でいきなり言われても意味が分からない。そもそも、ここはどこだ?
そもそも俺は、上山宗介かみやまそうすけは死んだ筈だ。
俺は先日まで高校2年生だった。勉強、運動、共に得意な訳でも苦手な訳でも無い。目立っていた訳でも無いが友達も普通にいた。
ゲームやアニメが好きな普通の高校生だ。
そんな俺には親友がいた。幼馴染で、付き合いは幼稚園から、俺とスペックが殆ど同じで気もあったため、常に仲が良かった。
そいつは、正見海斗まさみかいと幼馴染だが、残念ながら男だ。
クラスメートでもあったため、俺達は担任は美人だけど貧乳だのあの子は可愛いだのと下らない話を毎日していた。女の話を毎日していた訳じゃないぞ?決して。
俺が死んだ日は、そいつの誕生日であった。俺達は互いの誕生日を祝いあっている。どちらかに彼女が出来たらやめよう、彼女と祝うべきだからなと中学に上がる頃に決めたが、やめる事はついぞ無かった。
俺は誕生日当日に、クラッカーを用意していない事に気が付いた。大したことでも無かったが、俺は全力で買いに行き、信号の無い交差点を飛び出し、車に轢かれてしまった。
そのようにして、俺は死んでいる筈だ。
だが、1番の問題は俺がよく分からないあの世のようなところにいる事でも、身に覚えのないテストプレイヤーに当選した事を告げられたことでもない。
テストプレイヤーに当選した事を告げたのが俺が誕生日を祝おうとしていた親友、正見海斗だと言う事だ。
「お前...誕生日に死ぬなんて可哀想に...しかも、死ぬ時に強く頭を打ったんだな?」
あの世で生きていた頃の脳への影響があるかは知らないが。
「神に向かって失礼なやつだな。俺は死んでない!」
今自分の事神って言ったかこいつ。
「大丈夫か?お前...抱え込んでる事あるなら俺に相談しろよ」
死んでるからもう無理か。
「いや、本物だって、信じろよ!」
何故こいつは信じると思っているのだろうか?
「じゃあ、証拠を見せろよ」
さて、こいつはどんな反応するかな?
「天使、見てみる?」
「はあ?」
天使?神の証拠では無いような気もするが、まあ天使が居るなら神も居るだろう。
すると、何も無かった空中に穴が空いて中から輪っかを頭に浮かべ、白い翼を生やした、いかにも天使な格好をした、うちのクラスの担任が出てきた。もう一度言う。うちのクラスの担任が出てきた。
「天野先生...何やってるんですか?いくら美人とは言え、天使コスはどうかと思いますよ?」
流石にいつも見ている教師のコスプレはアレだな。
「上山君、これはコスプレではありませんよ。私は本物の天使です」
ついに先生までおかしくなったのか?
と言うか、一日にうちのクラスで3人も死んでるのか。不吉すぎるだろ、海斗の誕生日。
俺は海斗に目を向ける。
「海斗、天使ってのはもっとボンキュッボンなもんだと思ってたんだが。こう、美しさの黄金比的な」
海斗は何も言ってこない。先生に怯えてるのか?
まあ、いくら先生が怒ろうが問題ない。俺はもう死んでるからな。もう何も怖くない。
破魂はこんしゃ
嫌な予感...俺は嫌な予感は良く当たるのだ。声の方を見ると、俺の眉間を光の矢が穿かんとしていた。
俺はその場にへたり込む。声の主は案の定先生で、その手には光輝く弓が握られている。
「怒らせない方がいいぞ。今の当たってたら魂ごと消えて生まれ変わる事も何も出来なくなる」
海斗から遅すぎる警告が聞こえてきた。一応助けてくれたのは海斗らしい。夢かどうかは分からんが夢じゃ無きゃ本物なんだろう。助けてくれたのは良いが、
「おせえ...」
俺が文句を言うと、
「そんな事言われてもそんな突発的に煽るやつ止められる訳が無いだろうが」
正論だな。
「だけど天使なら見た目気にする事無いんじゃね?自由に見た目変えられたりすんだろ?」
「それはどこ情報だよ。ちなみに姿を変えられるのは神になってからだぞ?」
「神になる?」
つまりどゆことだ?
「簡単に言うと魂にはポイントが貯まっていく。俺達神が決めた基準でポイントが増減する。転生を続けてポイントが一定を超えると天使になれるんだ」
「はあ」
「天使になると様々な神の下で働くんだ。閻魔の野郎、地獄の釜の温度厳しすぎんだよ...一度下がったから何だってんだ...釜の中にケツ蹴って落としてやれなかったのが残念だ。」
地獄も異世界の1つって事か?まあ、愚痴を聴いていても意味は無い。
「もしもーし、話の続きをお願いしまーす」
「おお、すまん。そして、天使としてもポイントを貯めて神になると下働きから解放されて自分の世界を持てるようになり、天使が一体自分の下で働く事になる。だけどいきなり世界を作ったって上手く行かない。下手な事をしたら降格だ」
神も大変なのな。
「ちなみに天使になった時の姿は天使になる前に生きていた時の姿なんだよ。つまり、天使の間はそいつは貧乳のままだ」
お前も煽ってんじゃねえか。
「神の封印を申請します」
先生がなんか言い出した。すると、海斗の顔の色が変わる。
「え、ちょ。嫌、こんくらいで封印はないだろ?無いよね?」
「何が起きてんの?」
封印てどういうことだ?
「もし、神が暴走したらどうすると思う?」
急になんだ?
「んー、他の神で抑える?」
「いや、神はそれぞれの世界で忙しいんだ。だから、それより手っ取り早い方法を使う」
そんな方法があるのか?
「審査をする役の神が暴走した神に仕える天使に力を与えて封印するんだ。この封印は普通の神にはどうにも出来ないようになっているんだ」
え、それやろうとしてんの?いや、でもこの程度暴走とは言わないんじゃ?神の基準分からんけど。
「許可が取れました。今からあなたを封印します」
え、俺何してりゃいいの?
「ごめんなさい。すいません。許して下さい。素晴らしい見た目をしてます。最も美しい天使です。こんな天使が来てくれて私はとても幸せです」
神が天使に土下座を始めた。すげえ勢いで謝ってる。
「まあ、嘘ですが」
うん、だよな。ネタばらしが早い気もするが。
「...まあ、こんなので封印になるとは思って無かったがな!...嘘で良かった...」
心の声出てんな。
「で、神だとか天使だとかは分かったが、そもそもテストプレイヤーってなんだ?」
「ん?なんだっけそれ」
「おい、先生これ職務放棄ですよ。封印しちゃって下さい」
「悪かった悪かった。冗談だよ」
「で?テストプレイヤーってのは?」
「さっき神になると世界を作れるって言っただろ?で、上手く世界を創るために、他の世界で暮らしてみることが出来るんだ。そして、俺はお前がいるこの世界で17年間暮らす事にした。少しずつ自分の世界を創りながらだ。そして、17年経った日に死んだ人の魂を俺の世界に試しに転生させてもいい事になった。そして、その魂はランダムなはずだったんだが...」
「俺になった訳か」
「ああ」
「ちなみにどんな世界なんだ?」
「俺はこの世界でアニメ、漫画、ゲーム、ラノベなんかに影響を受けたんだ」
「確かにお前好きだよな。ゲームもそこまで上手い訳じゃないが」
「あのなぁ、俺は一般的なその世界の人間としてお前の真似してただけでもっと出来んだぞ?」
「ほう。なら勝負だ」
俺達がゲームをしようとすると、俺達を止める声がする。
「上山君はともかく、主様はしっかりして下さい」
「おう、すまん。じゃあ説明をするぞ。俺の世界でお前には3年間過ごして貰う。記憶はそのままでな」
「おお、でも3年かー」
「気に入ったら完成した後に別の体で転生していいぞ。そのままの体だと最終調整とかあって難しいからな」
なるほどな。そういうのもあるのか。
「あれ、俺以外の人間はどうなってんの?」
「新しい魂だよ。ポイントはゼロだ」
「魂も新しいのがあるのか」
「悪い魂を処分するからな」
え、怖い。
「ちなみにほとんどの人間が能力を持ってる世界だ。戦いが起きている世界だが人対モンスターだ」
「めっちゃ楽しそうじゃん」
「ちなみに本来能力はランダムだが、お前の能力はこっちで用意させて貰った」
「どんなの?」
「局所強化だ。視力上げたり、足速くしたり出来る」
シンプルに便利そうだな。
「後細かい説明は向こうでする。じゃあ行ってらっしゃい」
「は?」
そして、俺は床が無くなる感覚に陥った。
「あ、やべっ」
何が「あ、やべっ」だ!
不安しかないまま俺はどこかに落っこちて行っているようだ。
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