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第4章 【スピンオフ】やらかし王子はバリネコドS隊長に啼かされる

1、女王様のご命令

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 ここからはこれまでと少し属性が異なります。
 人間同士です。
 地雷のある方は以下ご注意ください。
 タグ【年下攻め 部下×上司 わんこ攻め M攻め×ドS受け 美形王子×男前おっさん受け 無知ックス エセ軍隊もの】
 リバ無しですが攻めも後ろをいじられます。
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「ルディをセンパイの下に配属するから鍛え直してくれ。死ぬ一歩手前までしごいていい」
 この国の頂点に君臨するその女はつまらなそうな顔で書き物をしながら、淡々とそう宣った。

 かつてこの本物の女王様を魔王討伐部隊育成のため鍛えた。あの時は王族なんて知らなかった。すげぇ女が入隊してきたから、こっちも本気で鍛えた。
 その結果、対魔王戦にて最前線にてカイルを補助する人材に育ち、今では女王様で上司だ。

 突如その女王陛下に呼び出されたかと思うと案の定だ。
 鍛え直すも何も華奢で綺麗な面の王弟殿下はこれまで軍に在籍した事など無い。
 なにを無茶苦茶な、と思うが無茶はこの女傑の専売特許でしかも今回ばかりは理由に心当たりがある。
 ルディウス王弟殿下とまだ幼い王妹リリア姫は国を脅かす大罪を犯したのだ。その罰といった所なんだろう。

 二人は魔王を斃した国の英雄カイルの情夫で、「言葉を話すオーク」に危害を加えた。
 そのオークは魔族との共存交渉に奔走しており、カイルをこの国にとどめる重要な鍵だ。

 どこにつっこんだらいいんだ、まったく。

 陛下直々に制定した「服を着たオーク保護法」を犯した二人を、権力者の横暴には特に厳しい女王が許すはずもなく、ルディウス王弟殿下は全身甲冑プレートアーマーでの生活を強いられているとは聞いている。
 プレートアーマーの刑って。
 風呂と就寝時以外はプレートアーマーの装着を強要され、食事時も面を外すだけだとか。
 いやいや、魔王討伐時でもそこまでの装備はしていなかっただろ。

「もうかなり筋力もついただろうからな、頃合いだ」
 筋力をつけるために負荷をかける。それは間違いではないが日がな全身甲冑装着って。

「えーっと、どこまですりゃいいんですかね」
「地獄を見せてやれ」
 ふんと鼻を鳴らす女王。
 いやいや、俺が聞いたのは「どのレベルまで育てればいいのか」だったんだよ。
 この世で怒らせてはいけないものの上位に君臨する「姉ちゃん」を怒らせたらまずいって王子様。

「王位継承権があるわけでなし、煮るなり焼くなり好きにしろ。遠慮はいらん。ああ見えて案外根性はあるそうだ」
 顔を上げうっそりと笑うその様に、重いため息とともに「へーへー、了解しましたよ」と答えるしかなかった。

 ◇◆◇
「装備はずせ」
 初日、ガション……ガション……という異音とともにプレートアーマー姿で現れた王子様に装備を外して体を見せるように告げる。命じたものの本人では外せないので部屋に同席する副官二人にも手伝わせた。

 銀のさらさらの髪の毛に、ほっそりとした長身。すぐ前に立つと俺の身長では見上げる事になる。
 女王に似た顔は恐ろしく整っている。きりっと引き締まった女王とは違い、繊細でたおやかな美しさがあるルディアス王弟殿下は「王子様」と女達にきゃーきゃー言われるタイプの人間だった。

 まずその細い首をつかんだ。それから肩、二の腕を順に握る。その度にびくりと強張るのにかまう事なく胸と腹にべたべたと手を当てる。
「あ、あの……」
「黙ってろ」
 弱々しい声を一蹴し尻をつかむ。小さな薄い尻だ。怯えたように小さく息を飲む王子を無視して股間をつかむ。
「ッ!」
 ひゅっと息を飲みながら懸命に声を堪えている所を見ると、自分のしでかした罪と置かれた状況は理解しているのか。
 愚かな行為に走ったが、どうしようもないほどの完全な馬鹿という訳でもないらしい。まあ救いようのない馬鹿ならあの女王は切り捨てる気もする。
 無遠慮な手付きで乱暴に竿と陰嚢の大きさを確かめ、太ももからふくらはぎを両手で握るようにして一通り筋肉を観察する。
 三日も負荷をかければ筋肉がつく家系だと陛下が言ったように、それなりに筋肉が育っている。なんつー家系だよ。

「装備をつけ直して外に出ろ、ルディ」
 王族たる敬称も使わない。たかが軍人に辱められ羞恥に耳まで赤く染め涙目で震える王子に命じた。

「隊長、きれい系はご趣味ではないでしょう? 意地悪ですね」
 部屋を出て屋外の演習場に向かう中、まっすぐ前を向いて横を歩く第一副官ファウストに冷たく言われた。
 さすが俺の右腕。よく分かっている。
 あんなお綺麗な顔の男を泣かせてもなんら楽しくもなんともない。屈強な体つきの男のマウントを取り、男くさい顔を歪ませてヒンヒン言わせるのが一番だ。

 ただ。
「地獄を見せてやれって言われたからなぁ」
 王命だから仕方なくだ。後ろ首に手をやり嘆息する。

「綺麗な男が軍に入ってまず見る地獄といえばやっぱ性的いびり? コレかなーって」
「いつの時代の話ですか」
 ファウストに心底呆れられたが。

「お前らン時もまだえっげつない奴いたろ? あの頃に比べりゃマシだろ」
「陛下の事件を思い出すからやめてください」
 ファウストが言うのは「女新兵による股間踏みつぶし事件」だ。一般兵扱いで入隊した陛下が性的嫌がらせや暴行をする兵を片っ端からぼこぼこにした。
 正確には握り潰そうとしていたのを当時教官をやっていたバドルスのおっさんが「女が何やってんだ」って声を上げた途端、踏み潰したんだが。力づくで止められる前に潰したかったんだろう。
 潰されたのはそれだけの事をした奴だったからいいっちゃいいんだが、あれはえぐかった。
 視覚に対する暴力だった。居合わせた男はみんな自分がやられたワケでは無いにもかかわらず声もなく悶絶した。

「身分明かさずに入隊して、そんな派手な事してよく通りましたよね」
「……陛下だからな」
 あの女王は恐ろしく優秀だったんだ。入隊直後「コイツは魔王討伐隊の前線に出せる」って誰もが確信したくらいに。

 魔王討伐チームに自ら在籍し、最前線で英雄カイルに次ぐ活躍を見せた女王。
 そんな女王の改善により今は新人いびりやらいじめやらは罰せられるから健全なもんだ。有能な人間が現場を把握して対応策を講じてくれるのは本当にありがたい。
 じゃないと魔王が滅んだ今、兵が集まらねぇからな。

「しばらくはいびり倒すから」
 副官達が止めないよう予め宣言しておく。

 それにしても……なんかアイツちょっと勃ってたんだが気のせいだよな。
 細身の身体に見合わずブツは妙にデカかった。王族ってのはナニもご立派で堅めってやつなのかね。
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