エリート魔術師と叩き上げ隊長の朝チュンからはじまる全事故の記録。

志野まつこ

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1、朝チュン事件勃発。そして推理が幕を開ける。

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「起きてください」

 そんな声が聞こえた気がしてうっすら目を開けると、すぐ近くにえらく綺麗な横顔が見えた。
 んぁ? 俺まさかお持ち帰りしちゃった?
 そう、昨夜は飲み会だった。そしてここは俺のアパートメント。

 あーん? ちょっと記憶が無い。
 まぁ隊の飲み会だったし、まわりはみんな隊員だったから犯罪まがいの事はやってないはず。
 黒髪かぁ。顔見知りの女性隊員とかじゃないけど誰だ?
 整った寝顔を見詰め━━

 魔術会系クロフクのキース隊長じゃねぇか!

 魔術部隊の黒い制服を着こなして女の子にキャーキャー言われまくりの男。
 仕事で組む事はままあるが、プライベートでは一切交流がない。
 そんな男に抱き枕にするように足と腕を乗せている俺。
 とにかく離れようと起こさないよう細心の注意を払って足を持ち上げようとして気付く。

 足腰が微妙かつ不自然に痛い。
 そして俺、全裸。
 ……まさか、と思ったらやっぱりケツ穴が微妙に痛い気がする。
 マジかー

 そうだ、昨夜はちょっとデカい魔族討伐案件が片付いた祝勝会で派手に飲んだんだ。
 うちの部隊の若いやつが魔族討伐中に知り合ったクロフクの女の子に惚れたっつーんで魔術部隊にも声かけたんだ。
 魔術部隊の女の子に一生懸命話かける部下を肴に、重傷者ゼロの任務結果に酔いしれた。

 うん、すっげー盛り上がった。
 ああそうか。
 だから魔術部隊のキース隊長が隣で寝てるんだな。
 っていやいやいや、そうはならんて。

 えー、なんで軍部イチの色男お持ち帰りしてるんだよ。
 ヤベェ、おっさんが女性隊員差し置いてこんなモテ男をお持ち帰りしたなんてバレたら俺無事じゃいられねーんじゃね?
 うちの筋肉ガール達には隙あらば切りかかられそうだし、魔術部隊の女の子には呪われそうじゃねぇか。

 俺は魔力が無いから肉弾戦を担当する体育会系の剣術部隊で、魔力のある軍人志望者は魔術部隊に所属する。
 人間相手だと剣術部隊俺達だけで対応するが、魔族相手だと両部隊で討伐部隊が編成される。
 今回は厄介な相手で、キース隊長の部隊との合同任務だった。

 昨日のコイツすごかったなぁ。いや魔族討伐が、だ。
 昨夜の下半身事情のアレコレは知らん。
 的確で迅速。
 剣術部隊こちらとしては実にやりやすく、ありがたかった。

 美形が狭いベッドの壁側に行儀よく仰向けに寝るもんだからこっちは狭いわ落ちそうだわ。
 だからコイツに抱きついてたんだな。よーし納得した。

 それにしても。
 うわー、こいつだいぶ年下だったよな。シミ一つないきめの整った肌してるわ。これが若さかぁ。
 高い鼻に閉じられていても形がいいと分かる目と引く結ばれた薄い唇。
 顔はいいわ身長は高いわ。若いのに実力もあって魔術会系でも屈指のエリート様。
 クールだから絡みにくいのが唯一の難点。そんなヤツを飲み会に誘った俺は「たまにはいい事するじゃないですか!」と部下の女の子達から珍しく褒められた。

「起きたならいい加減どいてください」
 きれいな横顔をぼーっと見ていたら、まぶたを上げ天井を睨みつけるように険しい表情のキース隊長に不機嫌に告げられる。
 いや、まだ寝てたいんだよ。
 勝手に起きればいいじゃねぇかと思ったけど俺が絡みついてるしコイツ壁側だから出られねぇのか。とりあえず腕と足をキースの上から退けた。

「なぁ、昨日ってヤッた?」
「はぁ?」
 腹筋で上半身を起こしたキース隊長は実に嫌そうに目をすがめてこちらを見降ろしてきた。あ、しっかり服を着ているな。

「覚えてないんですか」
 続いて不機嫌に吐き捨てられた。
 向けられたアイスブルーの瞳には責めるような色が滲み、眉は蔑むようにひそめられている。
 これがイイって女の子もいるんだよなー、うわこんな至近距離で拝んじゃったぜ。
 これ絶対うちのアンナ副隊長あたりに刺されるな。

 えーっと。
 うん。

「全っ然覚えてねぇんだよなー。なぁ、はじめっからもう一回お願いしてい?」

 とりあえずへらっと笑って頼んでみた。
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