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天職です
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「いいじゃん、ちょっとだけだから付き合ってよ」
「や、止めて下さい!」
「お客様、うちの従業員に無理強いはしないでいただきたいです」
「なんだお前!お前には関係なっ…ふぐっ!!」
「それがこのお店のルールなので」
手に持っていたほうきで、迷惑な客を追い払った。
客は知能指数が低いセリフを吐きながら走っていった。
せっかく掃除をしてたのに邪魔が入った……でもこのほうき…思ったより使いやすいな。
この店「エンジェルフレンド」の大人気店員である可愛い顔をした少年「フレン」はよく絡まれる。
他の店員もそれなりに絡まれたりするが、フレンは特に多い。
見た目だけじゃなく、気配りも出来て話し上手なら勘違いする客の気持ちも分からなくない。
この店に来るきっかけを作ってくれたのはフレンだ。
フレンが襲われていた事ではなく、用心棒に誘ってくれた事だ。
まさか、用心棒だけじゃなくて雑用までやらされるとは思ってなかったけど…
「ありがとうございます、ルシアさん」
「いいよ、これが俺の仕事なんだから」
フレンはゴミ出しに外に出ていたらしく、地面に置いてあったゴミを掴んだ。
人気者なのに、雑用も自ら進んでやるところがさらに人気になるだろう。
俺が代わりにやっておくとフレンに言って、フレンが店に入るのを見届けた。
ゴミの袋を運びながら、充実しているな…と感じた。
両親のところに帰らないで本当に良かった…俺がやりたいのは古くさい復讐なんかじゃなくて、こういうのなんだから…
ゴミ置き場に袋を置いて、途中だった掃除をしに戻ろうと思った。
目の前になにかしろいものが落ちてきて、足を止めた。
俺の足の上に乗るのは、真っ白な羽根だった。
羽根を拾い、上を見ても真っ暗な夜空が広がっていて何もいなかった。
何処かに守護精霊達でもいるのかな、と思いながらほうきで地面を掃除した。
そりゃあ守護精霊はいるだろ、と苦笑いした。
そして、本日の営業は終わり…コップを拭いていた手を止めた。
「お疲れ、ルシア」
「レッドもお疲れ様」
「あー!ニコニコしてんのも疲れたー、顔が筋肉痛になりそ」
「レッドはそういうキャラじゃないだろ」
俺に声を掛けてきたのはツンデレキャラとしてやっている店員のレッドだ。
俺が初めて知り合った店員で、友人だったりする。
ニコニコ笑うのはフレンで、レッドはどっちかというとしかめっ面のような気がする。
レッドは分かっていないと言いたげな顔で俺を見て「ときどき笑うのがいいんだろ」と言っていた。
なるほど、ツンデレだからデレがないとダメなのか。
残りの食器を拭き終わり、レッドと一緒に店を出た。
「用心棒だけじゃなくて、雑用までやってんのはよくやるよな」
「用心棒の仕事だって頻繁にあるわけじゃないし、人手が足りないなら何でもやるよ」
「……本当によくやるよ」
レッドは呆れたような顔をしつつ、俺はレッドと俺の住まいの前で別れた。
その先にある、従業員が住む大きな建物に向かって歩いていった。
中に入るまで見届けて、俺は自分の住まいを見た。
100人が見て、皆が口を揃えて店の倉庫だと言うだろう。
俺もあの快適そうな建物に一度でいいから住んでみたいよ。
レッドの冗談だと最初は思っていたが、どうやら違ったようだ。
用心棒と従業員を一緒の屋根の下に住まわすのはダメだと、歴代の用心棒は皆この倉庫で過ごしている。
最初入った時は、どうにかして快適に過ごそうと考えていた歴代の用心棒達の努力を感じた。
しかし、どんなにふかふかの布団にしても全く快適にはならなかったようだ。
元々本当に倉庫として使われていたみたいだし、当然と言われたらそうなのかもしれない。
倉庫の扉を開けて、布団と棚を置いたらぎゅうぎゅうになる狭い部屋に入る。
トイレは店のを使って、風呂はまさかの湖で水浴びだった。
水浴びは経験あるから抵抗はないけど、唯一心配なのはここは俺がいた森ではなく、人口が多い街という事だ。
男に見られたところで何とも思わないが、女の子に見られたら最悪通報されてしまう。
不可抗力でも、湖で水浴びをしていた全裸の男とか…恥ずかしくて引きこもりになりそうだ。
それでも、用心棒の仕事は汗を掻くから風呂に入らないと…
臭い用心棒だって従業員達に嫌われたら、俺…立ち直れない。
着替えを持って倉庫を出ると、少し強い風が吹いた。
前が見えなくなって、倉庫に戻ろうと手を伸ばすが扉に触れる事が出来なかった。
押されて押されて、風が大人しくなった頃には髪が悲惨な状態になっていた。
この世界は天気予報がないから、今日は風が強いとか雨が降るとか分からないから不便だ。
たまに店の従業員で野生児みたいな子が天気を当てたりするけど、気まぐれだからな。
「早く水浴びして、寝よ」
「おい、ルシア」
「へ?…ぎゃあぁぁ!!!!」
突然暗がりが声を掛けてきたからそちらを見て、目がこぼれ落ちそうなほど驚いた。
全身黒いローブに怖い顔をした母親が暗がりの中、立っていたら誰でもビビる。
俺はそのまま会話をする事なく走って逃げた。
俺の様子を見にきたんだろう、絶対に俺の幸せをぶち壊しに来たんだ!
俺は俺の幸せを守るために、全速力で逃げた。
普段は街に来ないけど、夜なら大丈夫だと思ったんだろう。
俺が大丈夫じゃない、怖すぎる!
何処に隠れよう…倉庫に隠れるのは仕事場がバレるから絶対にダメだ。
広場に行き、この時間開いているお店はないか見渡す。
酒場くらいか、酒場なら人が多いし人気を避けた母親はそこまで追いかけて来ないかもしれない。
「や、止めて下さい!」
「お客様、うちの従業員に無理強いはしないでいただきたいです」
「なんだお前!お前には関係なっ…ふぐっ!!」
「それがこのお店のルールなので」
手に持っていたほうきで、迷惑な客を追い払った。
客は知能指数が低いセリフを吐きながら走っていった。
せっかく掃除をしてたのに邪魔が入った……でもこのほうき…思ったより使いやすいな。
この店「エンジェルフレンド」の大人気店員である可愛い顔をした少年「フレン」はよく絡まれる。
他の店員もそれなりに絡まれたりするが、フレンは特に多い。
見た目だけじゃなく、気配りも出来て話し上手なら勘違いする客の気持ちも分からなくない。
この店に来るきっかけを作ってくれたのはフレンだ。
フレンが襲われていた事ではなく、用心棒に誘ってくれた事だ。
まさか、用心棒だけじゃなくて雑用までやらされるとは思ってなかったけど…
「ありがとうございます、ルシアさん」
「いいよ、これが俺の仕事なんだから」
フレンはゴミ出しに外に出ていたらしく、地面に置いてあったゴミを掴んだ。
人気者なのに、雑用も自ら進んでやるところがさらに人気になるだろう。
俺が代わりにやっておくとフレンに言って、フレンが店に入るのを見届けた。
ゴミの袋を運びながら、充実しているな…と感じた。
両親のところに帰らないで本当に良かった…俺がやりたいのは古くさい復讐なんかじゃなくて、こういうのなんだから…
ゴミ置き場に袋を置いて、途中だった掃除をしに戻ろうと思った。
目の前になにかしろいものが落ちてきて、足を止めた。
俺の足の上に乗るのは、真っ白な羽根だった。
羽根を拾い、上を見ても真っ暗な夜空が広がっていて何もいなかった。
何処かに守護精霊達でもいるのかな、と思いながらほうきで地面を掃除した。
そりゃあ守護精霊はいるだろ、と苦笑いした。
そして、本日の営業は終わり…コップを拭いていた手を止めた。
「お疲れ、ルシア」
「レッドもお疲れ様」
「あー!ニコニコしてんのも疲れたー、顔が筋肉痛になりそ」
「レッドはそういうキャラじゃないだろ」
俺に声を掛けてきたのはツンデレキャラとしてやっている店員のレッドだ。
俺が初めて知り合った店員で、友人だったりする。
ニコニコ笑うのはフレンで、レッドはどっちかというとしかめっ面のような気がする。
レッドは分かっていないと言いたげな顔で俺を見て「ときどき笑うのがいいんだろ」と言っていた。
なるほど、ツンデレだからデレがないとダメなのか。
残りの食器を拭き終わり、レッドと一緒に店を出た。
「用心棒だけじゃなくて、雑用までやってんのはよくやるよな」
「用心棒の仕事だって頻繁にあるわけじゃないし、人手が足りないなら何でもやるよ」
「……本当によくやるよ」
レッドは呆れたような顔をしつつ、俺はレッドと俺の住まいの前で別れた。
その先にある、従業員が住む大きな建物に向かって歩いていった。
中に入るまで見届けて、俺は自分の住まいを見た。
100人が見て、皆が口を揃えて店の倉庫だと言うだろう。
俺もあの快適そうな建物に一度でいいから住んでみたいよ。
レッドの冗談だと最初は思っていたが、どうやら違ったようだ。
用心棒と従業員を一緒の屋根の下に住まわすのはダメだと、歴代の用心棒は皆この倉庫で過ごしている。
最初入った時は、どうにかして快適に過ごそうと考えていた歴代の用心棒達の努力を感じた。
しかし、どんなにふかふかの布団にしても全く快適にはならなかったようだ。
元々本当に倉庫として使われていたみたいだし、当然と言われたらそうなのかもしれない。
倉庫の扉を開けて、布団と棚を置いたらぎゅうぎゅうになる狭い部屋に入る。
トイレは店のを使って、風呂はまさかの湖で水浴びだった。
水浴びは経験あるから抵抗はないけど、唯一心配なのはここは俺がいた森ではなく、人口が多い街という事だ。
男に見られたところで何とも思わないが、女の子に見られたら最悪通報されてしまう。
不可抗力でも、湖で水浴びをしていた全裸の男とか…恥ずかしくて引きこもりになりそうだ。
それでも、用心棒の仕事は汗を掻くから風呂に入らないと…
臭い用心棒だって従業員達に嫌われたら、俺…立ち直れない。
着替えを持って倉庫を出ると、少し強い風が吹いた。
前が見えなくなって、倉庫に戻ろうと手を伸ばすが扉に触れる事が出来なかった。
押されて押されて、風が大人しくなった頃には髪が悲惨な状態になっていた。
この世界は天気予報がないから、今日は風が強いとか雨が降るとか分からないから不便だ。
たまに店の従業員で野生児みたいな子が天気を当てたりするけど、気まぐれだからな。
「早く水浴びして、寝よ」
「おい、ルシア」
「へ?…ぎゃあぁぁ!!!!」
突然暗がりが声を掛けてきたからそちらを見て、目がこぼれ落ちそうなほど驚いた。
全身黒いローブに怖い顔をした母親が暗がりの中、立っていたら誰でもビビる。
俺はそのまま会話をする事なく走って逃げた。
俺の様子を見にきたんだろう、絶対に俺の幸せをぶち壊しに来たんだ!
俺は俺の幸せを守るために、全速力で逃げた。
普段は街に来ないけど、夜なら大丈夫だと思ったんだろう。
俺が大丈夫じゃない、怖すぎる!
何処に隠れよう…倉庫に隠れるのは仕事場がバレるから絶対にダメだ。
広場に行き、この時間開いているお店はないか見渡す。
酒場くらいか、酒場なら人が多いし人気を避けた母親はそこまで追いかけて来ないかもしれない。
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