俺の弟が一番かわいい

ー結月ー

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お世話

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王子は頷いて、メイド達を下がらせて脱衣場には俺と王子しか居なくなった。

なんで王子が残っているのか疑問だ、王子も一緒に風呂に入るのか?

ここは王子の家だし、男同士なら恥ずかしくはないが…俺の肩に手を乗せている王子に嫌な予感がする。

「では僕が脱がせよう」

「いやいやいやいやなんでそうなる!?」

「僕に脱がせてほしくて二人っきりになりたかったのではないのか?」

「一人で脱げるって意味なんだけど!!」

当たってほしくない嫌な予感が当たってしまい、俺は王子から距離を取る。

なんで誤解を招くような事を言うんだ!?二人っきりになりたいわけじゃなく、どっちかって言うと一人にしてほしいんだけど…

「遠慮するな」とジリジリと距離を縮めてくる王子に逃げ回っていたら壁に背中がくっ付いて行き場がなくなった。

「痛くはないから僕に身を任せてくれ」

「いや、本当に一人で…」

「僕の客人だ、この家の主になった気でいればいい」

それは物凄く荷が重いんだけど、俺の隙をついて後ろから抱きしめられた。

手を回して、ネクタイとボタンを一つ一つゆっくり確かめながら外す王子のやらしい手つきに俺は早く終われとだけ思った。

自分でもボタンを外そうとしたが、王子に何故か俺の手を握り外された。

意地でも自分で脱がしたいってわけか、なんだそれ…王子の変な趣味か?

シャツのボタンを全て外されると、隙間から王子の手が入ってきた。

それは違くないか!?と王子の腕を掴むが「脱がすだけだよ」と妙な色気がある声で言われて疑いの眼差しで王子を見つめた。

クスリと笑った王子はそのまま中から肩に手を差し込んでシャツを脱がされた。

普通に脱がせないのかと、シャツ一つで物凄く疲れた。

次は下だとベルトに手を掛けられて慌てて自分でベルトを外した。

あんな羞恥心をもう一度味わいたくはない!今度は止められる前にズボンと下着を一気に下ろした。

「ふふっ、残念」

「…な、なにが?」

「何でもないよ、先に入っててくれ…僕もすぐに行く」

王子にそう言われてタオルを貸してもらい、腰に巻いて風呂場の扉を開けた。

さすが金持ちの風呂だ、修学旅行で行った旅館の風呂並にデカい。

身体をお湯で軽く濡らしてから足を入れると、冷えた身体が暖かくなる。

ゆっくり肩まで浸かると、つい小さな声が出てしまう。

湯船に入ったのはどのくらいぶりだろうか、最近はシャワーだけで終わらせていたから…

一気に疲れが出てきて、もう何もしたくないなと目蓋を閉じた。

「寝ちゃダメだよ」

「…あ、ごめんなさい」

王子の声が聞こえて目を開けて、後ろを振り返った。

俺とは違い、タオルを一切していないフルオープンの王子がにこやかに立っていた。

俺は自分でも筋肉がある方だと思っていたが、うっすらとした筋肉だ。

しかし、目の前の王子は着痩せするタイプなのか美しい筋肉がついている肉体美だった。

何となく自分の裸を隠すように前屈みになってると、隣に王子が座った。

王子は見るかぎり日本人じゃないから身体の作りが違うんだ、そう思っていよう。

王子が俺の方を見てニコニコ笑っているから気まずい。

俺の身体を見て貧相だと笑っている訳ではないとは思うが…

こう何にもする事がないとついつい歩夢の事を考えてしまう。

歩夢、今何してるだろうか…今の時間ならまだ風呂は入っていないかな。

「なにか食べたいものは?」

「…え、肉」

「分かった、用意させよう…肉料理なら何でもいいのかい?」

「いやいや!さすがにそこまでは!」

「僕の自己満足だから気にしないでくれ」

自己満足で食事の世話をするのかこの人は…お人好しにもほどがあるだろ。

突然質問されたから今一番食いたいものをとっさに言ってしまった。

珍妙な肉じゃなきゃ何でもいいけど、俺はただ雨に濡れていただけでここまでされる事はしていない。

あまり長湯をしているとのぼせてしまうと王子に連れられて湯船から上がる。

湯上りの世話も王子がしたいらしく、脱衣場に置いていた乾いたタオルを取り出した。

身体は自分で拭けると言っても聞かない事ぐらいこの短時間で分かった。

前の大事な部分は手で隠していると、足から腰…腕と丁寧に拭かれた。

最後の仕上げだと髪を拭かれて、何だか子供に戻ったような気分だった。

「おしまい」

「ありがとう…」

「ふふっ、それじゃあ夕食を作るから先に僕の部屋で待っててくれるかな」

「えっ!?今から作るのか!?」

「少し遅くなるかもしれないが、頑張るよ」

「だったら俺が!」

服は王子のワイシャツと、少しぶかぶかのズボンを借りて着ている。

料理をするのを慣れていない王子に頼んで台所を使わせてもらう事になった。

何でもやらせるわけにはいかないからな、俺もお礼がしたい。

両親が共働きで歩夢は家事が出来ないからいつも俺が食事を作ってあげていた。

だから料理は得意な方だ、食えるくらいには作れる…王子の味の好みは分からないが…

食堂まで王子に案内してもらい、広い食堂にやってきた。

どんだけ大家族なんだよと言いたいほどにテーブルが縦長だ。

何もかもが豪華すぎて、俺と住む世界が違いすぎて今一緒にいるのが不思議なくらいだ。

王子は厨房に滅多に入らないそうで、厨房の事をよく知らないと専属のシェフの一人が一緒に厨房に入ってきた。

調味料を見ると、見た事がない調味料で英語のような文字が書かれていた。

でも英語ではないから頑張って読もうとしてもダメだった。

シェフに聞いても知らない名前の調味料で、何故か塩とか砂糖とかなかった。

仕方ない、少し舐めて味を手探りで確認しながら作るしかないか。

ペロッと一口舐めるとちょっとしょっぱかった…味はちょっと薄目だが、これは塩だろうな。

一通り使う調味料の味を確認して、料理を作る事にした。

肉は俺の知ってる鳥や豚や牛があって良かった、今日はオムライスにしようかな。

歩夢が好きだったオムライス、いつもこれを作ると嬉しそうに食べてくれたんだよな。

野菜を切りながらシェフも手伝ってくれると言ってくれて、鶏肉の下ごしらえを頼んだ。

そして、ケチャップがなかったからどうしようかと思ったが似たようなものがあったから代用した。

ケチャップみたいな酸味と甘みがあったが何故か白いケチャップもどきをかけて綺麗な半月の黄色いオムライスが完成した。

ケチャップというより、マヨネーズみたいだな…マヨネーズも美味しいけど…

トレイに二人分のオムライスが乗った皿を乗せて、食堂に戻ってきた。

椅子に座っていた王子は俺が来ると、にこやかに手を振っていた。

「おまたせしました」

「使用人以外の料理を食べるのは初めてなんだ、楽しみだな」

「庶民的な料理だからあまり期待しない方がいいですよ」

とはいえ、俺の料理を期待されるのは嫌な気はしない。

王子の前にオムライスを運ぶと目を輝かせた無邪気な顔で「これはなんだ?」と聞いてきた。

いくら庶民的な料理とはいえオムライスを知らないとかあるのか?

それとも白いオムライスだからか?白いオムライスもあると思うけど…
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