いつでもどこでも

しゅり

文字の大きさ
2 / 12

LV.2 照れ屋な君と連絡先と K.A

しおりを挟む

先日の一件で松本音葉が俺に興味を持っていることが解った。
いや、この場合松本音葉ではなく、と言うのが正しいか。

本人はそれに対し何度も否定していたが、顔を真っ赤にしてまでムキになっていたことから、それが松本の嘘だと簡単に解る。




どうやら松本は極度の照れ屋のようだ。



観察しても解らなかった、松本の新しい一面を知れて嬉しいと思う反面、ふと考える。

何故嬉しいと思ったのだろう。

何故松本のことをもっと知りたいと思うのか。


とにかく今の俺が言えることは、松本音葉が気になって仕方ないということだけだ。



気づけば俺の目は彼女の姿を追っていて、小柄なわりにちょこまかと素早く動くものだから最近では首に微かな痛みも覚え始め若干の不快さがある。
にも関わらず視界に彼女の姿が入っていないと落ち着かないのだから俺はどうしたと言うのだろうか。



それだけでなく俺は目だけに留まらず、耳にも不思議な現象が起こり始めた。

幻聴が聞こるのだ。
休み時間聞いた、少し高い楽しそうな彼女の笑い声だとか話し声が耳から離れてくれず、特に眠る直前になるとリピートされるものだから、最近睡眠不足が続いている。




本当にどうして俺はこんなにも彼女が気になるのだろう。
考えれば考えるほど不思議で腑に落ちない。


俺だけが松本音葉に振り回されているなんて納得出来ない。


俺が松本音葉に興味があるなら、松本音葉だって俺に興味を持つのが世の理というものじゃないのか。


そう思っていれば、松本音葉も俺に興味があることを知った。
まあそれが世の理なのだから当然と言えるのだが。


ただ松本は俺に興味があるとは言うものの、俺に振り回されている素振りを見せないので、まだ納得のいかない部分は多々あるが。




とにかく松本も興味があるなら問題ないと、携帯番号とメッセージアプリのID、ついでにメールアドレスを聞こうとしたが、照れ屋な松本はあの一件から俺が近づくたび顔を赤や青に変えて逃げるため、なかなか聞くことが出来ない。

そんな中、ふとした話から楓が松本の携帯番号とメッセージアプリのIDを知っていると聞き、それならばと聞いてみれば、本人に聞きなよー、といつもの軽く苛立つ喋り方で頑なに拒むので、仲良く話し合いをしたところ、若干拳が痛くなった気もするが快く自分の携帯を差し出してくれた。

教えるなら最初から素直に言えば良いものを本当に手の掛かる奴だ。


メッセージアプリのトーク画面から松本音葉の連絡先を送ってくる際、まだ何かぶつぶつと呟いていて苛ついたので、楓の携帯にある松本の番号などの個人情報は全て消去しておいた。
泣きそうな楓に少しだけ気が晴れたので良しとする。




その夜、早速俺は松本にメッセージアプリからメッセージを送ってみることにした。

自分から誰かにメッセージを送るなんてこれが初めてのことなので、正直なんて送れば良いのか分からない。

麻生です、麻生だけど、麻生だ………?
いや、彼女と初めてやり取りをするのだからこの場合、はじめまして、が妥当か……?



(……………面倒臭い。)

どうしてメッセージ一つ送るのにこんなに悩まなくちゃいけないんだ。
また俺だけが松本に振り回されている。



――もういい。

ならば俺はメッセージアプリを閉じ、メールアプリから教えてもらったメールアドレスを開く。
そして連絡を飛ばした。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...