仲間に裏切られ、魔法帝から最弱職の農民にジョブチェンジさせられたけど人類最高の魔力はそのままなので気楽に復讐しようと思う。

佐原さばく

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第5話 聖女の無双

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   悲鳴を聞きダリは急いで外に出る。しかし、そこには何も残っていなかった。いや、鎧の凹んだ傭兵が倒れていた。ダリは近寄って彼らの体を揺する。

「大丈夫ですか。ここで何が起こったんですか。」

   すると、その鎧の中から声が聞こえる。

「あ、あぁ、、お前か。私達が無能なまでに・・・」

「ここに来た時にいた短い銀髪の女の子はどこに行ったか分かりませんか。」

「すまない、分からないが、壁内に行ったことは確かだ。あいつらはおそらく盗賊だろう。奴隷にする気だ。」

   ダリは探そうと中に入っていった。

「この街での盗賊はかなり強いから誰か騎士に相談するといい。」

   笑顔でダリは振り返る。

「では、皆さんの怪我の手当てだけ頼んでおきますね。」

「私達のことを言ったのではない。」

   ダリにとっては相手の強さは関係なかった。彼は仲間に裏切られた時の事を思い出す。

(マリアは僕が裏切ったら、国に言うと言っていたけど、そんなの誰も信じるハズがない。だから、今、逃げてしまえば自分で効率よく復讐に挑める。でも、僕はこの怒りの感情を持って初めて知った。僕は自分のものを奪われる事がとてつもなく嫌いなんだ。もう、仲間を失いたくない!)

   マリアは三人の男達に攫われ、とある地下室へと連れてこられた。灯りはロウソクの光のみ。ある男がマリアの方を見る。

「お前、確かセイロン家だよな。」

「あなた、あのギルドで」

「そうそう。セイロン家は王族貴族の使用人
ばかりだ。だから、高く売れるんじゃねぇか。」

   不気味な笑顔を貼り付けマリアに寄ってくる。

「その名は隠せても、その銀髪は隠せなかったみたいだな。」

   セイロン家の人間は美しい銀髪を持っている人種であった。

「お前はどんな能力持ちなんだ。」

「し、知りません。」

   マリアの手足は壁に鎖で繋がれており、自由が効かないため、上手く喋ったり動いたりする事が出来ない。

「そうか、教えてくれないのか。なら、身体に聞いてみようかな。」

   その男の手がマリアの豊満な胸に伸びてくる。

「キャッ、やめてください!誰か助けて下さい!」

   その部屋は地下にあるため、外に聞こえるはずか無いがマリアは勿論この部屋が地下にあるだなんて知らない。
   その手は胸から腹を伝い、股の方へと伸びていく。そして、触れそうになる時、その男の頭が叩かれる。

「馬鹿か、コイツはまだ幼い、傷物にしたら値段が下がんだろ!ちょっとこっちでこの後の作戦会議だ。遊んでないでこっちで話し合うぞ。」

「チッ。分かったよ。」

   男達は木の扉を開きその部屋の外へと出ていく。

「また、遊びに来るらね。ボインちゃん。」

   マリアは心から怯えていた。目をつぶり瞼に人物像を浮かべる。

(助けて、おばあちゃん。)

   好奇心旺盛なマリアを助けたのはいつも祖母だった。
   そこである事を思い出す。マリアはツルを魔法で操作し後ろのポケットに入っていた。所々穴の空いた手紙を取り出す。それを開き流していく。

『親愛なるマリアへ

   元気にしていますか?
   私はあなたの事が可愛くて仕方なかった。私の息子達はろくに考えもしないで生きていたから、あの村が上手く治まるのか心配でした。そんな所にあなたが産まれてきてくれました。それから、息子達は娘を支える為だと仕事に精を出していきました。あなたは本当に私達の可愛い天使だと思いました。
   でも、あなたはよく危険に合いましたね。あなたは好奇心旺盛で、目を離すといつもどこかに行ってしまいましたね。それが心配で私は早くあなたの職業を登録したいと思いました。・・・』

   職業は紙に印刷する事で登録され、その職業の能力を使う事が出来る。それまでは本来の能力よりかなり劣った能力となる。

『・・・それで、ギルドの方に来て頂いてあなたの職業を見てもらいました。すると・・・』

   ダリは街中を走り回っていた。その途中ダリの目に透き通った銀が通り過ぎる。ダリは溜飲を下げ、声を掛ける。

「びっくりしたよ、マリア。攫われたと聞いたから。」

   その銀は翻りダリの目をその青い目で見つめる。

「え、」

「我の名はマリアではない。我はさすらいの聖騎士のフリューゲルだ。」

   よく見れば彼女の容姿はマリアとは異なっていた。マリアの目は翡翠《ひすい》に染まっているが、彼女の目は蒼だった。それに髪型も短めではなく、ポニーテールだった。

「すみません。間違えました。」

   そう言うと、ダリは直ぐにその場を去っていく。その背中にフリューゲルは声を掛けるもダリには聞こえない。

「貴様、マリアと口にしたな。それは私と同じ銀髪の・・・」

(どこだ。どこにいるんだマリア。)

   マリアは手紙の続きを読んでいた。

『・・・すると、大聖女と出ました。これは私と同じ職業です。詳しくはここでは言いませけれど、これは攻撃にも防御にも使えるものです。あなたがこの事を知ればもっと危険な所に行くのではないか。私と同じで国に仕えさせられるのではないか。と思いました。なので、登録は止めてもらい、ガーデナーと伝えました。
   ごめんなさいね。あなたの為だったの。
   でも、これを読んでいるという事はあなたは結局冒険に出てし待ったのですね。
   頑張ってね。そして、泣かずに笑っていて、私の可愛い小さな天使ちゃん。
   最後に、この職業は攻撃に関しては自分で前任者の詠唱を探さなくてはなりません。なので、私から授けます。それは・・・』

   マリアは涙が止まらなかった。
   そんな所に、マリアの胸を触った男が入ってきた。

「待ったー?俺のボインちゃん。どうして泣いているのかな。ケッケッケ。おじさんそういうの興奮しちゃうんだよね。」

   さらに扉が開いてもう二人が入ってくる。

「俺達も混ぜてくれよ。さっきはああ言ったが、こんなの我慢する方が無理だよなあ?」

   三人が近ずいてくる。しかし、マリアの表情はもう泣き顔ではなかった。その表情には覚悟が満ち溢れていた。

(よし、今、ここだ。おばあちゃんの技、使うね。)

『・・・その技の名前は・・・』

「『第一拳 貫弾』」

   マリアは三人を下から殴りつける。その攻撃は地下と地上を貫通させる。そして、大きな渦を巻き瓦礫が上に飛んでいく。

「おばあちゃん、ありがとう。私はもう泣かない。笑っているから。」

(あれ、頭がクラクラしてきた。どうして、)

   マリアは読んでいなかったが、その手紙にはまだ続きがあった。

『この職業の攻撃は意識をせずに使うと全魔力を使ってしまうから、調整してくださいね。

セイロン=ハイカーより』

   階段を降りてくる音が近ずいてくる。

(ダリさん、来てくれたの・・・かな・・・・・・)

   しかし、そこに現れたのは・・・

「よくもやってくれたな?テメェ、アイツらを殺りやがって。もう金なんてどうでもいい。お前を殺してやる。」

   男は長い剣をマリアに向かって振りかざす。

(ああ、ごめんなさい。おばあちゃん。私やっぱり上手く出来ないみたい。もう、おばあちゃんは助けてくれないもんね。それに、また泣いちゃった。)

   だがしかし、マリアとその男の間に糸を張ったような音と共に閃光が走る。

「待たせたな、マリア・・・」
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