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第四章 プレイ十二日目
#61 最推しが夢に出てきた
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ロンちゃんを交えて散々盛り上がったその日の夜、私は夢を見ていた。
夢だと分かったのは、五感が曖昧で現実感に欠けていたからだ。
気付いた時には私は階段を下りていた。蝋燭の灯りに照らされた長い長い階段だ。何段下ったのかも定かではなく私はただただ足を下に運んでいた。途中で古代エジプト風の男二人の前を横切った気がするけど、本当にそんな人がいたのかどうかもはっきりと思い出せない。
全ては朧気なまま、何もかもが揺蕩う夢心地の中の出来事だった。
「…………」
虚ろな思考のまま、階段の一番下に辿り着いた。そこには壁はなく、周囲は闇と靄に包まれていた。あるのは門がただ一つだけだ。真鍮製らしき両開きの大きな門だ。三メートル以上もある巨人でもなければ必要ないだろう大きさ。明らかに重いだろうに、手で軽く押しただけで門は開いた。
門の先には池があった。壁も天井も石煉瓦で囲まれた部屋、その中央に池が配置されていた。部屋は円形になっており、壁際には等間隔で石柱が立っている。柱や壁には蔦が這っていた。
天井や壁に灯りはない。にも拘らず、部屋の中は明るかった。光源は池だ。池が光っているのだ。池とは言ったものの満ちているのは水ではなく、光だった。
その池の真ん中にはおおよそこの場所にはそぐわない物が浮かんでいた。
「機械……?」
大きめの冷蔵庫サイズの黒いコンピューターだ。それが十三機も固まって池の中に浮いていた。いや、浮いていると言っていいのだろうか。何しろ光の池なのだ。浮力があるかどうか疑わしい。立つ機械から光が溢れていると言った方が的確な表現かもしれない。
池の前には一人の少女が佇んでいた。見知った顔だ。見間違える筈もない。遠くからだろうが後ろからだろうが、最推しの姿をこの私が認識出来ない訳がない。
「あれ? なんでここにすのこちゃんがいるの?」
「マナちゃん!」
佇む少女――マナちゃんが振り返った。直接対面するのはキャラメイク時以来か。間近で見る彼女は相変わらず可愛らしい。いや画面越しでも充分可愛いんだけど。より一層という事で。
……いやいや待て待て。マナちゃんが私なんかと二度も対面してくれる訳がないでしょう。第一、これは夢だって先程自分で言っていたじゃないか。つまり今、目の前にいる彼女は私が生み出した妄想という事になる。
「あー、推しが好き過ぎて夢にまで見ちゃったかぁ」
これは不敬だ。夢の中とはいえ、マナちゃんを勝手に出演させるだなんて不敬にも程がある。
しかも、自分の姿を良く見てみればパジャマ姿だった。布団に入った時の格好そのままだ。妄想とはいえマナちゃん相手にこんなだらしない姿は見せられない。本音は凄く勿体ないけど、早く目覚めてこの夢を断ち切らなくては。
「本当すみませんでした。すぐにハケますのでどうか御容赦を」
「待って待って待ってちょっと待って。夢なのは合っているけど、ここはすのこちゃんの夢じゃないよ。マナの夢でもない」
「……へ?」
だというのに、マナちゃんは私を呼び止めた。
彼女が私を制止する。なんて都合が良い展開だろう。これも私の妄想なのか。いやでも、「これは私の夢でもなければマナちゃんの夢でもない」という言葉の意味は気になる。夢である事を自覚した夢――明晰夢が「夢ではない」と言うだろうか。
混乱の末に結局、引き返す足が止まる。その合間にマナちゃんはンンッと軽く喉の調子を整えると、私を真正面から見つめて、
「ようこそ真なる幻夢境へ。『赤の女王』として貴女を歓迎しましょう」
両手を広げて魔女のような微笑を湛えた。
夢だと分かったのは、五感が曖昧で現実感に欠けていたからだ。
気付いた時には私は階段を下りていた。蝋燭の灯りに照らされた長い長い階段だ。何段下ったのかも定かではなく私はただただ足を下に運んでいた。途中で古代エジプト風の男二人の前を横切った気がするけど、本当にそんな人がいたのかどうかもはっきりと思い出せない。
全ては朧気なまま、何もかもが揺蕩う夢心地の中の出来事だった。
「…………」
虚ろな思考のまま、階段の一番下に辿り着いた。そこには壁はなく、周囲は闇と靄に包まれていた。あるのは門がただ一つだけだ。真鍮製らしき両開きの大きな門だ。三メートル以上もある巨人でもなければ必要ないだろう大きさ。明らかに重いだろうに、手で軽く押しただけで門は開いた。
門の先には池があった。壁も天井も石煉瓦で囲まれた部屋、その中央に池が配置されていた。部屋は円形になっており、壁際には等間隔で石柱が立っている。柱や壁には蔦が這っていた。
天井や壁に灯りはない。にも拘らず、部屋の中は明るかった。光源は池だ。池が光っているのだ。池とは言ったものの満ちているのは水ではなく、光だった。
その池の真ん中にはおおよそこの場所にはそぐわない物が浮かんでいた。
「機械……?」
大きめの冷蔵庫サイズの黒いコンピューターだ。それが十三機も固まって池の中に浮いていた。いや、浮いていると言っていいのだろうか。何しろ光の池なのだ。浮力があるかどうか疑わしい。立つ機械から光が溢れていると言った方が的確な表現かもしれない。
池の前には一人の少女が佇んでいた。見知った顔だ。見間違える筈もない。遠くからだろうが後ろからだろうが、最推しの姿をこの私が認識出来ない訳がない。
「あれ? なんでここにすのこちゃんがいるの?」
「マナちゃん!」
佇む少女――マナちゃんが振り返った。直接対面するのはキャラメイク時以来か。間近で見る彼女は相変わらず可愛らしい。いや画面越しでも充分可愛いんだけど。より一層という事で。
……いやいや待て待て。マナちゃんが私なんかと二度も対面してくれる訳がないでしょう。第一、これは夢だって先程自分で言っていたじゃないか。つまり今、目の前にいる彼女は私が生み出した妄想という事になる。
「あー、推しが好き過ぎて夢にまで見ちゃったかぁ」
これは不敬だ。夢の中とはいえ、マナちゃんを勝手に出演させるだなんて不敬にも程がある。
しかも、自分の姿を良く見てみればパジャマ姿だった。布団に入った時の格好そのままだ。妄想とはいえマナちゃん相手にこんなだらしない姿は見せられない。本音は凄く勿体ないけど、早く目覚めてこの夢を断ち切らなくては。
「本当すみませんでした。すぐにハケますのでどうか御容赦を」
「待って待って待ってちょっと待って。夢なのは合っているけど、ここはすのこちゃんの夢じゃないよ。マナの夢でもない」
「……へ?」
だというのに、マナちゃんは私を呼び止めた。
彼女が私を制止する。なんて都合が良い展開だろう。これも私の妄想なのか。いやでも、「これは私の夢でもなければマナちゃんの夢でもない」という言葉の意味は気になる。夢である事を自覚した夢――明晰夢が「夢ではない」と言うだろうか。
混乱の末に結局、引き返す足が止まる。その合間にマナちゃんはンンッと軽く喉の調子を整えると、私を真正面から見つめて、
「ようこそ真なる幻夢境へ。『赤の女王』として貴女を歓迎しましょう」
両手を広げて魔女のような微笑を湛えた。
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