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第五章 プレイ十三日目・前おまけ
幕間5 まつろわぬ民
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「まつろう」とは「服従する。付き従う」という意味である。つまり「まつろわぬ民」とは何らかの勢力や権力者に従わず、逆らう民の事である。
チクタクマン社が幻夢境にAI達の領域を作り、新たな国を興そうとした時、幻夢境側の人間は概ね好意的だった。
幻夢境の文明は停滞している。神々が幻夢境の文明水準を産業革命以前に留めさせているからだ。特殊な力を使えば目覚めたままで幻夢境に入る事が出来るが、その場合、持っていた懐中電灯は松明に、銃はナイフか剣に変わってしまう。そこまでして神々は徹底的に文明の発展を拒んでいた。
しかし、それに幻夢境の住人達が賛同しているかといえばそうではない。
幻夢境は発展性が乏しい。更にはあくまで夢の世界である為、現実世界の人々の夢に依存する。夢を見る者がいなければ創造を為せない。故に住人達は常に参入者に飢えていた。特に若者であればその傾向は顕著だ。
チクタクマン社が『旧支配者のシンフォニア』の世界観を幻夢境に創造すれば、それは新たな資源となる。物は増え、人口も増え、大地すらも増える。異なる文化が入ってくれば他都市の文化も流動する。良い事尽くめだ。原住民にも配慮して、朱無王国を興す場所は誰も住んでいない土地を選んだ。
だが、そこまでしても反対する者は現れるものだ。いつの時代、どの地域であろうとも古きを望む者、変化を厭う者はいる。急激な発展が神々の怒りを買うのではないかと恐れる者もいる。誰もが新しきを歓迎する事はないのだ。
賛成派と反対派、双方の意見はどれだけ言葉を交わそうとも交わらず、平行線のままだった。そしてついには抗争にまで発展した。
チクタクマン社はその抗争に便乗した。賛成派に『燃眼三騎士』を始め戦闘系VTuberを派遣し、反対派を駆逐したのだ。
それでも、反対派は諦める事はしなかった。僅かな生き残りを連れて、自らを「まつろわぬ民」にしてでも、彼らはまだ執念の火を灯し続けた。どうにかチクタクマン社の計画を阻止しようと画策した。
ヒントになったのはセレファイスからの名代だ。彼女は幻夢境の住人でありながらゲームにログインしている。彼女と同じように自分達もゲームの中に入り、そこから妨害工作を行えないかと考えた。
しかし、今回はテストプレイ。プレイヤーは一〇〇〇人しかいない。そこに自分達が混ざってしまうのは不自然だ。目立ってしまえば捕らえられ、目論見は潰える。
そこで彼らが目につけたのはNPCだった。
簡易AIによって管理されている街の住人やエネミー。その中に入り込む事にしたのだ。何でもないNPCを装い、情報収集に努め、虎視眈々と機会を狙っていた。そして今日、行動を起こした。
八体の魔城兵を乗っ取って、朱無王国襲撃を決行したのだ。
狙うは一つ。瑞加祷城の地下に安置されたこの世界の核――『旧支配者のシンフォニア』のサーバーだ。
チクタクマン社が幻夢境にAI達の領域を作り、新たな国を興そうとした時、幻夢境側の人間は概ね好意的だった。
幻夢境の文明は停滞している。神々が幻夢境の文明水準を産業革命以前に留めさせているからだ。特殊な力を使えば目覚めたままで幻夢境に入る事が出来るが、その場合、持っていた懐中電灯は松明に、銃はナイフか剣に変わってしまう。そこまでして神々は徹底的に文明の発展を拒んでいた。
しかし、それに幻夢境の住人達が賛同しているかといえばそうではない。
幻夢境は発展性が乏しい。更にはあくまで夢の世界である為、現実世界の人々の夢に依存する。夢を見る者がいなければ創造を為せない。故に住人達は常に参入者に飢えていた。特に若者であればその傾向は顕著だ。
チクタクマン社が『旧支配者のシンフォニア』の世界観を幻夢境に創造すれば、それは新たな資源となる。物は増え、人口も増え、大地すらも増える。異なる文化が入ってくれば他都市の文化も流動する。良い事尽くめだ。原住民にも配慮して、朱無王国を興す場所は誰も住んでいない土地を選んだ。
だが、そこまでしても反対する者は現れるものだ。いつの時代、どの地域であろうとも古きを望む者、変化を厭う者はいる。急激な発展が神々の怒りを買うのではないかと恐れる者もいる。誰もが新しきを歓迎する事はないのだ。
賛成派と反対派、双方の意見はどれだけ言葉を交わそうとも交わらず、平行線のままだった。そしてついには抗争にまで発展した。
チクタクマン社はその抗争に便乗した。賛成派に『燃眼三騎士』を始め戦闘系VTuberを派遣し、反対派を駆逐したのだ。
それでも、反対派は諦める事はしなかった。僅かな生き残りを連れて、自らを「まつろわぬ民」にしてでも、彼らはまだ執念の火を灯し続けた。どうにかチクタクマン社の計画を阻止しようと画策した。
ヒントになったのはセレファイスからの名代だ。彼女は幻夢境の住人でありながらゲームにログインしている。彼女と同じように自分達もゲームの中に入り、そこから妨害工作を行えないかと考えた。
しかし、今回はテストプレイ。プレイヤーは一〇〇〇人しかいない。そこに自分達が混ざってしまうのは不自然だ。目立ってしまえば捕らえられ、目論見は潰える。
そこで彼らが目につけたのはNPCだった。
簡易AIによって管理されている街の住人やエネミー。その中に入り込む事にしたのだ。何でもないNPCを装い、情報収集に努め、虎視眈々と機会を狙っていた。そして今日、行動を起こした。
八体の魔城兵を乗っ取って、朱無王国襲撃を決行したのだ。
狙うは一つ。瑞加祷城の地下に安置されたこの世界の核――『旧支配者のシンフォニア』のサーバーだ。
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