四天王最弱の闇の貴公子に転生した俺は器用貧乏を返上し、無限の手札と敵専用チート級最強最悪スキルで高笑いと共に全てを蹂躙し屈服させ覇道を征く!

ミオニチ

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第2部 〈世界制覇〉編

61、最大の好機。雷速の槍と、獣の本快。

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 ――いま穿たれたばかりの重なり合う二つの大穴クレーターの中。噴き上げられた、砂塵が舞う。

 この我は、体を、それを認識する。

 石礫による細かな傷と服の破れ。体に大きな負傷ダメージがないことを認識する。

 目線の遥か下。紫の瞳で、破軍将帝ヴァザヴォーザの巨躯のその両腕が大穴が穿たれた地に突き刺さっていることを認識する。

 超威力のスキルの反動で、直後いますぐには機敏に動かせないことを認識する。

 ――好機。

「はあああぁぁぁっ!」

 天と地。

 先ほど、破軍将帝ヴァザヴォーザの必殺の一撃から逃れるために反作用カウンター気味に一気に下へと噴射し、浮上。

 その魔力放出を今度は、上へ。

 重力加速と爆発的に相乗させ、白銀の長い髪をなびかせ、雷のごとき速度でそこへと意思を持ってする。

「受けよっ! 魔王の鉄槌ぃぃっっ!」

「ぬぅゥゥゥッッ!?」

 ――拳ではなく、貫手。だが狙うは急所ではなく、その右腕メインウェポン

 一迅の雷速の槍と化したこの我の貫手は、皮を裂き、肉を破り、骨を砕き、血の華を艶やかに咲かせ。

 そして――――止まった。

 おそらくは、ほんのわずかな、

 ただ、向いただけ。ほんの、ほんのわずか迫り来る物体この我へと本能的に注視し、その首が傾けられた結果。

 本来の狙いを外したその顔左三分の一。頬を削がれ、骨を割られ、無惨に歯を砕かれたそれと引き換えに、勢いをわずかになくして、本来の狙い、その右腕の肩口で。

 どろりと血を流す裂かれた口。どろりと血走った獣眼。

 獣そのもののような相貌の男が本快を遂げ、無防備に止まったこの我を見上げて、凶笑わらう。

 ――ぞわり。

「ぐヒハはアアァァッ……! ようひゃふゥゥッ……! つはまえェェッ……! ひゃアァァァッッッ!」

 ぶぢぃぃぃぃぃっっ!

「い、いぎぃぃゃああああああぁぁぁぁっっ!?」

 直後。

 反射的に引き抜いた右手の外側。それでも間に合わず、想像を絶する痛みが、熱がこの我を襲う。

 ぐち。にちゃ。ばき。ごくっ。

「ふゥゥゥしゃあアァァァッッ……!」

 この我の指が引き、喰い千切、血と肉と骨が無惨に咀嚼され、飲み込まれ、そして。

「がおああああアアアァァァァァァッッッ!」

「き、きぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!?」

 咄嗟にかばった両手のひら。

 間髪入れずに打ち上げられた男の暴虐の左拳がなすすべなく叫ぶこの我を吹き飛ばした。

 たったいま喪失した右の指二本から、いまもズキズキと痛む鮮血の軌跡をボタボタと宙に撒き散らしながら。
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