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後編
第二王子、男爵令嬢、国王陛下、王妃。
四人以外居ない部屋。出入口は厳重な警備がされている。
「どういう、ことですか……?」
その室内で、第二王子は愕然とした。
陛下と王妃から、ジェーン・ドゥ公爵令嬢は『実在しない』と告げられたからである。
「そんな、はずは……だって、数年も手紙のやり取りを……学園でも噂が……」
混乱のあまり発言がままならない第二王子。男爵令嬢も困惑しており、落ち着かない様子だ。
王妃は深くため息をついた。
「このことを告げるのは大変心苦しいのだけれど……あなたの婚約者になっても良いと言ってくれる家がどこにもなかったの」
「えっ」
王妃が告げた事実に第二王子の頭は真っ白になった。
そもそも、婚約者が最初から存在しない?
なら、愛しの男爵令嬢に嫌がらせをしていたという数々の証言は?証拠は?
困惑する第二王子の隣で、男爵令嬢がおずおずと「発言よろしいでしょうか」と許可を求めた。陛下が許可を出す。
「どこにもないって……あ、ありえるのですか?だって、王族ですよ、ね……?」
沈痛な面持ちで陛下は頷く。
「ああ……だが、こいつは幼少期からなんというか……やらかし放題、といったら伝わるか?悪名が轟いておってな……」
王家と繋がりが持てるというメリットより、第二王子の婚約者になるというデメリットが大きすぎたのだと語ると男爵令嬢は瞠目した。何せ、ここ数年で貴族社会に入った彼女には知らない事柄だったからだ。
「だが、仮にも王族に婚約者が居ないというのは面目が立たない。そこで、架空の婚約者を仕立て上げたのだよ」
「架空の、婚約者……」
陛下の言葉を繰り返して、男爵令嬢は呆然とした。と同時に、今まで第二王子に訴えてきた婚約者の悪事が嘘だとばれてしまうことに気付き顔を青褪めさせる。
そこで声を上げたのは第二王子だった。
「ま、待ってください。私は確かにジェーン・ドゥ公爵令嬢と手紙のやり取りをしていました!」
「それを書いたのは私よ」
すかさず答えた王妃に、第二王子は絶句する。
「あなたの態度や振る舞いが目に余るものですから、婚約者からの諫言ということで手紙を出していたのだけど……あまり意味はなかったようね」
まさかあの場で婚約破棄を宣言するなんて、と王妃は顔を覆う。到着するのが遅れていたら、そもそも婚約者の実在を怪しむ者も出てきたのかもしれない。
第一、ジェーン・ドゥ公爵令嬢は病弱という設定で、学園にもまともに通っていないという話なのだから。
陛下も王妃と同様に、親としての至らなさを嘆いていたが、ふと男爵令嬢を見た。
「いや、でも、そうか。お前たち二人は愛し合っているのだろう?なら、婚約者問題は解決か」
その言葉に王妃も「確かに」と頷く。
「ジェーン・ドゥ公爵令嬢に関しては上手く処理しましょう。王位継承権は無いのだし婿入りという形なら……」
「身分差を気にしない愛という形で美談にできるかもしれぬな」
勝手に話を進める陛下たちに、未だに混乱から抜け出せない第二王子。
そして、第二王子の愚鈍さをようやく理解し、愛が冷めつつある男爵令嬢。
部屋には、そこはかとなく冷たい空気が流れていた。
その後、第二王子は男爵令嬢に婿入りという形で婚姻が認められた。
しかし、性根を直すことのできなかった元第二王子と、逃げ出したかったが陛下たちに押し切られる形で行った婚姻に不満を持つ男爵令嬢とでは、上手くいくはずもなかったのだった。
四人以外居ない部屋。出入口は厳重な警備がされている。
「どういう、ことですか……?」
その室内で、第二王子は愕然とした。
陛下と王妃から、ジェーン・ドゥ公爵令嬢は『実在しない』と告げられたからである。
「そんな、はずは……だって、数年も手紙のやり取りを……学園でも噂が……」
混乱のあまり発言がままならない第二王子。男爵令嬢も困惑しており、落ち着かない様子だ。
王妃は深くため息をついた。
「このことを告げるのは大変心苦しいのだけれど……あなたの婚約者になっても良いと言ってくれる家がどこにもなかったの」
「えっ」
王妃が告げた事実に第二王子の頭は真っ白になった。
そもそも、婚約者が最初から存在しない?
なら、愛しの男爵令嬢に嫌がらせをしていたという数々の証言は?証拠は?
困惑する第二王子の隣で、男爵令嬢がおずおずと「発言よろしいでしょうか」と許可を求めた。陛下が許可を出す。
「どこにもないって……あ、ありえるのですか?だって、王族ですよ、ね……?」
沈痛な面持ちで陛下は頷く。
「ああ……だが、こいつは幼少期からなんというか……やらかし放題、といったら伝わるか?悪名が轟いておってな……」
王家と繋がりが持てるというメリットより、第二王子の婚約者になるというデメリットが大きすぎたのだと語ると男爵令嬢は瞠目した。何せ、ここ数年で貴族社会に入った彼女には知らない事柄だったからだ。
「だが、仮にも王族に婚約者が居ないというのは面目が立たない。そこで、架空の婚約者を仕立て上げたのだよ」
「架空の、婚約者……」
陛下の言葉を繰り返して、男爵令嬢は呆然とした。と同時に、今まで第二王子に訴えてきた婚約者の悪事が嘘だとばれてしまうことに気付き顔を青褪めさせる。
そこで声を上げたのは第二王子だった。
「ま、待ってください。私は確かにジェーン・ドゥ公爵令嬢と手紙のやり取りをしていました!」
「それを書いたのは私よ」
すかさず答えた王妃に、第二王子は絶句する。
「あなたの態度や振る舞いが目に余るものですから、婚約者からの諫言ということで手紙を出していたのだけど……あまり意味はなかったようね」
まさかあの場で婚約破棄を宣言するなんて、と王妃は顔を覆う。到着するのが遅れていたら、そもそも婚約者の実在を怪しむ者も出てきたのかもしれない。
第一、ジェーン・ドゥ公爵令嬢は病弱という設定で、学園にもまともに通っていないという話なのだから。
陛下も王妃と同様に、親としての至らなさを嘆いていたが、ふと男爵令嬢を見た。
「いや、でも、そうか。お前たち二人は愛し合っているのだろう?なら、婚約者問題は解決か」
その言葉に王妃も「確かに」と頷く。
「ジェーン・ドゥ公爵令嬢に関しては上手く処理しましょう。王位継承権は無いのだし婿入りという形なら……」
「身分差を気にしない愛という形で美談にできるかもしれぬな」
勝手に話を進める陛下たちに、未だに混乱から抜け出せない第二王子。
そして、第二王子の愚鈍さをようやく理解し、愛が冷めつつある男爵令嬢。
部屋には、そこはかとなく冷たい空気が流れていた。
その後、第二王子は男爵令嬢に婿入りという形で婚姻が認められた。
しかし、性根を直すことのできなかった元第二王子と、逃げ出したかったが陛下たちに押し切られる形で行った婚姻に不満を持つ男爵令嬢とでは、上手くいくはずもなかったのだった。
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