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1.これが最後
しおりを挟む「すまない、リロエラ……、わたしとの婚約を解消してほしい」
「え……」
「君の妹のルリフィネが、代わりに婚約者となってわたしを支えたいと申し出てくれたのだ。半年前の事件で弱ってしまったリロエラの体に、未来の王妃として重責を堪えさせるのは忍びないと……」
わたしもそう思う。そんな殿下の呟きがわたくしの耳に入った。
「努力してくれていた君に、酷なことを言っているのはわかってる。しかし。わたしは君に長く生きていてほしい。だから……」
ああ、最近妹の機嫌がすこぶるよかったのはこのせいだったのか。
「ロシャ殿下の申し出をお受けいたしますわ。……お心遣い、感謝いたします」
もうこんなふうに親しく話すことはできないのだろう。慕わしい殿下の顔を目に焼きつけたのち、わたくしは深々と頭を下げた。
久しぶりにロシャ殿下がいらっしゃる今日を楽しみにしていた。
今まで、優しい殿下の伴侶となるために必死で努力を重ね。体を壊したあともなんとか体調を戻そうと努めた。
全部全部、無駄なあがきだったみたい。
わたくしは公爵令嬢リロエラ・モルージニ。日本から転生し、不便な生活ながらもお支えしたい殿下のために努力する輝かしい毎日を送っていた。
――そう、半年前のあの事件までは。
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