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彼女
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私には結婚を前提に付き合っていた女性が居た
私が今いる会社で声を掛けて付き合い始めた人だったのだが、籍を入れる前に彼女は、天国へと旅立ってしまった
死亡の原因は交通事故だった
彼女が運転していた軽自動車と、対向車線にいる大型トラックとの衝突
お互い80kを超えるスピードで衝突し、彼女の乗っていた軽自動車はペチャンコ。大型トラックは運転席と助手席が軽く潰れただけだった。
彼女は見るも無残な姿だった。即死だった。
大型トラックに乗っていた2人の男性は重症ではあるものの、命に別状はなかった
私は当然、悲しみに明け暮れた。
これは彼女が亡くなったその日から半年が経ち、私はやっと立ち直ったという頃からの話。
私は仕事を終え、帰路につく。
いつもは車だったのだが、車が故障しており、修理に出していた。
だから私は普段使い慣れない電車を使っていた。
家に着くと、会社の上司から電話が掛かってきた。
その内容は次のようなもの。
1つ、大事な書類が見つからない君が持っていないのか、と。どうやら書類を上司が無くしたようだ。
私が持っているはずはないのだが、上司と私はその大事な書類が無ければ懲戒免職になるほど重要な役割を持っていた。
その書類を無くす事はつまり、明日からの我が身は……
だから私は大急ぎで肩で息をするように電車に乗った。終電である。
私は会社かネットカフェで眠ることを覚悟した
冷静になると、上司に怒りが湧き上がる
どう考えても私は悪くない。上司が圧倒的に悪いのだ。なぜ私が出向かなければならないのか……という怒りでいっぱいだった。
しかし、まだ電車から降りていない時に電話が掛かってきた。
終電なのでほとんど誰も乗っていないのだけれども、躊躇した。しかし名前を見ると上司の名前。仕方なく電車内で電話をした。
電話の内容はこういうものだ。
書類が見つかった、と。
怒りを通り越して呆れた。
上司として最高に相応しくない。
私はバカバカしくなった。電車からすぐさま降り、タクシーで帰ろうと思い、〇〇交通に電話した。
3分程度でタクシーは私の前へ。早い早い。さぁ、帰ろう
と思うと……
向こう側に女性の姿が見える。
何なんだ?と思い目をよーく凝らしてみると、見たことがあるような気がした
お客さん、と声が聞こえる。
あぁ、そうだ。私はタクシーを呼んで来てもらったのだ
いやはや、一瞬我を忘れそうになった。私らしくもない。
いやしかしこの女性は……まさか……
タクシーの運転手に少し待ってくださいと声をかけ、女性の元に駆け、話しかけた。
しかし、女性は何も言わずただ、下を見続けていた。
反応がない。
姿形は彼女にそっくりだ。そう、半年が経ち、忘れたはずの彼女が。死んだ彼女が!目の前に!いるのだ!
しかし、決定的に顔立ちが違う。こんな暗い人じゃなかった。
でも、他人とは思えない。
どこか重なってしまう。
放っておけない。そう思い、反応のない彼女の肩を支えてタクシーに乗り込んだ。
私の住所を述べる。女性の家まで運んでやりたかったが、いかんせん女性は何も喋らない。
持ち帰りなどする気はさらさらない。私はバカバカしく軽々しい行動は取らない主義だ。
でも、そんな私が惹き付けられる女性は一体なんなんだ。
興味が湧く。
綺麗だ。この女性は。
すぐに亡くなった彼女に重ねてしまう。
そんなことを考えていると、20分程度でタクシーは私の家に着く。
1万円を支払い、釣りは受け取らず女性と共に私の家へ入った。
どうでもいいが、終始タクシーの運転手は無表情で、気味が悪かった……
さて、どうしたものか。
とりあえず私は母が泊まりに来た時用に予備の布団を用意している。まぁ、亡くなった彼女のためだったのだが。現在は母用だ。
布団を引き、女性に聞いた。
なぜ、あそこにいたのか。名前は。所持金やどこに住んでいるのか、明日はどうするのか。
女性はすべて答えやしない。ひどいものだ。
しかし、女性がか細く言った一言は
ありがとう
つぎの日の朝、女性を見ると眠っていた。
私は仕事があったため、書置きを残した。
勝手に出ていってもらって構わない。という一言のみ。タクシー代と食べ物代で1万円を置いていったが、足りるのだろうか。
家には金目の物は置いてないし、鍵はオートロックなので心配はない。
仕事が終わり、家に電車で帰る。
家には本当は誰もいないはずだが、女性が居た。
私は溜息を付くと同時に安心していた。なぜ安心したのか自分でもびっくりだ。いや、おかしい。なぜ他人に興味の全く湧かない私が……?
彼女の風貌が、そうさせたのか……この異常なまでに無口な女に……?
私は言った
少しなら、ここにいても良い。と。
しばらく私は女性と一緒に居た。
週末に女性に聞いてみた。どうしたのか。なぜ、帰らないのか。帰るべき家があるはずだと。
女性は重い重い口を開いた。
はっきり聞き取れた。
男に捨てられた、と。
どうやら、女性は同棲をしていたらしいのだが、ある日突然部屋からものが消えていたらしい。
なぜ、同棲相手が消えたのかわからなかったらしく、女性は泣いた。
私は女性を抱きしめた。いや……抱きしめてしまった。
ありえない。私がここまで同情するなど。
その晩、私は女性を抱いた。半年ぶりの柔肌だった。
毎晩、私は女性を抱いた。名前も知らない女性を。
ある日、女性は、私と結婚したいと言い出した。
名前も知らない。素性も知らないこんな女性と?
私はバカバカしく思った。が、満更でもないのだ。私は彼女を抱きしめた。おかしいなどともその時は一切思っていなかった
しかし、次の日の朝、家から女性が消えた。
私は彼女を探した。有給を使い町中を探し回った。
しかし、夜になっても見つからなかった。
私は家に帰り、寝る支度をした。明日の仕事は休めない。
私は仰向けになって寝た。
すると、リビングから音が聞こえる。ヒタヒタと歩く音が!なんだ!
次第に音が大きくなる。
音が止まった。
と同時にドアノブを握る音がした。明らかに私が今寝ている寝室に入ろうとするものがいる。
キィィィー
と音がしたかと思うと、女性が居た。
安堵したかと思えば、彼女は手に光るものを持っていた。
彼女は私を見て、走る!
私は対応が遅れ、女性が私の上になり、馬乗り状態になる!
女性は金切り声を上げた!
女性は言った
男は信用出来ない!
こうやって他の女にすぐに変える!
死ね!
女性の顔は狂気に満ちている!
いや、女性……!?いや違う!?
死んだ彼女だ!
これはどういうことだ!死んだはず……!
彼女は言った
私が死んでも!愛すと言ったじゃない!
死ね!
最後の死ね!という言葉と共に私に振り下ろされた物は、鋭い痛みを伴い、私を切り裂いた
私は目の前で私をメッタ刺しにする彼女か女性かわからないものを見つめながら、涙を流した
そしてすまなかった、とその一言だけ言って目を閉じた
お終い
私が今いる会社で声を掛けて付き合い始めた人だったのだが、籍を入れる前に彼女は、天国へと旅立ってしまった
死亡の原因は交通事故だった
彼女が運転していた軽自動車と、対向車線にいる大型トラックとの衝突
お互い80kを超えるスピードで衝突し、彼女の乗っていた軽自動車はペチャンコ。大型トラックは運転席と助手席が軽く潰れただけだった。
彼女は見るも無残な姿だった。即死だった。
大型トラックに乗っていた2人の男性は重症ではあるものの、命に別状はなかった
私は当然、悲しみに明け暮れた。
これは彼女が亡くなったその日から半年が経ち、私はやっと立ち直ったという頃からの話。
私は仕事を終え、帰路につく。
いつもは車だったのだが、車が故障しており、修理に出していた。
だから私は普段使い慣れない電車を使っていた。
家に着くと、会社の上司から電話が掛かってきた。
その内容は次のようなもの。
1つ、大事な書類が見つからない君が持っていないのか、と。どうやら書類を上司が無くしたようだ。
私が持っているはずはないのだが、上司と私はその大事な書類が無ければ懲戒免職になるほど重要な役割を持っていた。
その書類を無くす事はつまり、明日からの我が身は……
だから私は大急ぎで肩で息をするように電車に乗った。終電である。
私は会社かネットカフェで眠ることを覚悟した
冷静になると、上司に怒りが湧き上がる
どう考えても私は悪くない。上司が圧倒的に悪いのだ。なぜ私が出向かなければならないのか……という怒りでいっぱいだった。
しかし、まだ電車から降りていない時に電話が掛かってきた。
終電なのでほとんど誰も乗っていないのだけれども、躊躇した。しかし名前を見ると上司の名前。仕方なく電車内で電話をした。
電話の内容はこういうものだ。
書類が見つかった、と。
怒りを通り越して呆れた。
上司として最高に相応しくない。
私はバカバカしくなった。電車からすぐさま降り、タクシーで帰ろうと思い、〇〇交通に電話した。
3分程度でタクシーは私の前へ。早い早い。さぁ、帰ろう
と思うと……
向こう側に女性の姿が見える。
何なんだ?と思い目をよーく凝らしてみると、見たことがあるような気がした
お客さん、と声が聞こえる。
あぁ、そうだ。私はタクシーを呼んで来てもらったのだ
いやはや、一瞬我を忘れそうになった。私らしくもない。
いやしかしこの女性は……まさか……
タクシーの運転手に少し待ってくださいと声をかけ、女性の元に駆け、話しかけた。
しかし、女性は何も言わずただ、下を見続けていた。
反応がない。
姿形は彼女にそっくりだ。そう、半年が経ち、忘れたはずの彼女が。死んだ彼女が!目の前に!いるのだ!
しかし、決定的に顔立ちが違う。こんな暗い人じゃなかった。
でも、他人とは思えない。
どこか重なってしまう。
放っておけない。そう思い、反応のない彼女の肩を支えてタクシーに乗り込んだ。
私の住所を述べる。女性の家まで運んでやりたかったが、いかんせん女性は何も喋らない。
持ち帰りなどする気はさらさらない。私はバカバカしく軽々しい行動は取らない主義だ。
でも、そんな私が惹き付けられる女性は一体なんなんだ。
興味が湧く。
綺麗だ。この女性は。
すぐに亡くなった彼女に重ねてしまう。
そんなことを考えていると、20分程度でタクシーは私の家に着く。
1万円を支払い、釣りは受け取らず女性と共に私の家へ入った。
どうでもいいが、終始タクシーの運転手は無表情で、気味が悪かった……
さて、どうしたものか。
とりあえず私は母が泊まりに来た時用に予備の布団を用意している。まぁ、亡くなった彼女のためだったのだが。現在は母用だ。
布団を引き、女性に聞いた。
なぜ、あそこにいたのか。名前は。所持金やどこに住んでいるのか、明日はどうするのか。
女性はすべて答えやしない。ひどいものだ。
しかし、女性がか細く言った一言は
ありがとう
つぎの日の朝、女性を見ると眠っていた。
私は仕事があったため、書置きを残した。
勝手に出ていってもらって構わない。という一言のみ。タクシー代と食べ物代で1万円を置いていったが、足りるのだろうか。
家には金目の物は置いてないし、鍵はオートロックなので心配はない。
仕事が終わり、家に電車で帰る。
家には本当は誰もいないはずだが、女性が居た。
私は溜息を付くと同時に安心していた。なぜ安心したのか自分でもびっくりだ。いや、おかしい。なぜ他人に興味の全く湧かない私が……?
彼女の風貌が、そうさせたのか……この異常なまでに無口な女に……?
私は言った
少しなら、ここにいても良い。と。
しばらく私は女性と一緒に居た。
週末に女性に聞いてみた。どうしたのか。なぜ、帰らないのか。帰るべき家があるはずだと。
女性は重い重い口を開いた。
はっきり聞き取れた。
男に捨てられた、と。
どうやら、女性は同棲をしていたらしいのだが、ある日突然部屋からものが消えていたらしい。
なぜ、同棲相手が消えたのかわからなかったらしく、女性は泣いた。
私は女性を抱きしめた。いや……抱きしめてしまった。
ありえない。私がここまで同情するなど。
その晩、私は女性を抱いた。半年ぶりの柔肌だった。
毎晩、私は女性を抱いた。名前も知らない女性を。
ある日、女性は、私と結婚したいと言い出した。
名前も知らない。素性も知らないこんな女性と?
私はバカバカしく思った。が、満更でもないのだ。私は彼女を抱きしめた。おかしいなどともその時は一切思っていなかった
しかし、次の日の朝、家から女性が消えた。
私は彼女を探した。有給を使い町中を探し回った。
しかし、夜になっても見つからなかった。
私は家に帰り、寝る支度をした。明日の仕事は休めない。
私は仰向けになって寝た。
すると、リビングから音が聞こえる。ヒタヒタと歩く音が!なんだ!
次第に音が大きくなる。
音が止まった。
と同時にドアノブを握る音がした。明らかに私が今寝ている寝室に入ろうとするものがいる。
キィィィー
と音がしたかと思うと、女性が居た。
安堵したかと思えば、彼女は手に光るものを持っていた。
彼女は私を見て、走る!
私は対応が遅れ、女性が私の上になり、馬乗り状態になる!
女性は金切り声を上げた!
女性は言った
男は信用出来ない!
こうやって他の女にすぐに変える!
死ね!
女性の顔は狂気に満ちている!
いや、女性……!?いや違う!?
死んだ彼女だ!
これはどういうことだ!死んだはず……!
彼女は言った
私が死んでも!愛すと言ったじゃない!
死ね!
最後の死ね!という言葉と共に私に振り下ろされた物は、鋭い痛みを伴い、私を切り裂いた
私は目の前で私をメッタ刺しにする彼女か女性かわからないものを見つめながら、涙を流した
そしてすまなかった、とその一言だけ言って目を閉じた
お終い
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