ハッピーライフ

小槻みしろ

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六話

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 自信がなかった私は、誰かに必要とされる自分にあこがれた。
 だから、高校で、毛色の違う部活に入って、友達を作ろうと、必死に努力した。
 でも、それは、自分のコンプレックスをもっと強めただけの結果に終わった。
 余計に卑屈に必死になって……私は、体を壊した。
 兄が、念願の大学に合格して、家が少し落ち着いた頃だった。
 まさか、寝ないくらいで、ここまで壊れるとは思わなかった。
 死のうにも、体が動かない。窓の外まで、這うこともできない……
 そんな生活が続いた。
 働かない頭で、ずっと考えていた。
 ――どうしてこんなことになってしまったんだろう?
 親は、思ったより、私を愛してくれていた。
 壊れた私を、絶対に捨てると思っていたのに、家においてくれた。
 全部、私が悪いのか。
 そう思えている内は、まだよかった。
 私が、悪いと思えなくなってきたときから、もっと苦しくなった。
 兄は、ふさいでいたことも忘れて、楽しそうだった。
 真帆は、クラスが変わるなり、連絡が途絶えた。
 私だけ……取り残された。
 私が悪いんだ。
 でも……でも……
 でも……でも……
 
「でも、もう私は違うんだ」

 思いつく限りの、原因は、全部断ち切った。
 これで、私にはもう、ならないんだ。
 空を、こんなに高く美しく感じたのは、いつぶりだろう。
 私にも、そんな時期があったんだ。

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