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三愛 紫月 (さんあい しづき)

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秘密の話[栞の視点]

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僕は、安西と並んで歩いている。

「橘は、やっぱりすごいよ。僕なんかより色んな事を感じてるんだと思う。」

「安西も、充分すごい経験をしているよ。」

僕は、そう言いながら遠くを見つめていた。

「橘と藤堂が、抱えるものは何?ほら、橘も藤堂も…。僕みたいに男が好きじゃなかっただろ?」

安西に言われて、僕は少し考える。

「月(るい)の事は、月(るい)に聞くべきだよ。だけど、僕と月(るい)に共通してる事は言えるよ。自分の子供をもてないって事。」

「言いづらい事を聞いてしまったね。ごめんね」

安西は、申し訳なさそうな顔をしていた。

「月(るい)には、会った時に聞きなよ。僕の話は、してあげるから。」

僕は、安西に笑う。

「藤堂の話、聞かせてくれ」

安西は、そう言って僕を見つめた。

「僕はね、結婚が決まっていたんだ。婚約者がいた。その人との幸せな未来しか想像していなかったよ。子供はね、二人は欲しいねって笑ってた。」

僕は、そう言いながら足元を見つめる。

「癌だったんだ。」

涙が、流れてくる。

「温存するのは、難しいと言われた。卵子を凍結する事も、僕は無理だと言われたんだ。頭の中が、真っ白でお医者さんが言った言葉は全部わからなかった。それ以外何も聞こえてこなかった。」

安西が、僕を見つめてる。

「藤堂、無理に話をさせてすまない。」

「聞けよ。最後まで…。月(るい)は、いつも途中で泣いちゃうし、麻美もあの時の話嫌がるから…。でも、僕はあの時の気持ちを聞いて欲しいよ。安西に…。」

僕は、涙を拭った。

「わかった。聞くよ」

安西は、僕を見つめる。

「僕はね、彼に話したんだよ。」

僕は、流れてくる涙を拭いながらみんなに話した話を安西にした。

「酷い人だね。」

安西の目から涙が流れてくる。


「僕も、酷かったんだと思うよ。病気になんてなってしまったから…。治療がうまくいって、生きれたのに、僕は、ずっと死にたかったんだ。同じ病気の人に怒られてしまうけど、僕は生きたくなかった。女としての人生を失くし、愛していた婚約者に裏切られ、もう僕には生きてる意味が見つけられなかった。麻美を巻き込んだくせにね」

歩きながら話す。

駅にもうすぐつくのに、安西が僕の手を引いた。

「そこに座れる所が、あるよ」

安西に言われて、その場所に座った。

「ずっと誰にも言っちゃいけないと思っていたんだ。」

「死にたかった事?」

「うん。生きてるだけでも、奇跡です。ってお医者さんにも言われたのに…。なのに、僕は死を望むなんてな。最低だよ」

安西は、僕の手を握ってきた。

「それだけ藤堂は、結婚も子供も望んでいたんだろ?」

安西に見つめられて、嘘はつけなかった。

「僕の家は、自慢じゃないけどいい家庭だと思うよ。両親は、優しかったし…。僕のしたいようにさせてくれた。僕は、二人みたいな夫婦になりたかった。かわいい子供を産んで、育てたかった。それに、最後は酷かったけど…。僕は、彼をすごく愛していたんだよ。安西、ちょっとついてきてくれない?」

「いいよ」

僕は、安西の手を引いた。

「僕は、基本的にこの駅は使わないんだよ。」

そう言って、駅前に戻ってきた。

「喫茶店?」

「うん、あそこの席にいるのが彼だよ。」

「さっきの話の?」

「うん」

「いつもいるのか?」

「いつもいる。そこで、仕事をしてる。だから、僕はこの駅は使わないんだ。」

「子供がきた。」

僕は、時計を見た。

「8時になると、奥さんと子供が迎えにくるんだ。一度、ここを通った時に鉢合わせて知った。」

「彼は、藤堂に何か言ってた?」

「何も言わなかったよ。会釈だけした。奥さんが、知り合い?って聞いたら、間違いだったって笑ってた。」

「藤堂、辛かっただろう」

「もう一つ誰にも言えなかった話は、こっちだよ。見ると悲しくなって、気が狂いそうになる。僕が、彼にあげたかったものをあの人は全部あげれてるんだよ。だから、この駅は使わないって決めてたのに…。安西とだと来てしまったよ。もどろうか?さっきのとこに…。」

安西は、僕の手を握りしめた。

「わざと、通りすぎない?」

悪戯っぽく安西が、笑う。

「片目は、髪で隠すから…。それなら、まだ、いけてるだろ?僕も…。」

「どういう意味?」

「藤堂も、見せつければいいんだよ。」

「でも、麻美が…。」

「内緒だよ」

片目を隠した安西は、やっぱり綺麗な顔をしている。

学校の人達が、安西を狙っていた時とかわらないぐらい綺麗なままなんだよ。

安西は、彼が出てくるタイミングを見計らっている。



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