みんなの愛らぶyou(仮)

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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選択肢[晴海の視点]

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朝から、ボッーとしている俺の元に、月(るい)君のお兄さんがやってきた。

「手の調子は、どうかな?」

「感覚は、戻っている気はしません」

「もう少し、様子を見てよ」

「はい」

「晴海さん、今日は誰も来ないのかな?」

「はい、きません。」

「そうか。一人であまり悩まずに、誰かに相談して欲しい。」

「はい」

「明日には、目の包帯がはずせるって話だからね。」

「はい」

「嬉しくないのかな?」

「今と何も変わらないですよね?」

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないよ」

「期待して、落ち込むぐらいならいらないです。」

「そうなんだね。じゃあ、また明日も来るよ」

そう言って、月(るい)君のお兄さんは病室を出ていった。

一人で生きて行こう、そしたらいつか全てを捨てられるから…。

そんな事を考えて、ボッーと過ごしていたら、美矢がやってきた。

美矢の言葉に、嬉しさが込み上げてくる。

俺が人生を終わらせようとしている事をわかっていた。

「退院したら、美矢の家に行くよ」

「片付けておくよ」

「そのままでいい」

「わかった」

美矢は、俺にスケッチブックを差し出した。

「左手をだして」

「はい」

美矢は、俺の左手にクレヨンを握らせる。

「晴海、食べ物って作るだけじゃないんだよ」

そう言って、俺の手を持って、なぜか目玉焼きを描(えが)いた。

「目玉焼き?」

「うん。晴海は、何色が好き?僕は、ほんのりピンクが好き。」

そう言って、美矢はピンク色を塗る。

何でかな?涙が流れてくる。

「俺は、黄色がいいかな?」

「そうなんだね」

美矢は、その隣に目玉焼きを描(えが)いて、真ん中を黄色に塗った。

「パンは、何色が好き?」

「美矢」

「何?」

「楽しいね。これ」

俺の言葉に美矢は、笑った。

「絵と料理って似てると思わない?」

「そんな気がする」

「晴海は、お皿に絵を描(えが)いていたでしょ?僕は、紙に食べ物を描(えが)いたりする。それに、人によって食べたい色も違うよね?目玉焼きにしても、僕はピンクが好きだし、晴海は黄色が好き。あのさ、晴海。僕と一緒に絵を描(えが)かない?」

美矢にそう言われて俺は、美矢の手を握った。

「新しい未来(あす)をくれるのか?」

美矢は、頷いた。

「僕の仕事を手伝って欲しい。」

「それが、美矢が俺としたい事なら構わないよ。」

美矢は、俺を見つめて笑った。

「晴海は、ステーキはどんな断面が好き?」

俺は、左手でピンクを取って塗る


「少しだけピンクがいいんだけど…。これだけじゃ、表現できないよな」

「じゃあ、これを、足せば少しかわるかな?」

美矢は、黄土色のクレヨンを薄く塗る。

「白もいるかな?」

「茶色もこうしなきゃ」

「美矢」

「なに?」

「楽しいよ。すごく」

俺は、もう一度美矢に言った。

「そう思うなら、晴海にはセンスがあるって事だね」

美矢は、そう言って笑ってくれる。

「まだ、こんな風に楽しいって思う事があるんだな」

「晴海、選択肢は一つや二つじゃないんだよ。大人になって、自分が出来あがるとね。出来ないって思い込むんだ、だから、こうやって誰かに可能性を示してもらわないと選択肢を増やせなかったりするんだよ。」

「美矢も、そうだったの?」

「そうだよ。僕は、天の川カフェで料理の飾りづけを手伝っていた。」

美矢は、別のスケッチブックを取り出して広げた。

真っ黒に塗り潰されてる。

「晴海、僕はこの頃、左手が思うように使えなくてね。」

美矢は、小さなノートを出した。

「これが、今の僕の絵。手が使えなかった時の僕の絵が、こっち」

両手を使って描(えが)いているのがよくわかる。

「線が、大胆じゃないし、震えてる」

「そうだろ?手の痺れや違和感で、思うように描(えが)けなかった。だから、毎日、毎日、絶望と死。これしか頭の中になかった。」

「今の俺と同じだね」

美矢は、俺の手を握りしめる。

「僕は、霧人のお兄さんに選択肢をもらえた。だから、今度は僕が晴海に選択肢をあげたかった。それだけが、全てじゃないって事をわかって欲しかった。」

美矢は、そう言うと俺の右手も優しく握りしめる。

感覚は、もどっていないけど…

温もりは、わかる。

「暖かいね、美矢の手」

「次は、冷やしてこようか?」

美矢は、笑ってくれる。

美矢が、俺の為に頑張ってくれてる気持ちわかるよ。

「愛してるよ、美矢」

生きていて欲しいと言いたい気持ちを美矢が、我慢してるのもわかる。

「晴海、僕も愛してるよ」

美矢は、俺に優しい口づけをしてくれた。


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