なろう110000PV☆不純異性行為～月と星が交わる場所へ～あの時の二人を救ってくれたのは紛れもなくこの愛でした～【皆月凛、星村拓夢編】

拓夢の話９

彼女の悲しみ…

「お待たせしました。ハンバーグスペシャルランチになります」

「私です」

店員さんは、平田さんの母親の前にそれを置いた。

「こちら、チキンスペシャルランチになります」

「ありがとうございます」

「ごゆっくりどうぞ」

店員さんは、そう言って頭を下げた。

「いただきます」

「いただきます」

俺達は、食べ始める。スペシャルランチは、コンソメスープと全てのメニューにエビフライとカニクリームコロッケがついているらしい。ポテトサラダと千切りされたキャベツにオリジナルのドレッシングがかかっている。俺は、チキンをナイフとフォークで切り分けながら食べる。

「うまっ」

思わず口から出た言葉に、平田さんの母親は笑っていた。

「ここの洋食屋さん、凄く美味しいんですよ」

そう言って、ニコニコ笑ってくれる。

「旦那さんをまだ愛してるんですね」

俺の言葉に、平田さんの母親は頷いた。

「もう、無理なんだけどね」

その目は、絶望の色に染まってる。

「再婚してたりとか？」

「そう！とっくにしてる」

そう言いながら、ハンバーグを切って口に運んでる。

「許せないんですね」

「許せるわけない。私と凛を捨てたんだから…」

その目にうっすらと涙が溜まっていくのが見える。

「でも、もっと許せないのは私自身かもね」

そう言って、平田さんの母親は小さく微笑んだ。

「そうですか」

俺は、その言葉しか出てこなかった。平田さんの母親は、俺と凛みたいな人間が嫌いだから…。あれこれと言葉を選んだ所で意味はないと思った。残りは、黙々と食べた。

『ごちそうさまでした』

同時にそう言っていた。

「じゃあ、行く？」

「はい」

平田さんの母親は、煙草が吸いたいらしく。店を出る事にした。お会計を払おうとされたけれど、俺が出した。

「ありがとうございました」

店員さんにお辞儀をされながら店を出た。

「何か、すみません」

「いえ、付き合ってもらったのは俺なので」

「そんな事はないですよ」

そう言って、平田さんの母親はニコニコと笑っていた。

「喫煙所は、あそこですね」

「そうですね」

少し離れた場所に喫煙スペースが設けられていた。

「俺、ここら辺にいますよ」

「わかりました」

平田さんの母親は、そう言っていなくなった。俺は、それを見送ってからスマホを見る。

「はぁー」

凛からの連絡は、なかった。晩御飯の時に掴まえれるといいんだけど…。
もう、凛と繋がり合えないのだろうか？もう一度だけ、俺は凛に触れたい。

「ごめんね！お酒、買いに行ってもいい？」

「あっ、はい！いいですよ」

「じゃあ、行こうか」

「はい」

俺は、平田さんの母親と歩き出す。