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拓夢の最後の話

夢への一歩

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「拓夢の電話だよな?」

「あー、ほんとだ」

俺は、画面を見て電話に出る。

「もしもし」

『星村君、今何処にいるかな?』

「あー、カラオケ何ですが、…のとこの」

『あ!今からお邪魔していいかな?部屋番号と詳しい住所送ってて』

「はい、わかりました」

プー、プー

電話は、相沢さんからだった。俺は、カラオケの住所を送った。

「誰から?」

「相沢さん、今から来るって」

「明日の打ち合わせかな?」

「そうだろな」

「せっかくだから、聞いてもらうか」

「そうだね」

三十分程して、相沢さんがやってきた。

「こんばんは」

『こんばんは』

「固い!固い!座ってよ」

「すみません」

「明日の事なんだけど」

「はい」

「milkのライブ終わりに君達が出るんだけど!デビューの日は、12月24日」

「もう、決まってるんですか?」

まっつんの言葉に、相沢さんは頭を掻いた。

「実はね、Artemisってバンドを出す予定だったんだ。ほら、揉めてるって言っただろ?」

「はい」

「Artemisの為に、予定を立ててたんだけど…。全部、駄目になっちゃって。社長は、Artemisにかけてたから、プランも立ててたんだよね。でも、それが全部白紙になっちゃって。落ち込んでる社長に、君達の曲を聴かせたら…。花束を凄く気に入ったんだ。それを、デビュー曲にするってどうかな?」

相沢さんの言葉に、俺は何も言えなくて…。かわりに、まっつんが話す。

「あの、相沢さん。デビュー曲なら、今出来た曲じゃ駄目ですか?」

まっつんの言葉に相沢さんは、驚いた顔をした。でも、すぐに笑って「聞かせて」と言ってくれた。俺達は、今作った曲を聞かせた。

「凄いね、これはいい!最高だよ」

相沢さんは、パチパチと拍手をしながら泣いてくれる。

「この曲、売れますか?」

「売れますか?じゃないよ!売るんだ」

かねやんの質問に、相沢さんはハッキリと力強くそう答えてくれた。

「見た事ない景色に連れてってあげるよ!売るのは、任せてくれ」

相沢さんは、そう言ってニコニコ笑ってくれる。

「じゃあ、もう一回聞かせてくれる?社長に聞かせるから」

そう言って、相沢さんはボイスレコーダーを取り出して録音をし始める。俺達は、それぞれの想いをこの曲にぶつけた。

「ありがとう!何度聞いてもいいよ」

相沢さんは、涙を指で拭ってからボイスレコーダーをポケットにしまっていた。

「このライブが終わってから、一週間後にジャケット写真を撮って、1ヶ月後にPV撮影が決まってるけど、大丈夫?」

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