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拓夢の最後の話2

頭が追い付かない

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智の言葉に頭が真っ白になっていた。

「何も言えないのか?あの日、トイレに閉じ籠ってた言い訳は?じゃあ、これは何だ?」

智は、スマホをテーブルの上に置いた。

「拓夢君、激しい」

「ハァ、ハァ、気持ちいいですか?」

「気持ちいいわー、凄いわ!最高よ」

パリン……

俺は、珈琲の入ったグラスを床に落とした。

「あんまり聞いたら、おかしくなるか?」

「ごめん」

俺は、グラスを片付けようとした。

ガチャ…

「拓夢」

まっつんがやって来た。

「な、何?」

「危ないから、怪我するから置いとけ」

「あ、うん」

「拓夢、顔色悪いぞ!大丈夫か?」

まっつんが、俺の肩に触れようとした。

「触るな」

大きな声で叫んでいた。

「ご、ごめん」

まっつんは、怯えたみたいな目を向ける。

「まっつん、そろそろ話してやったらいいんじゃないのか?お母さんとやってたの知ってましたって」

まっつんは、グラスの破片を拾って智に向ける。

「刺すか?」

「拓夢に何言った」

「何って、別に…。音声聞かせただけだよ」

「それは、俺とお前の」

「そんな約束守るのは、バンドやってた時だけだろ?」

智は、まっつんを見下すように睨みつけている。

「智、ふざけんな」

「はあ!?そもそも、お前がいつまでも拓夢に聞かないから駄目なんだろ?だから、こいつはまた不倫してんだよ!それも、見て見ぬフリしてんのかよ!まっつん」

「何でだよ。何で、俺達を応援しないんだよ」

まっつんは、そう言って泣いてる。

「へー。理沙ちゃんからの電話で知ったんだろ?拓夢の不倫相手が傷つけられてるって」

「何だよ、それ!」

凛が傷つけられてるって言葉に俺は、黙っていられなかった。

「アハハハ、アハハハ!俺はな、雇われただけだ。ある人からお金もらって!呪うなら、今までお前等がやってきた事を呪えよ」

ポタポタとまっつんの手から血が流れてきてるのがわかった。

「まっつん、離せよ」

俺は、まっつんに声をかける。

「理沙と凛さんまで、巻き込んでお前は何がしたいんだよ。誰に雇われたかを話せ、智」

智は、フッて鼻で笑うとカチッと煙草に火をつけた。

「言ったら、金返さなきゃなんないから無理だわ!それに、俺、SNOWROSEがどうなろうとどうでもいいんだよ。フー」

「ふざけるなよ、智」

「話、それだけなら帰るわ」

パリン……

まっつんは、手から破片を落とした。

「あぶねーな!まっつん」

血だらけの手で、まっつんは智の肩を掴んだ。

「いくらもらったんだ!智」

「さあな!」

智は、そう言って笑った。

「まっつん、本当の事、ちゃんと拓夢に言ってやれよ!今、拓夢の愛する彼女が傷つけられてるって事もちゃんとな」

まっつんは、智の肩から手を離した。

「じゃあな!」

「待って」

「行くな」

まっつんは、俺を止める。どうしてだよ。まだ、聞けてないだろ?
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