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エピローグ【凛の話1】

おかしな事

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コンコンー

「はい」

「失礼します」

頼んでいた飲み物は、今頃やってきた。

「ありがとう」

「失礼しました」

店員さんは、オレンジジュースを二つ置いていなくなった。

「変だよね」

店員さんがいなくなって理沙ちゃんは、そう言った。

「変?」

「うん。まるで、盗聴でもしてるのかってぐらい知ってるって言うか。凛ちゃんの後、つけてたのかな?」

「気づかなかった」
  
「会えばきっと何もかもわかるから、大丈夫だよ」

理沙ちゃんは、私なんかよりしっかりしている。初めて会った時のギャルっぽい雰囲気とは違っていた。今は、私よりもしっかりした大人。

「あのね、凛ちゃん」

理沙ちゃんは、話しづらいようだった。

「どうしたの?」

「優太の母親とたくむんが寝てたって聞いた?」

「ううん、聞いてない」

私の言葉に理沙ちゃんは、「よかったー」と小さく呟いた。

「実は、掲示板でそう言うのが噂に流れてるって聞いたの!だから、凛ちゃんの耳にも届いてるかなーって思って」

「そうなんだね」

本当は、全てをわかっているけれど、私は嘘をついていた。

「そうなの!それに関しては、優太も私に何も言ってくれないから!誰かの嘘だと思ったんだけどさー。ほら、こないだ!智君が証拠があるとか言ってきてさー。優太には、話せなかったんだけどね…。智君、奥さんが入院しちゃってるんだって!で、お金が必要なのかなーって、だから
そんな嘘ついたのかなーって」

証拠って、何?私は、きっと眉間に皺を寄せていた。

「凛ちゃん、顔怖いって」

「あっ、ごめんね」

「いいよ、いいよ。多分、証拠ってのも智君の嘘だと思ってるから」

「どうして?」

「智君、SNOWROSEのライブ見たくなかったんだって」

「そうなんだね」

「これも、優太に言えなかったんだけど…。惨めだったんだって。あのステージでキラキラした皆を見てたら、凄く情けなかったって」

「何かわかる気がする」

「凛ちゃんも?どうして?」

私は、オレンジジュースをゴクリと飲んで理沙ちゃんを見つめて話す。

「遠くに行った気がしたから…。拓夢が、遠くに…」

私の言葉に理沙ちゃんは、頷いていた。

「何かわかるよ。理沙も優太にそう思ったから」

「そんな事ないのにね」

「うん。でも、そう思うよね…。客席とステージってそんな距離感ない?」

「あるね」

「だよねー。何か、手の届かない場所に行っちゃったって感覚がするよね」

「理沙ちゃんもそうだったんだね。私も、そう思ったの」

「大丈夫だよ!たくむんは、凛ちゃんを捨てたりなんかしないから」

「そう言うなら、まっつんさんだって」

理沙ちゃんの笑顔が曇る。「優太の重荷になりたくない」ポツリと呟いた言葉に何かよくない事がおきてるのを感じていた。
    
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