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エピローグ【凛の話1】

自己紹介

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「すみません、遅れまして…。初めまして、松田優太です」

「初めまして、皆月龍次郎です。こっちが、妻の凛です」

「初めまして、皆月凛です」

「初めまして」

まっつんさんは、顔色一つかえずに私にそう言った。さすが、芸能人を目指すだけある人だと感心してしまう。

「彼女の理沙です。名字は、言った?」

「いい、いい」

理沙ちゃんは、まっつんさんにそう言って首を振っている。

「お待たせしました。ビールが4つとこちら今日のつきだしになります」

「ありがとう」

「あー、皆月さん。いつも、ありがとうございます」

「こちらこそ、ありがとうございます」

店員さんは、そう言って深々と頭を下げて、ビールとつきだしを置いていった。

「じゃあ、初めましてに乾杯しますか?」

「そうですね」

『乾杯ー』

私達は、ビールのジョッキをガチンと合わせて飲む。

「松田さん、何食べますか?」

「そうですね」

「適当に頼んで!凛ちゃんは?」

「私は…」

「あれだけ頼んだらいいんだろ?」

「うん、お願い。ちょっとお手洗い」

「行ってらっしゃい」

私は、ストールを畳んで置いて立ち上がった。

「待って、理沙も行く」

そう言って、理沙ちゃんもついてきた。

「大丈夫?凛ちゃん」

「大丈夫」

私は、理沙ちゃんの言葉に笑って話す。トイレにつくと理沙ちゃんは、私の頬をさすって言った。

「笑えてないよ!凛ちゃん」

「ごめんね。何か…」

「旦那さんといるのしんどい?」

「どうかな…。そういうわけじゃないと思うんだけどね」

「さっきの電話の相手が引っ掛かってる?」

「そうだね。彼女に会うまでは、きっと…」

「それまでは、仕方ないよね!無理なら、理沙と一緒にいてもいいんだよ」

「大丈夫、大丈夫。そこまでじゃないから」

「凛ちゃんの旦那さん、理沙から見たら、凛ちゃんを愛してるって雰囲気しかでてないんだけどなー。浮気なんかしてるのかなー。絶対、そんなはずないんだけど」

理沙ちゃんは、そう言ってトイレの鏡を見つめてる。

「理沙、トイレ行ってくるね」

「うん」

私は、鏡に映る自分を見つめていた。龍ちゃんを信じられないなんて嫌。だから、ちゃんとしなくちゃ!頬を軽くパチパチと叩いた。

「凛ちゃんも、トイレ行く?」

「うん、行く」

私は、トイレに行った。
出てくると理沙ちゃんが、笑ってくれる。

「何かスッキリした?」

「どうかな?でも、飲んで忘れようかなーって」

「いいねー。理沙も付き合う」

「じゃあ、戻ろう」

私と理沙ちゃんは、龍ちゃんとまっつんさんの元に戻る。扉を開ける前に、二人の声が聞こえる。理沙ちゃんと二人聞き耳をたててしまう。

「そうなんですか、じゃあ、皆月さんは奥さんを!」

「恥ずかしい話、俺の方が愛し過ぎてしまっていて」

「あー、わかります。俺も同じですから」

その言葉に、理沙ちゃんと私は笑いながら扉を開ける。

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