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エピローグ【拓夢の話3】

服を選びに行く

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俺と凛は、階段を上りきった。改札に辿り着いていったん手を離して改札を抜けた。俺は、またすぐに凛の手を握りしめる。俺達は、並んで歩きだす。

「さっきの椅子に座ってた人。嫌だったんだよね。私達の事」

凛は、駅を抜けるとそう言ってきた。

「咳払いしたりしてた人?」

俺の言葉に、凛は「そうそう」と頷いていた。

「不愉快そうにしてたなー。確かに…」

「拓夢が私を支えてくれてるのが、きっと嫌だったんだろうね」

凛の言葉に、俺はボソリと「変なDVD見すぎなんじゃないか…」と呟いていた。

信号で止まる。凛は、目を大きくして俺を見つめている。

「何?」

「さっきの独り言だった?」

俺は、自分が発した言葉を気づいてなかった。そう言われて、頭で思っていた言葉を口に出していたのがわかった。

「あー、ごめん」

思い出すと急に恥ずかしくなってきた。

「確かに、そういうシリーズあるもんね」

凛は、嬉しそうにニコニコ笑って俺を見つめる。

「知らないよ!見た事ないし」

俺は、そう言って凛を見つめる。

「へー、そっかぁ!」

凛は、疑いの眼差しを俺に向けるように笑う。

「本当だって!そういうのは、興味ないから!俺は、そういうのは違うから…。だから、見てないよ」

俺は、必死で凛に否定する。その必死さが逆に怪しさを助長する。

「いいよ!もう。信号渡ってすぐだって」

凛は、そう言って気にしてないからって顔をしている。嫌、今のじゃまるで俺は、凛と電車でそうしたかったように聞こえたんじゃないだろうか?現に、行きの電車で俺は凛にキスをしていた。確かに、公共の場所で、いつ誰かに見られるかわからない気持ちにドキドキはした。でも、だからって、あんな満員電車でどうにかしようなんて癖はない。

「ここだね」

凛と一緒に、スーツが売ってる店にやってきた。家に帰ってから、ちゃんと話そう。

「ネクタイ選んでよ」

俺は、気にしないように凛の手をひいてお店に入る。今は、兎に角二人の時間を大切にしたい。

「いらっしゃいませ」

店員さんは、俺と凛に深々とお辞儀をしてくれた。店内には、もう、冬物が沢山並んでいる。

「拓夢、どんなのがいいの?」

「そうだなー」

沢山のスーツが並んでいる。俺は、凛と一緒に奥へと歩いて行く。

そこには、華やかな場所に行く為のスーツ、カッターシャツ、ネクタイ、小物が並んでいる。

「これ、綺麗だね」

瑠璃色のネクタイを凛は、見つめていた。何で、ここに来たかな…。さっきまで、いなかった皆月龍次郎(あのひと)が現れてきたのを感じる。

「拓夢、どうしたの?」

「いや、別に」

凛は、俺の顔を見つめながらネクタイを選んでくれてる。指輪(あれ)がなくても、凛の中にはやっぱり皆月龍次郎(かれ)が存在している。それをこの場所は、嫌でも思い出させる。
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