上 下
5 / 18

三(さん)の秘密

しおりを挟む
【今日、おいでな。待ってるで】

竹君からのLimeを見つめていた。

九(きゅう)が、こーへんのやったらお腹痛いって断ろうかな?

たつくんは、亡くなる3ヶ月前、俺だけを病室に呼んだ。

「しんどいんやない?」

「三(さん)の顔見たら、元気になった。なった。」

たつくんが、少しずつ痩せていくのを感じていた。

「三(さん)、九你臣(くにおみ)に合わせて、合コンに行かんでええんやで」

そう言って、たつくんは笑ってくれる。

「無理してへんから」

「嘘つくな。その気持ちは、もう恋やで。三(さん)」

「な、わけないやんか。こんなん恋なわけないやんか」

「それゆったら、嫌われる思ってんのか?」

たつくんは、俺の頭を撫でる。

「ちゃんとゆうてみ、嫌いにならへんから」

「たつくんは、八(はち)さんが好きなんやろ?」

「ちゃんとゆうてみ。三(さん)」

「俺の答えも聞かせてよ」

「好きやで。八(はち)が…。でも、会われへんから。いつか、九(きゅう)が会ってくれるやろう」

「ほんで、八(はち)さんが九(きゅう)を好きなったらどうするん?それで、ええのん?許せんの?」

たつくんは、ポタポタと涙を流した。

「許すしかないやん。死ぬんやから」

「そんなんゆうなや。俺、九(きゅう)が、八(はち)さんと付きおうたら殴ってまうわ。俺には、嘘つかんでよ。たつくん、こんなに、こんなに、こんなに」

俺は、震える手で泣きながらたつくんの頬に手をあてる。

「三(さん)、ゆうてみ」

「こんなに、俺はたつくんを愛してるんやー。」

「三(さん)、声デカイから」

頭をワシワシ撫でられた。

「キスぐらいしたるで、それ以上できるかな?でも、やったるよ。おいで。三(さん)」

「好きやないのに、ええよ。」

「関係ないやん、死ぬんやから」

「好きな気持ちないのに、そんなんされて。たつくんが死んだら罪悪感しかないやんか」

出ていこうとする俺の手を握りしめてきた腕は、細いのにしっかりとした強さを感じる。

「三(さん)、行くな。何で呼んだかわかるか?相手しろや。一生のお願いやから、俺としろや」

「たつくん、一生のお願いは使うんずるいで。」

「三(さん)、八(はち)のかわりにはせんから。おいで」

そう言われて、キスをしてきた。

「三(さん)は、九(きゅう)と違ってちゃんと童貞やろ?」

「なんで、知ってるん?」

「ちゃんと見とったから…。ほんまに、17歳の時に、俺にファーストキスを事故やって言ってくれた時と同じかなーって。ずっと、したかったんやろ?」

「なんか、読んだん?」

「おかんが、読んでる漫画。ボーイズラブやった。三(さん)やったら、いややないよ。ほら、触(さわ)らせてみ」

「いやや、もういなくなるってわかって優しくされたない。」

ボロボロと涙が溢(あふ)れて止まらない。

「三(さん)にやったって、三(さん)が、童貞のままやん。俺の事、全身で覚えててや」

「なんで、意地悪するん?」

「誰かにちゃんと全部覚えてて、欲しいねん。怖くないんやったら、三(さん)にもしたるから。同じこと」

「怖いよ。」

「旅行行こか?」

「何、行ってんの?」

「近いうちに、返事してや。一泊二日でもええから、旅行いこう。近場で、ええから…。三(さん)に最大の意地悪したるわ」

頭をくしゃくしゃ撫でられた。

「惚れた弱みやで、我慢せな。三(さん)は、俺のゆうこと聞くねんで。俺を忘れられへん魔法かけたるからな。」

そう言ったたつくんは、俺にキスを何度も繰り返した。

熱を持った下半身を感じると嬉しそうに笑った。

たつくんの計画通りに全ては、進んだ。

「竹にいつか好きな人の話してや。俺も竹に秘密告白しとくから」

その秘密がいったいなんだったのか、俺は知らなかった。

もしも、竹君が知っていたら。

三(さん)、お前が若の寿命を削ったんやって殴られただろう。

九(きゅう)にも、おじさんにも殴られ続けるであろう事を俺はした。

たつくんが、望んだからとゆう理由でやった。

愛するたつくんを失って、心の空っぽは埋まるどころか、どんどん広がっていった。

行くしかないよな。誘ってくれたんやし…

俺は、重い腰をあげた。
しおりを挟む

処理中です...