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出会い

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16年前ー中学一年の終わり中学二年にあがる頃ー

「チー子、行こう」

僕は、チー子をもって散歩に連れて行く。

いつもの公園の近くにやってきた瞬間、突然チー子が走り出した。

「待って、チー子」

ブチン…。首輪が切れた。

えっ?あぁっっ!!

「チー子、待って、待って」

僕は、走り出した。

「はぁ、はぁ、はぁ」

「アハハ、可愛いね。どっから来たの?首輪がないよ」

一本の桜の木の下に、君がいた。

「ごめんね、チー子が」

「へー。チー子って言うんだ。富士丸よかったね」

【ワン、ワン】

その子に、一瞬で僕は心を奪われたんだ。

「ありがとう」

「いえ、いえ」

彼女は、ニコニコと笑った。

「首輪がないけど、大丈夫?」

「あっ、切れちゃって」

「ほんとだ。どうするの?」

「抱っこして帰ります」

「そっか」

まだ、生後8か月のチー子は、抱っこして帰れるぐらいの重さだった。

「君の犬?」

「そう、富士丸って言うの」

「よろしくね、富士丸」

僕は、富士丸を撫でた。

「富士丸は、チー子を気に入ったみたいだよ」

二匹は、並んで尻尾を振っていた。

「ほんとだ。」

「君の名前は?」

「僕は、沢村一季(さわむらいちき)です。君は?」

「相原夢子(あいはらゆめこ)です。」

「何歳?僕は、14歳」

「私は、11歳だよ」

「よろしくね」

「よろしく」

3つ下の彼女と僕は、この日をきっかけに仲良くなった。

チー子を連れて、家に帰ってきた。

「母さん、大和は?」

「テレビ見てるでしょ?」

「チー子の首輪が切れた」

僕は、母さんにチー子の首輪を渡した。

「大和の悪戯ね。家にいれておいて。明日、首輪買ってくるから」

「よろしく」

大和が、二階から降りてきた。

「何の騒ぎ?」

「大和、お前チー子の首輪切れるように細工したやろー」 

「まぁ、まぁ、怒ったあかんよ。優しいしたらーな。あかんよ」

「どこの言葉?」

「また、好きな子かわったの?」

「そげんな事いいなさんな」

大和は、好きな子が使う言葉や好きな子が好きな俳優さんやドラマの言葉を真似る。

「6歳で、何回好きな子かえるんだ」

「うっさい、馬鹿、あにぃ」

「しかも、そのよくわからない言葉はどこから…」

「誰だったっけ?イケメン俳優さんが好きだって。その人が、今までした役の言葉」

「母さん、みなまでいいなさんな」

「誰だよ」

僕は、呆れた顔で冷蔵庫からお茶をとる。

「兄(あに)じゃが悪いんじゃ。チー子に引っ張られんから」

「それは、チー子が、僕を飼い主って思ってるんだろ?」

「それが、ムカつくんや。僕かて飼い主や」

「あほ」

母さんが、大和の頭を叩いた。

「婆ちゃんが、亡くなる前に飼ってくれたのに、チー子が死んだらどうするんよ」


「わぁー。ごめんなさい、ごめんなさい」

大和は、泣き出した。

「もう、絶対したら駄目よ」

「わかっちゅう、わかっちゅうから許して」

「普通にしなさい」

「嫌なこった」

アッカンベーをして、二階に駆け上がった。

「あれは、反省してないな。」

母さんは、そう言ってキッチンに行った。

「はあ」

僕も、ため息をついて部屋に上がる。

相原夢子ちゃん、可愛かったなー。

フリフリのワンピースに、耳より高い位置で、二つにくくられた髪の毛。

可愛かったなぁー。

可愛かったなぁー。

「いっちゃん、ご飯よ」

「はい、はーい」

僕は、下に降りた。

「唐揚げじゃ、唐揚げじゃ」

「ご機嫌だな。大和」

「兄じゃ、われを許せ」

「嫌だね」

「兄じゃー」

「はいはい」

.
.
.
.
.

「いっちゃん、降りてきてー」

「はーい」

僕は、パソコンを切った。



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