不思議な桜が繋いだ縁【仮】

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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霊魂うつし

すれ違い

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「宝珠悪いことは、言わない、やめなさい。」

糸埜さんは、三日月さんの手を握りしめる。

「私は、冴草さんの望みを叶えたいのです。」

「彼は、信用出来る幽体なのですか?」

私は、なぜこんな言葉が口から出てしまったのかわからない。

ただ、私は、三日月さんに生きて欲しかった。

「三日月さん、冴草さんは言う事がころころ変わります。信用できないですよ。」

「ころころかわるなら、冴草さんは戻ってこないではないですか」

私は、三日月さんの怒りにれてしまった。

「私の、私の、私の愛する幽体に何て事を言うのだ。」

その目は、今までで一番怒りに満ちていた。

「そんな、嘘つきの幽体を身体にうつせば、上條陸も無傷ではすまぬのだぞ。」

「そうです。二人ともに何かあったらどうするのですか?」

「生きてる人間が一番大事なのだよ。宝珠」

「冴草さんは、嘘をついていなくなるでしょ?生きたいって泣いていたじゃないですか」

「やめろ、こんな事はするな。宝珠」

糸埜さんが、掴んだ腕を振り払った。

「お前達は、私の、私の、愛する幽体を侮辱するのかーー。」

「宝珠に、生きていて欲しいのだ。」

「三日月さんに生きて欲しいんです。」

「ふざけるな!私の命など初めからないようなものではないか、今になって生きていて欲しいだと…。生ぬるい言葉を二度と話すな。お前達と話す事などもうない」

三日月さんは、怒りに任せて出て行ってしまった。

「三日月さん」

バシンと閉じた襖を見つめてる事しか出来なかった。

「ぁあああぁ」

「大丈夫ですか?宮部さん」

「わた、私、酷いことを言いました。」

身体の奥から込み上げてくる涙をとめる事が出来なかった。

「宮部さん、まさか宝珠を?」

「何でしょうか?」

「いえ、何もありません。」

糸埜さんは、私にハンカチを渡してくれた。

「すみません。私、三日月さんにとても酷いことを言いました。三日月さんは、あれ程までに幽体を愛しているのに傷つけてしまいました。どうすれば、許していただけますか?」

「わかりません。しかし、まだビジョンが残っています。宝珠は、仕事はきっちりとこなします。なので、明日もきちんとここに来ます。」

そう言って、糸埜さんはポケットから手帳を取り出した。

「明日は、荻野美花おぎのみかさんです。」

「そうですか、わかりました。」

「宮部さん、大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。糸埜さん。」

「大丈夫には、見えませんよ。そんなに、泣いて」

そう言って、私の涙を優しくハンカチで拭ってくれる姿が三日月さんと重なる。

余計に、涙がこぼれ落ちる。

「私、三日月さんの痛みや苦しみや悲しみをわかったつもりでいました。たった、5日で何がわかるのでしょうね。」

「わかりますよ。」

「そうでしょうか?」

「はい。だって、宮部さんは色濃い時間を過ごし、私達の気持ちが宮部さんの身体に流れる。だから、わかっているつもりではなく。わかっているのですよ。宮部さん」

「糸埜さん、私。三日月さんに、生きて欲しいだけなんです。三日月さんをただの鍵になどしたくないのです。」

「わかっていますよ。私達、三日月のもので何とかします。だから、宮部さんは宝珠のお手伝いを最後まで宜しくお願い致します。」

糸埜さんは、私に頭を下げた。

「勿論です。最後まで、お手伝いをさせていただきます。」

「では、送りますよ。宮部さん」

「すみません」

私は、糸埜さんに送ってもらう為に神社を出た。

三日月さんの車は、もうなかった。

「あれぐらいで、宝珠は宮部さんを嫌いになどなりませんよ」

「嫌われるのが、怖いのでしょうか?私」

「さあ?どうでしょうかね」

糸埜さんは、そう言って後部座席を開けてくれた。

私は、車に乗り込んだ。

「宝珠は、人間と関わるのが苦手なところがあります。だから、宮部さんに酷いことを言ってしまいましてすみませんでした。」

「いえ」

糸埜さんは、私を送ってくれた。

「では、明日もお待ちしております。」

「はい、9時でしたね」

「はい、では失礼します。」

糸埜さんが、帰って行くのをジッと見つめていた。

三日月さんを助けたいだけだった。

私は、あんな言葉をぶつけるつもりじゃなかった。

私は、泣きながら家に入った。
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