不思議な桜が繋いだ縁【仮】

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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霊魂うつし

化け物の血

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その為に、必要な物が化け物の血だ。

だから、私は喜与恵の血を飲み干しにきたのだ。

【喜与恵、持っていけ】

「はい」

喜与恵は、私の前に持ってきた。

「宝珠」

糸埜は、泣いている。

「毒を食らえば皿までですよ。覚悟は出来ておりますか?」

「あぁ、大丈夫」

『三日月先生、やめて』

「気にするな。初めから、私などないに等しいのだから」

冴草健斗は、泣いている。

「宝珠、あなたがこれを飲み干すと言うことは、人ではなくなります。宮部さんとの恋愛は、二度と出来ませんよ」

「構わない」

『三日月先生、やめてよ。やめて。お願いだから』

「冴草健斗、あなたに止める権利はありません。」

喜与恵の言葉に、冴草健斗は黙って泣いていた。

「まずは、その痣から消しましょう」

「お願いします」

喜与恵は、私の胸に手を当てた。

「ぁぁあっっ」

丸く痣をナイフで切り取られた痛みが走った。

喜与恵は、それを握り潰した。

「後悔しても、後の祭りです。やめるなら、今しかありません。最後のチャンスです。どうしますか?」

「喜与恵、喜与恵と同じ道へきます。」

喜与恵は、涙を流している。

「私は、宝珠を一生愛し続けますよ。どんな姿になろうとも…」

さっきより、強固な鎖が右足と右手についた。

ガチャン、ガチャン…

喜与恵は、両方の手首にかかった。

ガチャン、ガチャン…

【契約は、もう破れぬぞ。宝珠】

「はい、わかっております。」

「もう、時間です。」

そう言うと喜与恵が目の前で親指を切った。

あの方の墨をこぼしたような黒き血に、喜与恵の濃いトマトジュースのような親指の血を注いでいく。

ポタリ、ポタリと血が落ちては消えていく。

300mlは、入りそうなグラスにそれは注がれていく。

「このもの器となりし化け物になりけり」

書物の言葉を喜与恵が、唱えていく。

「このもの器となりし、化け物なりけり。人を捨てさり、魂の世界を救うものとなりけり、二度と戻らぬ体なり、人を愛す事二度と出来ぬ運命さだめ、三日月宝珠。黒き運命さだめにこのめいを散らし死にくもの。我が為に生きる器となり、死にくもの。」

何度も唱えながら、喜与恵の血が注がれ続ける。

【三日月宝珠、己に拒否は二度と出来ぬ。しきものからの交わりも、罪深きめいからの救いも、己は全て受け取る器なり】

喜与恵が、私の為に泣いている。

震えながら、飲み物を差し出した。

糸埜も、冴草健斗も、私を見つめながら泣いている。

喜与恵は、飲むのをやめさせたいように手をグラスから離さない。

きっと、あいつに対しての拒否権も持てなくなるのをわかっているからだと思う。

私は、鍵として産まれ落ちただけだ。

だから、大丈夫だよ。

私は、喜与恵に微笑んだ。

【三日月宝珠、我に誓え】

わたくしは、全ての魂の為の器となり、このめいを終える事を約束します。全ての魂を受け入れ愛し癒し、このめいを終える事を約束します。最後は、鍵となり封印し散りく事を約束します。私は、貴方の代わりに魂の器になる為に人を捨て去る事を誓います。」

【ならば、喰らえ。己の中に、その血を全て飲み干すのだ。】

そう言って私は、喜与恵からグラスを取った。


「やめて下さい、宝珠」

「やめろ、宝珠」

『三日月先生、やめてくれ』

喜与恵や、糸埜が、グラスを取り上げるより先に私は、それを飲み干した。

ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ」

喜与恵が、崩壊した。

「バカ野郎、バカ野郎、バカ野郎。」

糸埜も、また壊れた。

『三日月先生、その色ヤバいよ』

ドクン…

駆け巡る黒き血に、身体中が一瞬黒に染め上げられた。

「ぅゎぁあぁあああああああ」

痛みで、のたうち回る。

二条さんが、死んだ時のような痛みが走った。

「ゴホッ、ゲホッ」

口から、血が出て止まらない。

死ぬのか?

私は、死ぬのか?

    
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