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化け物に戻るまで、残り…
8時間…
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三日月さんは、何も聞かない。
「この、お刺身美味しいよ」
「ほんと」
「うん」
その優しさが、好き。
三日月さんに、占ってもらった人も幽体も皆そうだったんだろう。
「宝珠」
「どうした?」
「聞いて欲しい話がある」
「うん」
「ゆっくりしか、話せないけど。いいかな?」
「構わないよ」
あの日を、話そうとしたら涙が流れてくる。
「ごめんなさい」
「大丈夫、ゆっくりでいいから」
三日月さんは、私の頬を撫でてくれる。
私は、もう一度ワインを飲んだ。
「私ね」
三日月さんは、私を見つめて黙ってる。
「27歳の時に同棲してたんです。」
「うん」
「彼はね、どうやら結婚前提って認識だったみたいだけど…。私は、違った。ただ、一緒に住んでみようと思っただけで…。彼も同じだと思ってた。25歳から付き合ってたから…。」
私の手を三日月さんが握ってくれる。
思い出すと涙がポロポロこぼれ落ちる。
「彼とは、順調そのもので!同棲から二年目には、お互いの両親にも会ったの…。母さんも父さんも希海と一緒になるの喜んでるよって言われてね。私は、結婚も子供も考えてないよって言ってしまったの。そしたら、冗談いってるだけだろ?って言われたから、違うよって答えたの」
涙が溢(あふ)れてくる。
「本気なの?って、聞かれたから頷いた。そしたら、結婚も子供もいらないって何?って睨み付けられた。私は、同じ気持ちだと思ったって話した。だったら、これはシェアハウスなのか?って言われた。結婚前提だって思ってたから、彼は私と寝室を別にしていたって私は彼は私と同じ人間だから寝室を別にしているのだと思っていた。」
三日月さんは、何も言わずに涙を小さく畳んだティシュで拭ってくれる。
ここからの事を話すのは、本当に怖くて震える。
「宝珠、汚(きたな)いって思わないでくれる?」
「うん、思わないよ」
「私を責めないでくれる?」
「責めないよ」
そう言ってくれる。
私は、ワインをもう一度飲んで話す。
「彼がね、私にこう言ったの。子供が出来たら希海の気持ちも変わるって、いらないって言ってるでしょ!大きな声をあげた私の手をひいて私の部屋で私を押し倒して、無理やりした。もうそこにいつもの優しい彼は、いなかった。避妊も優しい愛撫もない。ただの、子作りをおこなう道具のように感じた。いれて出されておしまい。下らなくて笑えた。彼は、私の顔も見ずに出ていった。」
手の震えを感じて、三日月さんが握ってくれる。
「興味がないものを作られる恐怖で、だけどピルを飲んでたから大丈夫だと思っていた。」
涙が頬を流れていく。
「それは、毎晩続く地獄だった。妊娠したら、結婚したくなる。彼の安易な考えは、私を苦しめた。行為が終われば、部屋を出る。パタンと閉じた扉を泣きながら見つめた。同じだと思っていた彼は、もう違う存在だった。そこに、気持ちよさはなかったし、沸き上がってくる吐き気を止めるのに必死だった。」
三日月さんは、涙を優しく拭ってくれて、泣いてくれてる。
男の人に触(ふ)れられて、怖くないと思ったのは、あれからは三日月さんが初めてだった。
「彼の体液が、体の中に広がる感覚が、気持ち悪かった。それに気づいたのかな?彼は、生理の時も私とするようになった。今までなら、そんな時は大丈夫希海。痛くないって擦ってくれてたのに…。
私は、生理の日は彼のを咥えさせられて口の中に出された。一週間毎日。飲めないと首を横に振ったら口を押さえられた。無理やり飲み込むしかなかった。吐き気がした。拭っても取れない汚(よご)れを感じた。あの襲われた日から、彼に対して恐怖心しかなかった。それでも、彼を傷つけたのは自分だってわかってるから…。我慢した。それに、彼をまだ好きな自分も少なからず残っていたから…」
三日月さんの手が私の手を握りしめた。
優しい
三日月さん、優しい。
だから、全て話したい。
「この、お刺身美味しいよ」
「ほんと」
「うん」
その優しさが、好き。
三日月さんに、占ってもらった人も幽体も皆そうだったんだろう。
「宝珠」
「どうした?」
「聞いて欲しい話がある」
「うん」
「ゆっくりしか、話せないけど。いいかな?」
「構わないよ」
あの日を、話そうとしたら涙が流れてくる。
「ごめんなさい」
「大丈夫、ゆっくりでいいから」
三日月さんは、私の頬を撫でてくれる。
私は、もう一度ワインを飲んだ。
「私ね」
三日月さんは、私を見つめて黙ってる。
「27歳の時に同棲してたんです。」
「うん」
「彼はね、どうやら結婚前提って認識だったみたいだけど…。私は、違った。ただ、一緒に住んでみようと思っただけで…。彼も同じだと思ってた。25歳から付き合ってたから…。」
私の手を三日月さんが握ってくれる。
思い出すと涙がポロポロこぼれ落ちる。
「彼とは、順調そのもので!同棲から二年目には、お互いの両親にも会ったの…。母さんも父さんも希海と一緒になるの喜んでるよって言われてね。私は、結婚も子供も考えてないよって言ってしまったの。そしたら、冗談いってるだけだろ?って言われたから、違うよって答えたの」
涙が溢(あふ)れてくる。
「本気なの?って、聞かれたから頷いた。そしたら、結婚も子供もいらないって何?って睨み付けられた。私は、同じ気持ちだと思ったって話した。だったら、これはシェアハウスなのか?って言われた。結婚前提だって思ってたから、彼は私と寝室を別にしていたって私は彼は私と同じ人間だから寝室を別にしているのだと思っていた。」
三日月さんは、何も言わずに涙を小さく畳んだティシュで拭ってくれる。
ここからの事を話すのは、本当に怖くて震える。
「宝珠、汚(きたな)いって思わないでくれる?」
「うん、思わないよ」
「私を責めないでくれる?」
「責めないよ」
そう言ってくれる。
私は、ワインをもう一度飲んで話す。
「彼がね、私にこう言ったの。子供が出来たら希海の気持ちも変わるって、いらないって言ってるでしょ!大きな声をあげた私の手をひいて私の部屋で私を押し倒して、無理やりした。もうそこにいつもの優しい彼は、いなかった。避妊も優しい愛撫もない。ただの、子作りをおこなう道具のように感じた。いれて出されておしまい。下らなくて笑えた。彼は、私の顔も見ずに出ていった。」
手の震えを感じて、三日月さんが握ってくれる。
「興味がないものを作られる恐怖で、だけどピルを飲んでたから大丈夫だと思っていた。」
涙が頬を流れていく。
「それは、毎晩続く地獄だった。妊娠したら、結婚したくなる。彼の安易な考えは、私を苦しめた。行為が終われば、部屋を出る。パタンと閉じた扉を泣きながら見つめた。同じだと思っていた彼は、もう違う存在だった。そこに、気持ちよさはなかったし、沸き上がってくる吐き気を止めるのに必死だった。」
三日月さんは、涙を優しく拭ってくれて、泣いてくれてる。
男の人に触(ふ)れられて、怖くないと思ったのは、あれからは三日月さんが初めてだった。
「彼の体液が、体の中に広がる感覚が、気持ち悪かった。それに気づいたのかな?彼は、生理の時も私とするようになった。今までなら、そんな時は大丈夫希海。痛くないって擦ってくれてたのに…。
私は、生理の日は彼のを咥えさせられて口の中に出された。一週間毎日。飲めないと首を横に振ったら口を押さえられた。無理やり飲み込むしかなかった。吐き気がした。拭っても取れない汚(よご)れを感じた。あの襲われた日から、彼に対して恐怖心しかなかった。それでも、彼を傷つけたのは自分だってわかってるから…。我慢した。それに、彼をまだ好きな自分も少なからず残っていたから…」
三日月さんの手が私の手を握りしめた。
優しい
三日月さん、優しい。
だから、全て話したい。
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