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【それが、運命(さだめ)ならば…。】
【それが、運命ならば…】⑨
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家に帰り、部屋で暫く休んだ十季。
身体中が、痛くて目が覚める。
さっきの出来事は、夢ではなかったのを強く実感した。
夜ご飯を食べ終わると十季は、家を抜け出た。
痛む身体を引きずりながら、夜の学校に忍び込んだのだ。
「愛斗(まなと)」
『十季(じゅうき)』
暗闇で、愛斗をきちんと見つけられた。
「大丈夫だった?寂しくなかった?」
『十季、大丈夫だよ。でも、寂しかった』
「ごめんね、待たせてしまって」
十季は、愛斗の髪を撫でる。
『十季、ありがとう』
愛斗は、十季を優しく抱き締める。
冷たい気がしていた身体の奥底に温もりをあるのを十季は、感じていた。
「キスしていい?」
『うん』
十季は、愛斗にキスをする。
思ったより柔らかくて、思ったより気持ちよくて、ビックリした。
『もっと先に進んでもいいよ』
愛斗に、そう言われて十季は無我夢中で愛斗を抱いた。
今誰かに見られたら、一人で変な事をしていると思われるだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ」
『十季、嬉しい』
パリン…………。
「何?」
『十季』
愛斗とその木を繋いでいた鎖が切れたようだった。
「自由になれたんだね」
『十季、ありがとう』
ギュッーと抱き締められる。
「よかった。本当に、よかった」
十季の目から、涙がボトボトと流れていく。
『これから、僕は十季の為に生きるから…。こんなに、愛されて幸せだと思えた。ありがとう、十季』
「愛斗、僕も…。ずっと、愛斗を愛してるから」
もう一度、唇を重ね合う二人…。
『十季、許すためにもう一度見せて欲しい』
「わかった」
そう言われて、さっき椎名先生から見せられた。
ビジョンを十季は、愛斗に送る。
ドクン………。
.
.
.
.
.
「笹岡君が、好きなの」
「ごめんなさい」
いつだって、皆、愛斗を選んだ。
選ばれるのは、俺じゃなかった。
愛斗と俺は、家から学校が遠くて自転車通学していた。
「帰ろうか?しーちゃん」
「うん」
自転車で、並んで帰る。
「あのさ、愛斗は好きな人いるの?」
「う、うん。叶わない人だけど、いるよ!」
「へー、そっか。うまくいくといいな」
「無理だよ」
「気持ち言えばいいじゃん。そしたら、選ばれるかもよ。愛斗だったら」
「そんなわけないよ。じゃあね!また、明日」
「うん」
愛斗と俺の家は、近かった。
むしゃくしゃした俺は、愛斗の自転車のブレーキを壊した。
どっかのタイミングで、怪我でもしちゃえばいいんだよ。愛斗。
次の日、愛斗が事故にあったのを知った。
そして、死んだ。
俺のせいじゃない。俺のせいじゃない。
愛斗が悪いんだ。
愛斗が…。
「笹岡って、椎名が好きだったんだろ?」
「はっ?」
「僕、笹岡が好きだったから気づいてたんだよ。笹岡は、椎名が好きだって」
卒業式に滝森に突然言われた言葉だった。
気持ち悪くて吐き気と眩暈がした。愛斗、死んでくれてマジでよかったわ!生きてたら、俺を愛してたんだろう?マジで、気持ち悪いよ。
俺は、愛斗を忘れて大人になった。そして、松村さんを手に入れた。
「笹岡君は、奏汰(そうた)が好きだったんだよ。私、知ってる。」
「気持ち悪いよな」
「そうだね。気持ち悪い」
やっぱり、愛斗。死んでくれてよかったよ。
ドクン………。
「愛斗」
『十季、ありがとう』
十季は、愛斗をきつく抱き締める。
「気持ち悪くないよ!愛斗は、綺麗だよ」
『ありがとう』
「許せるの?」
『父に、自転車の点検を必ず毎朝するように言われていたんだ。あの日は、遅刻しそうでね。僕は、点検を怠ってしまったんだ。だから、しーちゃんだけのせいじゃない。あの日、点検を怠ってしまった僕のミスでもあるんだよ』
「愛斗は、優しいね」
『優しくなんかないよ。十季に出会わなければ、どす黒い闇に引きずり込まれてたよ。』
愛斗の手が、僕の頬に触(ふ)れる。
本当は、真実なんて知りたくなかったんだと思う。
身体中が、痛くて目が覚める。
さっきの出来事は、夢ではなかったのを強く実感した。
夜ご飯を食べ終わると十季は、家を抜け出た。
痛む身体を引きずりながら、夜の学校に忍び込んだのだ。
「愛斗(まなと)」
『十季(じゅうき)』
暗闇で、愛斗をきちんと見つけられた。
「大丈夫だった?寂しくなかった?」
『十季、大丈夫だよ。でも、寂しかった』
「ごめんね、待たせてしまって」
十季は、愛斗の髪を撫でる。
『十季、ありがとう』
愛斗は、十季を優しく抱き締める。
冷たい気がしていた身体の奥底に温もりをあるのを十季は、感じていた。
「キスしていい?」
『うん』
十季は、愛斗にキスをする。
思ったより柔らかくて、思ったより気持ちよくて、ビックリした。
『もっと先に進んでもいいよ』
愛斗に、そう言われて十季は無我夢中で愛斗を抱いた。
今誰かに見られたら、一人で変な事をしていると思われるだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ」
『十季、嬉しい』
パリン…………。
「何?」
『十季』
愛斗とその木を繋いでいた鎖が切れたようだった。
「自由になれたんだね」
『十季、ありがとう』
ギュッーと抱き締められる。
「よかった。本当に、よかった」
十季の目から、涙がボトボトと流れていく。
『これから、僕は十季の為に生きるから…。こんなに、愛されて幸せだと思えた。ありがとう、十季』
「愛斗、僕も…。ずっと、愛斗を愛してるから」
もう一度、唇を重ね合う二人…。
『十季、許すためにもう一度見せて欲しい』
「わかった」
そう言われて、さっき椎名先生から見せられた。
ビジョンを十季は、愛斗に送る。
ドクン………。
.
.
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「笹岡君が、好きなの」
「ごめんなさい」
いつだって、皆、愛斗を選んだ。
選ばれるのは、俺じゃなかった。
愛斗と俺は、家から学校が遠くて自転車通学していた。
「帰ろうか?しーちゃん」
「うん」
自転車で、並んで帰る。
「あのさ、愛斗は好きな人いるの?」
「う、うん。叶わない人だけど、いるよ!」
「へー、そっか。うまくいくといいな」
「無理だよ」
「気持ち言えばいいじゃん。そしたら、選ばれるかもよ。愛斗だったら」
「そんなわけないよ。じゃあね!また、明日」
「うん」
愛斗と俺の家は、近かった。
むしゃくしゃした俺は、愛斗の自転車のブレーキを壊した。
どっかのタイミングで、怪我でもしちゃえばいいんだよ。愛斗。
次の日、愛斗が事故にあったのを知った。
そして、死んだ。
俺のせいじゃない。俺のせいじゃない。
愛斗が悪いんだ。
愛斗が…。
「笹岡って、椎名が好きだったんだろ?」
「はっ?」
「僕、笹岡が好きだったから気づいてたんだよ。笹岡は、椎名が好きだって」
卒業式に滝森に突然言われた言葉だった。
気持ち悪くて吐き気と眩暈がした。愛斗、死んでくれてマジでよかったわ!生きてたら、俺を愛してたんだろう?マジで、気持ち悪いよ。
俺は、愛斗を忘れて大人になった。そして、松村さんを手に入れた。
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「気持ち悪いよな」
「そうだね。気持ち悪い」
やっぱり、愛斗。死んでくれてよかったよ。
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『ありがとう』
「許せるの?」
『父に、自転車の点検を必ず毎朝するように言われていたんだ。あの日は、遅刻しそうでね。僕は、点検を怠ってしまったんだ。だから、しーちゃんだけのせいじゃない。あの日、点検を怠ってしまった僕のミスでもあるんだよ』
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愛斗の手が、僕の頬に触(ふ)れる。
本当は、真実なんて知りたくなかったんだと思う。
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