彩られる作品【仮】

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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シークレット作品①

【欠けたピースは戻らない】④

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「トッシー、飲んでるの?」

「うん、ごめん。」

立ち上がって昌也に水を渡す俊之。

「何か思い出してたの?」

俊之の涙を昌也は、優しく拭っている。

「あいつと喧嘩して、家を出た日を思い出してた」

「トッシーが、酷く傷ついた日だね。」

昌也は、俊之の頭を撫でる。

「自分ばっかりだった。」

「そうだね」

「あいつは、自分が、そこから逃げる事ばっかりだった。確かに、あいつは色々一人で頑張ってたよ!だから、何だよって話なんだよ。優しくなかったって言うけどさ!俺は、あいつの言葉の端々に棘があるのを知ってたよ」

「確かに、そうだよね。離婚って、片方だけが悪いわけじゃないんだよ。昔、働いてた先輩は父親からDVを受けていたから母親が離婚したって言ってた。でも、父親が毎日母親の毒のある言葉に傷ついていってるのを幼いながらに見ていたって話していた。それ聞いた時に、そうやって知らないうちに誰かを追い詰めていくんだなって思ったよ」

「確かに、そうだな」

「全ての人に当てはまるわけじゃない。片寄ってるって言われればそれまでだよ!だけど、少なくとも俺達は、離婚のせいで傷ついただろ?」

「そうだな」

「俺も、父親大好きだったんだよね。あいつに、酒癖、女癖悪い男だったって言われてさ!不倫してたって言われてさ!それとさ、先輩からエッチな本借りて自慰行為しようとしてたんだよ。部屋でさ。そん時に、あいつやってきてさ。お前は、親父と一緒なのかって汚(けが)らわしいって…。身体中にミミズ腫出来る程、針金のハンガーで殴られたわ。わけわかんねーよな。エッチに嫌悪感持つのは、いいけどさ。テメーだけにしろよって話だろ?」

「で、最終的に男出来たって話だろ?」

「そうだよ。今までのは、何だったんだってぐらい。あいつ、次から次に男と遊びまくってさ!とにかく、男に飢えまくってたわ。で、俺は逆。性に対して嫌悪感もって…。だから、女は無理。だから、トッシーっといるんだけどね」

「俺も、女は無理だわ。だから、昌也と付き合えて本当に幸せだよ」

昌也と俊之は、キスをする。

一人っ子である事と両親が他界した二人にとって、二人で生きて行く事がとても重要な事だった。

「生きていたら払拭出来るかもしれないけどさ。俺等みたいに死んでたら無理だからさ。」

「憶測で、昔、両親は君を愛してたって言われた事あったわ。あいつ亡くなってすぐに…。何いうてるん、こいつってなったわ」

「本当やね。愛してたって言われてもな!愛なんか微塵も感じんかったよな」

「本間に、それな!だから、俺。絶対に大人になっても、子供なんかいらんって思ってたわ」

「俺も同じ」

俊之が、ビールを飲む手を昌也は止める。

キスを何度も繰り返す。

俊之は、昌也の髪を撫でる。

見つめる昌也

「愛してる、トッシー」

「俺もだよ。昌也」

愛が何かと聞かれれば、答えられない二人。

それでも、昌也といると満たされる俊之。

昌也もまた俊之といると幸せでいれるのだ。

それだけで、充分だと思える。

両親がくれた愛をなぞりがきする事は、絶対にしたくなかった二人

許したくても、両親を許せないでいる。

許せば楽になる。

手放してしまいなさい。

そう、言われた事があったけれど…。

どちらも、出来ずにいた。

しがみついてるつもりはない。

でも、ふとした時に過るのだ。

あの時の両親の決断がなければ、自分はもっと真っ直ぐに誰かと向き合えたのではないかと…。

いい大人が、親のせいにするなと言われればそれまでだ。

小さな頃に、親がつくった欠けた部分を大人になって補うなど不可能なのだ。

その欠けを補強する術をもたぬまま成長していった。

欠けは、大人になる程に広がっていった。

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