彩られる作品【仮】

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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シークレット作品①

【欠けたピースは戻らない】⑥

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昌也は、ビールを飲みながらスマホを見つめていた。

最近、母親が読んでいた不倫漫画をスマホで読む事が出来るようになっていた。

俺に敵意を剥き出しに汚(きたな)いものだと罵ったあの女は、何処かの男の不倫相手だったのだろう。

夜な夜なこれを読んでいたのを知っている。

最終的に、不倫を純愛にして終わらす辺りが、漫画だなと思っていた。

不倫は、不倫なのに…。

それを、純愛で終わらすなんてどうかしてる。

【あの人は、私を物のように扱った。】

だから、何なのだと昌也は思った。

男の映写は、ほとんどなく女目線だからどう見たってクズでしかないのだ。

【お母さんは、頑張っているのに、お父さんは最低な人間だ】

子供が、より父親をクズだと増長する。

はあー。

これは、誰目線で書かれているのだろうか?

もし、母親がこの息子と俺とを重ね合わせていたのなら…。

それは、あり得ないと昌也は思った。

自分にとって父親は、優しい存在だった。確かに、母親に甘えている所はあったけれど…。

それでも、あの日が来るまでは仲がいい二人だと思い込んでいた。

最近は、不倫は悪だという一方でドラマや漫画では正義だと取り扱う。

昌也は、それが大嫌いだった。

両親の不倫や離婚で苦しんでいる人間がいる。

こんなにも苦しんで前に進めない人間がいるとわかって書いてくれる人はいないのだろうかと思う。

だから、昌也は、TVや漫画をあまり読まなくなった。

不倫や略奪、そんなのばかりを見せられても自分の心が傷つくだけだった。

「寝てたわ」

闇に体を引っ張られそうになった昌也を助けたのは俊之だった。

「知ってる」

「疲れたまってたんかも」

「そうだろうね」

「ビールまだ飲む?」

「うん、その前に水飲む」

「はい」

昌也は、水を差し出した。

ゴクッ、ゴクッと喉を鳴らして俊之は水を飲んだ。

「それ、不倫漫画?」

「うん、母親が見てたやつ」

「見せて」

昌也は、俊之にそれを見せた。

「俺のあいつが見てたようなのと似てるわ」

そう言って、俊之は昌也にスマホを渡す。

「トッシーのお母さんも見てたんだね」

「お母さんなんて言うなよ!あいつでいい。」

「結婚した人は、こういうのが好きなのかな?」

「さあな!好きなんじゃない。しかも、若い男な!」

俊之は、昌也のスマホの漫画の絵を指差した。

「不倫を純愛にすんじゃねーよ」

「本当だよな!」

「不倫は、不倫だよ」

「そうだよな!わかるよ。昌也の気持ち」

俊之は、昌也の事を抱き締める。

「最近は、二択だって!世の中」

「肯定派と否定派がいるんだよな!否定派のお陰で、そういうドラマが夜中だったり、ネットドラマにいってるって話だろ?」

「その、お陰で助かってるよ!見たくないから」

「昌也、俺もわかるよ。」

「これを純愛に何で描(えが)くのかな?それを、わかるわかる。旦那が悪いってさ。こんなに子供が物分かりいいなんてありえるか?普通は、クズであっても親父が好きだよ。」

昌也は、そう言ってスマホをテーブルに投げる。

ビールを飲む昌也を俊之は、後ろから抱き締める。

「トッシー」

「昌也、大丈夫だよ。俺には、その気持ちわかるから…。不倫を正義みたいに描(か)いてる物語は、俺も嫌いだよ。子供がいないなら、好きにすればいい。だけど、子供を産んだ人間が不倫するのは違うと思うんだ」

昌也は、俊之の顔を覗き込んだ。

「トッシー、俺。後、どれだけ苦しめられるのかな?もう、忘れたいよ。あんな奴の事、忘れたいよ」

「わかってるよ、昌也」

俊之は、昌也の頭を優しく撫でる。

不倫しても、また返り咲いた俳優さん、不倫を題材にしながらヒットした映画やドラマや漫画。

世の中で、不倫は許されているのだ。

悪だと叩くのは、少数派なのだろうか…。

「トッシー、何であの人が見てる漫画なんかみちゃうかな?」

「これって、もうすぐドラマになるやつだから、ランキングに上がってきたんじゃないのか?」

「そうなの?」

「ほら、これ」

俊之は、昌也に検索して見せる。

「本当だ!これ、好きな奴いっぱいいるんだな!狂ってんね」

昌也は、その画面を見ながら嫌みな笑みを浮かべた。

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