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シークレット作品②
【温度】⑧
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一輝は、暫くソファーでボッーとした後で、服を着替えていた。
花香に、早く会いたいと思った。
桜に向けられる気持ちが悪い好意より、花香が向けてくれた同じ温度が心地よかった。
家を出る。
barの前まで歩いてくると、淡いグリーンのワンピースを着た花香が立っていた。
「待たせちゃった?」
「いえ、大丈夫。家にいたくなかったから…。」
「そっか」
一輝は、花香の手を握ってしまった。
「慣れなきゃと思って」
一輝の言葉に、花香も手を握り返した。
「慣れなきゃダメだよね」
「じゃあ、服買いに行こう」
「うん」
ただ、手を繋ぐだけ。指を絡ませたりなどはしない。
それだけなのに、花香と一輝は気持ち悪さが拭えていく。
「ここだったら、安いかな」
服屋さんに入る。
「淡いパステルの服が多い?」
「うん」
「だったら、黒とかは着る?」
「あんまり、着ない」
「じゃあ、黒系にしようか?」
「うん、一輝さんは?」
「俺は、逆パステルカラーとかは着ないな。今日だって、紺色だし!」
「じゃあ、パステルにします?」
「うん、そうだね」
花香と一輝は、それぞれをコーディネートした。
帽子と伊達メガネをつけた。
「ありがとうございました。」
二人で、店を出た。
「何食べたい?花香さん」
「あっ、名前でバレるよね?」
「何て呼べばいい?」
「小さな頃は、はーちゃんって呼ばれてたよ。」
「じゃあ、はーちゃんにする」
「一輝さんは?」
「俺はね!小さな頃、いっくんって呼ばれてた。」
「じゃあ、いっくんにする。」
「はーちゃん、何食べたい?」
「うーんとね。パスタ食べたい」
「そっか、パスタか!」
一輝といる方が、楽しい。
孝輔といるより、楽しい。
花香は、ニコニコ笑う。
一輝も、桜の笑顔より花香の笑顔を見る方が安心した。
「ここで、食べようか?」
「うん」
繋いだ手の温もりは、同じ温度だった。
熱くもなく、冷たくもない。
心地よくて、ずっと浸かっていたい。
「これ下さい」
「同じの下さい」
「かしこまりました。」
たらこパスタを二人で頼んだ。
「桜はね、たらこの粒々が見るのも嫌だって言ってね。外でしか食べれないんだ。」
「私も!孝輔は、味も見るのも嫌いだって言ってね。絶対に食べさせてくれないの」
「はーちゃんが、同じの頼んでビックリしたよ」
「私も、いっくんが同じの好きでよかった」
花香と一輝は、昨日の悲しみを拭えた。
「お待たせしました。」
たらこパスタとサラダがやって来た。
「いただきます。」
一緒に食べる。
一輝は、花香と結婚していたら幸せだったのじゃないかと思った。
花香も、一輝と一緒にいたら楽しかったのではないかと思っていた。
同じ悩みを持つ二人。
男性不妊だと話した時、花香は「そうなの」としか言わなかった。何で?妊娠出来ないの?そう言われてきた一輝にとって花香は新鮮だった。
花香もまたか「排卵障害がある」と言った、一輝は「そうか」としか言わなかった。妊娠出来ないのか?もう、20年だぞ!そう言われてきた花香にとって一輝は新鮮だった。
子供だけが、結婚の価値だと決めつけられるのが嫌だった。
それなら、自分は無価値で駄目な存在だと言われてるみたいで嫌だった。
どれだけ泣いたかわからなかった。
それでも、期待した。
期待した自分を裏切る自分の体が嫌いだった。
二人は、同じ事を考えながらたらこパスタを無言で食べる。
パスタを食べれて嬉しいから?
二人は、泣いていた。
「ごめん」
「ううん、私も…」
食べ終わって、お会計をしてすぐに店を出た。
「服、トイレで着替える?まだ、時間あるから…。映画とか?」
一輝は、何故こっちに花香を引っ張ってきたのかと思った。
roseの近くに来ていた。
「ごめん、戻ろう」
花香は、首を横に振った。
「ダメだよ。同じ事したら」
「服、着替えるだけだから…。時間も潰れるでしょ?」
花香の言葉に一輝は、頷いてroseに入った。
花香に、早く会いたいと思った。
桜に向けられる気持ちが悪い好意より、花香が向けてくれた同じ温度が心地よかった。
家を出る。
barの前まで歩いてくると、淡いグリーンのワンピースを着た花香が立っていた。
「待たせちゃった?」
「いえ、大丈夫。家にいたくなかったから…。」
「そっか」
一輝は、花香の手を握ってしまった。
「慣れなきゃと思って」
一輝の言葉に、花香も手を握り返した。
「慣れなきゃダメだよね」
「じゃあ、服買いに行こう」
「うん」
ただ、手を繋ぐだけ。指を絡ませたりなどはしない。
それだけなのに、花香と一輝は気持ち悪さが拭えていく。
「ここだったら、安いかな」
服屋さんに入る。
「淡いパステルの服が多い?」
「うん」
「だったら、黒とかは着る?」
「あんまり、着ない」
「じゃあ、黒系にしようか?」
「うん、一輝さんは?」
「俺は、逆パステルカラーとかは着ないな。今日だって、紺色だし!」
「じゃあ、パステルにします?」
「うん、そうだね」
花香と一輝は、それぞれをコーディネートした。
帽子と伊達メガネをつけた。
「ありがとうございました。」
二人で、店を出た。
「何食べたい?花香さん」
「あっ、名前でバレるよね?」
「何て呼べばいい?」
「小さな頃は、はーちゃんって呼ばれてたよ。」
「じゃあ、はーちゃんにする」
「一輝さんは?」
「俺はね!小さな頃、いっくんって呼ばれてた。」
「じゃあ、いっくんにする。」
「はーちゃん、何食べたい?」
「うーんとね。パスタ食べたい」
「そっか、パスタか!」
一輝といる方が、楽しい。
孝輔といるより、楽しい。
花香は、ニコニコ笑う。
一輝も、桜の笑顔より花香の笑顔を見る方が安心した。
「ここで、食べようか?」
「うん」
繋いだ手の温もりは、同じ温度だった。
熱くもなく、冷たくもない。
心地よくて、ずっと浸かっていたい。
「これ下さい」
「同じの下さい」
「かしこまりました。」
たらこパスタを二人で頼んだ。
「桜はね、たらこの粒々が見るのも嫌だって言ってね。外でしか食べれないんだ。」
「私も!孝輔は、味も見るのも嫌いだって言ってね。絶対に食べさせてくれないの」
「はーちゃんが、同じの頼んでビックリしたよ」
「私も、いっくんが同じの好きでよかった」
花香と一輝は、昨日の悲しみを拭えた。
「お待たせしました。」
たらこパスタとサラダがやって来た。
「いただきます。」
一緒に食べる。
一輝は、花香と結婚していたら幸せだったのじゃないかと思った。
花香も、一輝と一緒にいたら楽しかったのではないかと思っていた。
同じ悩みを持つ二人。
男性不妊だと話した時、花香は「そうなの」としか言わなかった。何で?妊娠出来ないの?そう言われてきた一輝にとって花香は新鮮だった。
花香もまたか「排卵障害がある」と言った、一輝は「そうか」としか言わなかった。妊娠出来ないのか?もう、20年だぞ!そう言われてきた花香にとって一輝は新鮮だった。
子供だけが、結婚の価値だと決めつけられるのが嫌だった。
それなら、自分は無価値で駄目な存在だと言われてるみたいで嫌だった。
どれだけ泣いたかわからなかった。
それでも、期待した。
期待した自分を裏切る自分の体が嫌いだった。
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パスタを食べれて嬉しいから?
二人は、泣いていた。
「ごめん」
「ううん、私も…」
食べ終わって、お会計をしてすぐに店を出た。
「服、トイレで着替える?まだ、時間あるから…。映画とか?」
一輝は、何故こっちに花香を引っ張ってきたのかと思った。
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「ごめん、戻ろう」
花香は、首を横に振った。
「ダメだよ。同じ事したら」
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