桜の季節に失くした恋と…【仮】

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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それぞれの結末

桂木と伊納と上條

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「はい、お酒。冷えてるよ」

「ありがとう」

「じゃあ、これからも仲良くいましょう。乾杯」

『乾杯』

俺達は、お酒を飲んでバーベキューを楽しむ。

「時々、皆でこうやって集まらないか?」

「いいね」

「一ノ瀬さんは、今お弁当屋さんでしょ?」

「伊納さんは、相変わらず怖いですか?」

「そんな事ないわよ」

俺は、桂木さんに話しかけた。

「あの」

「ああ、上條先生」

「先生は、いりませんよ」

「わかりました。お久しぶりです」

「お久しぶりです」

「上條さん、どうしました?」

「一ノ瀬の事、ありがとうございます。」

「いえ俺は、何もしてないですよ」

「そんな事ないですよ。心配だったんですよ。一ノ瀬が、病院辞めてからの事が…。でも、桂木さんに出会っていい顔になっていったから安心しました。今だって、いい顔になってます。」

桂木さんは、優しい笑顔で一ノ瀬を見つめていた。

「倫と過ごす日々は、夢みたいなんですよ。こんな時間を過ごす事が出来るなんて思わなかったんです。ずっと、蕪木の奴隷生活だったから…。」

「そうだったんですね。あの時、騒がしかったですもんね。」

「そうですね。あの時は、すみませんでした」

「いいえ。桂木さんが、幸せそうでよかったですよ。あの時は、いなくなるんじゃないかって思ってました。」

「上條さん、わかってたんですね」

「俺は、そうしようとした人を見たことがあります。だから、わかるんです。生きるのを諦めた人の目ってのがわかるんですよ。今の桂木さんは、違いますよ」

「今は、恥ずかしいぐらいに幸せです。」

「それぐらい幸せな方がいいですよ。」

俺は、笑った。

「はいはい、肉食べなよ」

「ありがとう」

「あっ、伊納。ちょっと話せるか?」

「うん」

「じゃあ、楽しんで下さいね。桂木さん」

「はい、ありがとうございます」

桂木さんは、一ノ瀬のところに行った。

「どうしたの?」

「もう、時効だから話そうと思って」

「何?」

「桜の木の桜木さん」

「どういう事?」

「結斗って、俺が言ったの覚えてる?」

「覚えてる」

「俺ね、伊納に話してなかったけど…。桜木さん、見たんだよ」

「いつ?」

「早乙女先生の時と前野先生の時」

「えっ?嘘でしょ?」

「本当だよ。」

そう言って、俺は眉間に皺を寄せた。

「どんな人だった?桜木さん」

「それが、結斗だったんだよ」

「えっ?五木君だったの?」

「少なくとも、俺にはそう見えた。まあ、あの時の俺の精神状態はよくなかったから結斗が見えたのかもしれないな」

「だから、桜木さんは悪い人じゃないって言ったんだね」

「そうだよ。桜木さんは、悪い人じゃなかった。俺と一緒にあの日、先生達の体を支えてくれた。だから、二人とも息があったんだよ」

俺は、伊納に笑いかけた。

「上條、私。」

「なに?」

「先生に、ちゃんと愛されてたんだ」

「よかったな、伊納」

「うん。だから、やっと前に進める。上條も、五木君の日記まだ全部読めてないんでしょ?」

「うん」

「ちゃんと読んで、前に進んで行きなよ。って、進んではいるよね」

「ゆっくりだけどな。でも、今日美鶴さんや一ノ瀬達と話して。前に進める気がした。ここから、帰ったら進んでみようと思ってる。」

「いいと思うよ。進んでみなよ。」

「伊納は、菅野の後が、美鶴さんだった?」

「うん、そうだね。私、あれから人間不審だったし。ハハハ」

「菅野は、最低だったよな」

「私も馬鹿だったんだよ。見る目がなかったんだよ。」

「弱っていたんだろ?あの人を亡くして」

「そうだよ。生きていけなかった。ねぇー。上條、知ってる?」

俺は、伊納にビールを渡された。

「温もりを知ってしまったら、温もりを知らなかった頃に戻れないんだよ。」

「知ってるよ」

「だから、私は菅野の言葉に甘えたんだと思う」

「身体中から、その人を消し去りたくなるんだよな」

「うん。でも、上條はならなかったよね?」

「ならなかったんじゃなくて、なれなかっただけだよ。俺は、あの姿を目に焼き付けて、復讐しようとしてたんだよ。あいつに復讐して、俺の人生を終わらせてしまおうって思ってたんだよ」

「馬鹿じゃないの?そんな事、上條がしなくてよかった。」

「ある日、急に馬鹿らしくなったんだよ。それは、伊納とあの人のお陰だったと思う。全力で、真っ直ぐに生きてる二人を近くで見ていたから…。俺は、前を向けたんだと思う。」

「上條、よかった。」

「泣くなよ、伊納」

俺は、伊納にハンカチを差し出した。

「上條、凌平さんと先に進むんだぞ!それは、裏切りでもないんだから…。」

「伊納、ありがとな」

「生きてるうちは、いっぱい凌平さんと過ごしなよ。向こうに行ったら、五木君と一緒になるんだから」

「伊納もだろ?」

「うん。だから、今だけはね?」

「そうだな」

俺と伊納は、笑い合った。

皆の所に戻った。

美鶴さんが作ってくれる料理は、相変わらず美味しくて、一ノ瀬が選んだワインは美味しくて、あっという間に一日は過ぎ去っていった。

「また、来年も集まろうな」

「OK」

「次は、別の場所で」

俺達は、皆楽しんで帰宅したんだ。

    
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