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友達でいる方法なら知ってる

静馬の話⑤

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そして、今…。

「ごめんね、僕ちょっと最近ナーバスだったかな。あっ、俊太さんが結構きてるせいかな」

あの日、下半身が膨らんだのを言い訳する僕みたいな慎吾がいた。

「慎吾、ごめんな」

僕は、慎吾を抱き締めていた。

「静馬、謝らないでよ」

「本当に、ごめんな」

「やめてって、謝らないでよ」

「もう、やめよう」

「何で、そんな事いうんだよ」

「慎吾は、こんなに苦しんでるんだよ」

僕は、さらに慎吾を抱き締めた。

「大丈夫だから…やめるなんて言わないでよ」

「大丈夫じゃないよ!もう、慎吾は限界なんだよ。わかるんだ」

「やめたくないよ、やめたくない」

「ほら、また弁当買いに行くから」

「それって、僕と会わないって事?」

「だって、会ったらこうやってまたしちゃうだろ?」

慎吾は、涙を溜めた目で僕を見つめていた。

「静馬、最後ならしてよ」

無理して笑ってる。

「お願いだよ。してよ」

僕の手を引っ張っていく。

「静馬、最後ならお願い」

僕は、慎吾の言う通りにしたんだ。

朝目覚めたら、慎吾はいなかった。

【いつかまた、ヒレカツ弁当を買いにきてくれるのを待っています。5年間、僕のわがままに付き合ってくれてありがとう】

と書かれたメモが置いてあった。

僕は、泣いていた。

どんな気持ちで、このメモを書いたのだろうか…。

どんな気持ちで、この五年を過ごしていたのだろうか?

僕は、慎吾の気持ちを何も知らなかった。

ちゃんと、向き合ってなかったんだ。

ごめん、慎吾。

ピンポーン

慎吾?!
 
ガチャ…

「おはよう、静馬」

「俊太か」

「残念そうな顔してるし」

「別に…」

俊太が入ってきた。

僕は、慎吾のメモをポケットにしまった。

「朝から、何だよ」

「離婚するかもしれない」

「えっ?」

「昨日、夜、紅葉と大喧嘩したんだ。電話で」

「何でだよ」

「息子の小学校、紅葉は私立にいれたいらしくて、俺は普通でいいって話したんだ」

「それで、喧嘩」

「そうなんだよ。どうしたら、いいかな?静馬」

「わかんないよ。子供いないし」

「そうだよな!」

俊太は、そう言ってゴミ箱を見た。

「静馬、彼女出来た?」

あちゃー、隠すの忘れてた。

もっと、ティシュグルグルとかにしとけばよかった。

「別れた」

「ええ?何で?静馬振るとかもったいないよな!」

「近いよ、俊太」

俊太は、僕の肩を引き寄せてきた。

「わりい!まあ、別れたなら仕方ないな!帰るわ」

「何だったんだよ」

「静馬に話したらスッキリしたわ!もつべきものは、友達だな!じゃあ、またくるわ」

「わかった」

バタンと扉が閉まった。

友達か…。

俺、慎吾に酷いことしてたな。

いつか、ヒレカツ弁当買いに行って謝ろう。

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