三日間の恋人

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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day3 ホテル

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人生が終わったみたいに思った。

「鉛つけてるみたいに歩いてどうするの?」

複合施設を出た瞬間、声をかけられた。

「柚…待っていたの?」

「今日は、君と過ごす最後だから当たり前だよ」

「僕は、怒って帰ってしまったと思ったよ」

「怒ったし、帰ろうと思ったよ。でも、明日死ぬ予定になっているのに、君に怒って帰ってどうするのって思ったの…。それなら、最後まで君と過ごしたい。」

「ネックレス、つけたろか?」

「うん」

僕は、柚にネックレスをつけてあげた。

柚もネックレスをつけてくれた。

「行こうか」

「どこに行くん?」

「いいから、いいから」

柚は、僕の手を繋いで引っ張って行く。

「コンビニで何か買おうよ」

柚に言われて、お弁当とか飲み物を買った。

「じゃあ、残りの時間はあそこで過ごそう」

そう言って、手を引っ張られる。

「これって」

「ラブホテルでしょ?」

柚は、ニコッて笑った。

少し恐ろしかったれど、好奇心の方がかった。

2時過ぎだった。

「何時までいるん?」

「さあね」

そう言って入る。

柚は、部屋に入ると僕に話をしようと言った。

従姉妹の不妊の話し、脳にこびりいている話し、気づいてるのにわからないフリをしてる姉の話し…。

柚は、自分の話をしてくれた。

「それ貸して、番号いれてあげる。」

僕のプリペイド携帯に、柚は番号を入れてくれた。

「柚、さっきはごめんな。僕、わかってるつもりやった。酷い事いった。」

「生きろなんて下らない話、二度としないでね」

「下らないって。自分の命はそんな程度なんか?」


「そんな程度だよ」

柚は、僕をソファーに押し倒した。

「君には、わからないんだよ。両親にも殴られていた。兄からの日々が本格的に始まった日、両親は私への虐待をやめた。理由は、なに?多分、優秀な兄が私を守ったのだと理解した。なら、家族ごとやればって思うでしょ?それは、楽しくない。私にとっての復讐は、溺愛する兄の抹殺。それだけを考えて生きてきた。ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと。だから、君とは違う」

そう言った柚の目に、鳥肌がたった。

そうだ、柚は僕とは違うのだ。

同じ生き物じゃないのだ。

[なあー。青(しょう)。ムササビとモモンガって別の生き物ってしっとった?]

[似て非なる者だな。それは、晴。よう見つけたな]

それだ。

柚と僕は、似て非なる者なのだ。

同じだと思っていた自分を恥じた。

別の生き物の気持ちなど、わかるはずがないのだ。

「僕も、柚が連れて逝ってよ」

「約束するよ」

脳裏に焼き付いて離れない映像は、僕も同じだった。

「君の気持ちはわかるよ。どれだけ、私と肌を重ねても…。脳裏に焼き付いているんでしょ?」

「柚、僕も、生きていけへんかった。ずっと」

「大丈夫。私が、君をちゃんと連れて逝ってあげるから…。もし、生き残れたら君は産まれかわるんだよ。わかった?」

「うん」

僕は、柚に頷いた。

「君と、最後の一日を過ごそうか」

柚は、微笑んで僕にキスをした。

舌を絡ませられる、ソフトクリームの甘い味がまだ残っていた。

下半身の違和感も、気持ち悪さがなくなる。

快楽や快感は、まだ満足に手にできないけれど…。

柚の顔を焼き付けていたい。

あの映像を消したい。

繋がった場所から熱を感じる。

触(ふ)れ合う感触を感じる。

絡み合う、心も体も…。

このまま、ソフトクリームのように溶けてしまえばいい。

僕と一緒に、消えてしまえばいい。

何度も、何度も、何度も、繰り返した。

昨日もしたのに、こんなにできるなんて…。

若さって、すごい。

なのに、脳内の映像は、変わらずに残っている。

柚が、とろけた顔を向ける度、あの人と重なって、胃酸があがってきた。

この未来(さき)なんていらない。

「これが、一番克服しなくちゃいけないやつでしょ?」

柚は、僕の足の間に顔を埋めた。

吐き気が襲ってきて、口を塞ぐ。

「ちゃんと私を見て、目を閉じないで」

そう言われて、凝視して見つめ続けていた。

どれぐらい続けたかな?

体が疲れて、気づいたら二人で寝ていた。

「あーあ。こんな時間だよ」

「ホンマや、帰らな」

「お風呂はいってからにしよ」

時刻は、8時を回っていた。

お風呂にはいって、また繰り返した。

僕も柚も、動物だった。

「帰ろうか」

そう言って、出たのは九時過ぎだった。

手を繋いで並んで歩く。

今、この世界に僕達がいなくなったって、誰も気づきやしない。


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