12 / 17
day3 ホテル
しおりを挟む
人生が終わったみたいに思った。
「鉛つけてるみたいに歩いてどうするの?」
複合施設を出た瞬間、声をかけられた。
「柚…待っていたの?」
「今日は、君と過ごす最後だから当たり前だよ」
「僕は、怒って帰ってしまったと思ったよ」
「怒ったし、帰ろうと思ったよ。でも、明日死ぬ予定になっているのに、君に怒って帰ってどうするのって思ったの…。それなら、最後まで君と過ごしたい。」
「ネックレス、つけたろか?」
「うん」
僕は、柚にネックレスをつけてあげた。
柚もネックレスをつけてくれた。
「行こうか」
「どこに行くん?」
「いいから、いいから」
柚は、僕の手を繋いで引っ張って行く。
「コンビニで何か買おうよ」
柚に言われて、お弁当とか飲み物を買った。
「じゃあ、残りの時間はあそこで過ごそう」
そう言って、手を引っ張られる。
「これって」
「ラブホテルでしょ?」
柚は、ニコッて笑った。
少し恐ろしかったれど、好奇心の方がかった。
2時過ぎだった。
「何時までいるん?」
「さあね」
そう言って入る。
柚は、部屋に入ると僕に話をしようと言った。
従姉妹の不妊の話し、脳にこびりいている話し、気づいてるのにわからないフリをしてる姉の話し…。
柚は、自分の話をしてくれた。
「それ貸して、番号いれてあげる。」
僕のプリペイド携帯に、柚は番号を入れてくれた。
「柚、さっきはごめんな。僕、わかってるつもりやった。酷い事いった。」
「生きろなんて下らない話、二度としないでね」
「下らないって。自分の命はそんな程度なんか?」
「そんな程度だよ」
柚は、僕をソファーに押し倒した。
「君には、わからないんだよ。両親にも殴られていた。兄からの日々が本格的に始まった日、両親は私への虐待をやめた。理由は、なに?多分、優秀な兄が私を守ったのだと理解した。なら、家族ごとやればって思うでしょ?それは、楽しくない。私にとっての復讐は、溺愛する兄の抹殺。それだけを考えて生きてきた。ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと。だから、君とは違う」
そう言った柚の目に、鳥肌がたった。
そうだ、柚は僕とは違うのだ。
同じ生き物じゃないのだ。
[なあー。青(しょう)。ムササビとモモンガって別の生き物ってしっとった?]
[似て非なる者だな。それは、晴。よう見つけたな]
それだ。
柚と僕は、似て非なる者なのだ。
同じだと思っていた自分を恥じた。
別の生き物の気持ちなど、わかるはずがないのだ。
「僕も、柚が連れて逝ってよ」
「約束するよ」
脳裏に焼き付いて離れない映像は、僕も同じだった。
「君の気持ちはわかるよ。どれだけ、私と肌を重ねても…。脳裏に焼き付いているんでしょ?」
「柚、僕も、生きていけへんかった。ずっと」
「大丈夫。私が、君をちゃんと連れて逝ってあげるから…。もし、生き残れたら君は産まれかわるんだよ。わかった?」
「うん」
僕は、柚に頷いた。
「君と、最後の一日を過ごそうか」
柚は、微笑んで僕にキスをした。
舌を絡ませられる、ソフトクリームの甘い味がまだ残っていた。
下半身の違和感も、気持ち悪さがなくなる。
快楽や快感は、まだ満足に手にできないけれど…。
柚の顔を焼き付けていたい。
あの映像を消したい。
繋がった場所から熱を感じる。
触(ふ)れ合う感触を感じる。
絡み合う、心も体も…。
このまま、ソフトクリームのように溶けてしまえばいい。
僕と一緒に、消えてしまえばいい。
何度も、何度も、何度も、繰り返した。
昨日もしたのに、こんなにできるなんて…。
若さって、すごい。
なのに、脳内の映像は、変わらずに残っている。
柚が、とろけた顔を向ける度、あの人と重なって、胃酸があがってきた。
この未来(さき)なんていらない。
「これが、一番克服しなくちゃいけないやつでしょ?」
柚は、僕の足の間に顔を埋めた。
吐き気が襲ってきて、口を塞ぐ。
「ちゃんと私を見て、目を閉じないで」
そう言われて、凝視して見つめ続けていた。
どれぐらい続けたかな?
体が疲れて、気づいたら二人で寝ていた。
「あーあ。こんな時間だよ」
「ホンマや、帰らな」
「お風呂はいってからにしよ」
時刻は、8時を回っていた。
お風呂にはいって、また繰り返した。
僕も柚も、動物だった。
「帰ろうか」
そう言って、出たのは九時過ぎだった。
手を繋いで並んで歩く。
今、この世界に僕達がいなくなったって、誰も気づきやしない。
「鉛つけてるみたいに歩いてどうするの?」
複合施設を出た瞬間、声をかけられた。
「柚…待っていたの?」
「今日は、君と過ごす最後だから当たり前だよ」
「僕は、怒って帰ってしまったと思ったよ」
「怒ったし、帰ろうと思ったよ。でも、明日死ぬ予定になっているのに、君に怒って帰ってどうするのって思ったの…。それなら、最後まで君と過ごしたい。」
「ネックレス、つけたろか?」
「うん」
僕は、柚にネックレスをつけてあげた。
柚もネックレスをつけてくれた。
「行こうか」
「どこに行くん?」
「いいから、いいから」
柚は、僕の手を繋いで引っ張って行く。
「コンビニで何か買おうよ」
柚に言われて、お弁当とか飲み物を買った。
「じゃあ、残りの時間はあそこで過ごそう」
そう言って、手を引っ張られる。
「これって」
「ラブホテルでしょ?」
柚は、ニコッて笑った。
少し恐ろしかったれど、好奇心の方がかった。
2時過ぎだった。
「何時までいるん?」
「さあね」
そう言って入る。
柚は、部屋に入ると僕に話をしようと言った。
従姉妹の不妊の話し、脳にこびりいている話し、気づいてるのにわからないフリをしてる姉の話し…。
柚は、自分の話をしてくれた。
「それ貸して、番号いれてあげる。」
僕のプリペイド携帯に、柚は番号を入れてくれた。
「柚、さっきはごめんな。僕、わかってるつもりやった。酷い事いった。」
「生きろなんて下らない話、二度としないでね」
「下らないって。自分の命はそんな程度なんか?」
「そんな程度だよ」
柚は、僕をソファーに押し倒した。
「君には、わからないんだよ。両親にも殴られていた。兄からの日々が本格的に始まった日、両親は私への虐待をやめた。理由は、なに?多分、優秀な兄が私を守ったのだと理解した。なら、家族ごとやればって思うでしょ?それは、楽しくない。私にとっての復讐は、溺愛する兄の抹殺。それだけを考えて生きてきた。ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと。だから、君とは違う」
そう言った柚の目に、鳥肌がたった。
そうだ、柚は僕とは違うのだ。
同じ生き物じゃないのだ。
[なあー。青(しょう)。ムササビとモモンガって別の生き物ってしっとった?]
[似て非なる者だな。それは、晴。よう見つけたな]
それだ。
柚と僕は、似て非なる者なのだ。
同じだと思っていた自分を恥じた。
別の生き物の気持ちなど、わかるはずがないのだ。
「僕も、柚が連れて逝ってよ」
「約束するよ」
脳裏に焼き付いて離れない映像は、僕も同じだった。
「君の気持ちはわかるよ。どれだけ、私と肌を重ねても…。脳裏に焼き付いているんでしょ?」
「柚、僕も、生きていけへんかった。ずっと」
「大丈夫。私が、君をちゃんと連れて逝ってあげるから…。もし、生き残れたら君は産まれかわるんだよ。わかった?」
「うん」
僕は、柚に頷いた。
「君と、最後の一日を過ごそうか」
柚は、微笑んで僕にキスをした。
舌を絡ませられる、ソフトクリームの甘い味がまだ残っていた。
下半身の違和感も、気持ち悪さがなくなる。
快楽や快感は、まだ満足に手にできないけれど…。
柚の顔を焼き付けていたい。
あの映像を消したい。
繋がった場所から熱を感じる。
触(ふ)れ合う感触を感じる。
絡み合う、心も体も…。
このまま、ソフトクリームのように溶けてしまえばいい。
僕と一緒に、消えてしまえばいい。
何度も、何度も、何度も、繰り返した。
昨日もしたのに、こんなにできるなんて…。
若さって、すごい。
なのに、脳内の映像は、変わらずに残っている。
柚が、とろけた顔を向ける度、あの人と重なって、胃酸があがってきた。
この未来(さき)なんていらない。
「これが、一番克服しなくちゃいけないやつでしょ?」
柚は、僕の足の間に顔を埋めた。
吐き気が襲ってきて、口を塞ぐ。
「ちゃんと私を見て、目を閉じないで」
そう言われて、凝視して見つめ続けていた。
どれぐらい続けたかな?
体が疲れて、気づいたら二人で寝ていた。
「あーあ。こんな時間だよ」
「ホンマや、帰らな」
「お風呂はいってからにしよ」
時刻は、8時を回っていた。
お風呂にはいって、また繰り返した。
僕も柚も、動物だった。
「帰ろうか」
そう言って、出たのは九時過ぎだった。
手を繋いで並んで歩く。
今、この世界に僕達がいなくなったって、誰も気づきやしない。
0
あなたにおすすめの小説
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
すべてはあなたの為だった~狂愛~
矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。
愛しているのは君だけ…。
大切なのも君だけ…。
『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』
※設定はゆるいです。
※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる