三日間の恋人

三愛 紫月 (さんあい しづき)

文字の大きさ
13 / 17

怒られた事と現在

しおりを挟む
柚の家につく頃には、22時を回っていた。

「じゃあね」

「嫌、僕が謝るよ」

柚にそう言うと鍵を開けて、中にいれてくれた。

開けた瞬間、柚の両親が待っていた。

「柚羽、何してたの?」

「何時だと思ってるんだ」

手をあげられそうになったのを僕は、庇った。

「すみませんでした。僕が、柚羽さんを連れ回しました。帰りたくないゆうた僕を心配して、こんな時間までいてくれました。だから、柚羽(ゆずは)さんは何(なん)も悪くないんです。」

「ふざけてるのか?女の子を連れ回して」

バシン、バシン、バシン、柚のお父さんが平手で僕を殴った。

「すみませんでした。」

「もう二度と柚羽には、近づかないでくれ」

「わかりました。すみませんでした。」

「帰れ、顔もみたくない」

ガチャン…。

閉じた扉の先の光景を僕は、知ることが出来なかった。

柚が、殴られていなければいい。

それしか、考えていなかった。

「色男、ホテルに行ったんやな?」

帰宅すると晴兄が、玄関に立っていた。

探しに行こうとしたのか、靴をはく所だったようだ。

「いったよ。」

僕は、晴兄を見つめて言った。

「キスマーク、つけまくるんはアカンやろ?」

「えっ?」

僕は、洗面所に行った。

大量につけられてる事に気づかなかった。

あー。

もう、明日にはいなくなるんだ。

だから、つけたんだ。

そう思うと膝から崩れ落ちた。

「そんなに泣いてどないしたん?」

「別になんもないよ」

「青(しょう)、生きててや」

「急に、何?」

「わからんけど、お前おらんなったら。俺、生きてる意味わからへんくなる。」

「晴兄、どないしたん?」

晴兄は、珍しく泣いていた。

「わからんけど、なんかおってくれよ。俺、お前おらん人生はいらんで。どんな事でも一緒に乗り越えたるから…。だから、おってくれ。美味しいもん、一緒に食べて笑(わろ)てくれたら他はなんもいらんから」

晴兄の言葉に、頷く事が出来なかった。

「疲れたから、寝るわ」

僕は、晴兄を置いて部屋に行った。

現在ー

ピンポーン

デカイ、インターホンの音で目が覚めた。

「はい」

「お荷物、二つです。」

「はい」

「ここにサインお願いします」

「はい」

二つの荷物にサインをした。

60サイズの段ボールと小さな箱。

60サイズの方は、兄ちゃんからだった。

中を開ける、ラーメン、うどん、わかめ、昆布、ふりかけ…。

封筒を開けた。

[誕生日おめでとう。ちゃんと飯くってるか?40歳の青(しょう)に何を送っていいかわからないので自分で買って下さい。大事に使うんやで!また、うまいもん食わせたるからな。青(しょう)が生きてるだけで、俺は幸せやで 晴一]

兄ちゃんが、書いた伝票の字を指でなぞる。

いつも必要な書類には、この名前があった。

[杉野晴一(すぎのはるいち)]

あの日、兄ちゃんは僕を追いかけてきた。

『大事な用やから帰れや』

兄ちゃんは、渋々立ち止まった。

その二時間後、プリペイド携帯が鳴った。

『兄ちゃん…今まで幸せやったよ。ありがとー。僕の分も生きてや』

『どこや?どこにおんねん』

『火の勢いおさまらんぞ、水増やせ』

『生存者はおったか?』

『いや、生存者はおらんみたいや』

薄れ行く意識の中、誰かのやり取りを聞いていた。

なぜか、夜の闇に紛れて僕は、見つからないんだと思っていた。

目覚めたら、真っ白な天井が広がっていた。

「青(しょう)、よかった。ホンマ、よかった。」

晴兄の涙が、ボタボタと落ちてきた。

「天国か?」

「アホか、下界じゃボケ」

バチンと頭を叩かれた。

さっきまで、泣いていた兄ちゃんは怒っていた。

「下界って、なんやねん。痛いな」

「死ぬなんて、許さんからな」

「柚は?柚は、どうなったんや?」

「誰や、それ?」

「焼けた家の人や、柚は」

兄ちゃんは、ベッドから降りようとする僕を叩いた。

「あの家には、生存者はいなかったんやで」

兄ちゃんは、週刊紙を置いた。

[少女は、なぜ…兄を道連れにしたのか?]

「なんやねん。このタイトル」

僕は、週刊紙を投げ捨てた。

今でも、腹が立つ。

あのタイトル。 


僕は、小さな段ボール箱を見つめる。

差出人、朝井戸柚羽

柚羽?

生きてるんか?


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。 愛しているのは君だけ…。 大切なのも君だけ…。 『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』 ※設定はゆるいです。 ※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

根暗令嬢の華麗なる転身

しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」 ミューズは茶会が嫌いだった。 茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。 公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。 何不自由なく、暮らしていた。 家族からも愛されて育った。 それを壊したのは悪意ある言葉。 「あんな不細工な令嬢見たことない」 それなのに今回の茶会だけは断れなかった。 父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。 婚約者選びのものとして。 国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず… 応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*) ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。 同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。 立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。 一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。 描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。 ゆるりとお楽しみください。 こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

処理中です...