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彼女の話1ー3

私の幸せ!

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「ついた、ついた」

「もう、しっかりしてよ!千秋!でも、疲れてたんだよね。ずっと、一人だったから」

そう言って、私は車を降りた。千秋も、車を降りてきた。ボストンバッグを持ってくれてる。千秋が鍵を開けてくれて久々の我が家にやってきた。

「ただいま」

「おかえり、葵」

千秋は、玄関に鞄を置くとすぐに私を抱き締めてきた。

「何?」

「こう出来て幸せだよ」

「何よそれ」

私は、ニコニコ笑いながら千秋に抱きついた。少しだけ玄関でイチャイチャしてからリビングに入る。千秋にしては、珍しく少しだけ散らかっていた。それを見ると、千秋が一人で過ごした孤独がわかった。

「やる気が起きなかったんだ。葵が、目覚めなくて」

「気にしないでよ!片付けるから」

「ごめんな!葵」

「ううん」

その日、3ヶ月ぶりに帰宅をした私は、3ヶ月ぶりに千秋に抱かれた。

「明日、早いから寝よう」

「うん、おやすみ」

もっと、もっと、イチャイチャしたかったけど…。仕方ないよね!

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

次の日、朝から千秋とお父さんに持っていく料理を作っていた。

「手首、大丈夫?」

「大丈夫だよ」

「千秋の唐揚げ好きだから喜ぶ」

私は、ジャガイモの皮を剥きながら笑った。

「お父さんが喜んでくれたら、嬉しいよ」

私と千秋は、お父さんの為の料理を作り終えて家をでた。カーナビに実家の住所を入力した。実家について、インターホンを鳴らした。

「はい」

母が現れた。

「葵、千秋君、いらっしゃい」

「お邪魔します」

「葵、よかったわ!元気そうで」

「何とかね!お父さんに唐揚げとジャーマンポテト持ってきたの」

「和室にいるから、持っていってあげて!」

「介護疲れてない?」

「ご飯は、自分で食べれるから大丈夫よ」

そう言ってお母さんは、笑ってくれる。

「葵、そんな色好きだった?」

「どれ?」

「アイシャドウよ!」

お母さんは、私がつけてきたピンクのアイシャドウを不思議がっていた!

「目覚めたら、好きになってたの」

「そうなのね」

「うん」

私は、お皿に盛り付ける。

「千秋、お父さん所行こう」

「うん」

千秋は、お母さんに出された緑茶を飲んでいた。

「あら、珍しいわね!千秋君の為に麦茶置いてるのに、そっち取るとは思わなかったわ」

「大人になったんですかね?」

千秋の言葉にお母さんは、ニコニコ笑っていた。確かに、テーブルに置かれたコップには、緑茶と麦茶が並んでいた。

「千秋君が、緑茶飲めるようになって嬉しいわ!これから、二種類作らなくていいから」

お母さんは、ニコニコ笑っていた。

「行こう、千秋」

「うん」

私と千秋は、お父さんの所に向かった。
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